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「フェイクメディアの拡散と生成を防ぐ先駆的研究」で NIIの越前功教授、山岸順一教授、福井工業大学の馬場口登教授が科学技術賞(研究部門)を受賞
~令和7年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰~
文部科学省が2025年(令和7年)4月8日(火)に発表した「令和7年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰」において、「フェイクメディアの拡散と生成を防ぐ先駆的研究」の業績により、国立情報学研究所(NII、所長:黒橋 禎夫 東京都千代田区) 情報社会相関研究系の越前 功 教授、コンテンツ科学研究系の山岸 順一 教授、福井工業大学(学長:掛下 知行、福井県福井市学園3-6-1) 経営情報学部長の馬場口 登 教授が、科学技術賞(研究部門)(*1)を受賞しました。
【研究の背景】
生成AIをはじめとするAI技術が飛躍的な発展を見せるなか、顔や体、声といった人間に由来する情報をAIが学習し、映像や音声を合成する「シンセティックメディア」を簡単に生成することができるようになってきました。こうしたシンセティックメディアは、動画や音声の活用範囲を拡げ、我々の生活をより豊かにしてくれる可能性を秘めています。一方で、詐欺や思想誘導、世論操作を目的として、犯罪組織が生成技術を悪用してフェイクメディアを作り出し、社会を混乱に陥れるという脅威も現実的なものとなっており、国際的な課題として対策が急がれています。
【評価の対象となった研究成果】
越前教授らが本研究を手がける以前は、フェイクの生成物による脅威としては、指紋や静脈などを偽造したものや、人の顔の印刷物などを使って認証を突破する技術が挙げられ、これに対する対策が盛んに研究されていました。
それに対し、越前教授らは視野を広げ、AIにより生成された映像や音声などのフェイクメディアが社会的な問題になる以前から、悪用の脅威を世界でいち早く指摘しました。そして、技術的な対策の必要性を提唱し、拡散と生成を防止するプロジェクトを馬場口教授が代表となり、2016年に始めました。
2018年には、世界で初めてフェイク顔画像を、AIを用いて検出する手法を提案したほか、翌2019年にはフェイク検出と改ざん領域の推定を同時に行う手法を提案し、Deepfake detectionと呼ばれる研究分野を創出しました。
また、山岸教授を中心としたプロジェクトでは、音声のプライバシーを保護する手法を確立したほか、フェイク音声検出の国際コンペティションの評価用にフェイク音声とリアル音声からなる大規模なデータセットを構築するなど、画期的な学術成果を挙げました。
こうした研究の先進性や、世界をリードする研究成果が評価され、越前教授らは令和7年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰の科学技術賞(研究部門)を受賞しました。
【令和7年度 科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞 (研究部門) 】
フェイクメディアの拡散と生成を防ぐ先駆的研究
受賞に関する情報は以下の通りです
越前 功(えちぜん・いさお) 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)情報社会相関研究系 教授 |
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山岸 順一(やまぎし・じゅんいち) 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII)コンテンツ科学研究系 教授 |
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馬場口 登(ばばぐち・のぼる) 福井工業大学 経営情報学部長・教授 |
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業績概要:
顔、身体、音声などの人間由来の情報をAIが学習し、本物と見紛うシンセティックメデイアの生成が可能になり、様々な用途で活用されている。一方、シンセティックメデイアの負の側面として、詐欺や思考誘導、世論操作を行う目的で、組織や個人が生成AIを用いてフェイク映像やフェイク音声といったフェイクメデイアを生成し、拡散させており、世界的な脅威となっている。
本研究は、生成AIによるフェイクメデイア拡散の脅威を予見し、フェイクメデイアの拡散と生成を防ぐ革新的な技術群を確立した。フェイク顔映像をAIモデルにより検出する手法や、フェイク検出と改ざん領域推定を同時に行う手法などを提案し、Deepfake detectionと呼ばれる研究分野を創成した。
本研究により、フェイクメデイアの拡散と生成を防ぐ先駆的な学術成果のみならず、フェイク顔映像検出や音声プライバシー保護の産業応用といったイノベーションを創出し、社会課題の解決に貢献している。
本成果は、生成AIの負の側面に適切に対処する基盤技術を提供することで、情報の信頼性を確保しながら、多様なコミュニケーションや意思決定を支援可能とし、人間中心の健全なサイバー社会の実現に寄与することが期待される。
主要論文:
- 「MesoNet : a Compact Facial Video Forgery Detection Network」IEEE International Workshop on Information Forensics and Security (WIFS 2018)、pp.1-7、2018年発表
- 「Preventing Fake Information Generation Against Media Clone Attacks」IEICE Transactions on Information and Systems、vol.El04-D、no.1、pp.2-11、2021年発表
越前 功 NII教授のコメント:
このたび、名誉ある文部科学大臣表彰・科学技術賞(研究部門)をいただき、大変光栄に存じます。これまで、ご指導およびご支援を賜りました関係各所の皆様方に厚く御礼を申し上げます。私たちは、ディープフェイクが社会問題化する以前から、生成AIによるフェイクメディア拡散の脅威を予測し、フェイクメディアの生成と拡散を防ぐ研究に取り組んでまいりました。また、フェイクメディア防御に関する国際コンペティション開催や、国内研究拠点の設置、研究成果の実用化に取り組み、社会課題の解決に向けた取り組みも進めてまいりました。引き続き、AIセキュリティ分野に貢献できるように研究を進めてまいります。
山岸 順一 NII教授のコメント:
このたびは、科学技術分野の文部科学大臣表彰(科学技術賞)という大変名誉ある賞を頂き、光栄に存じます。音声情報処理の専門家として、フェイクメディアの技術的対策に関する研究をこれからも進めてまいります。
馬場口 登 福井工業大学教授のコメント:
文部科学大臣表彰(科学技術賞研究部門)という誉れ高い賞を頂き、光栄に存じますとともに、身の引き締まる思いです。2016年に開始した研究プロジェクトの先進性が認められたことに研究者として喜びを感じます。これまでの研究プロジェクトを一緒に進めてきた研究者や学生の皆様に心より感謝し、この度の栄誉を分かち合いたいと思います。
関連リンク
- 越前 功 - 情報社会相関研究系 - 研究者紹介
- 山岸 順一 - コンテンツ科学研究系 - 研究者紹介
- 馬場口 登 - 研究者詳細 - 福井工業大学
- MesoNet: a Compact Facial Video Forgery Detection Network - IEEE Xplore
- Preventing Fake Information Generation Against Media Clone Attacks - J-STAGE
- 令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者等の決定について(文部科学省)
- 令和7年度科学技術分野の文部科学大臣表彰 科学技術賞(研究部門) 受賞者一覧
ニュースリリース(PDF版)
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