NIIについて / About NII

所長の挨拶

kitsuregawa2021.jpg喜連川 優
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
国立情報学研究所 所長

新型コロナウイルス感染症の脅威は去るどころか、いまだ収束の兆しすら見えません。こうした状況がこれほど長引くとは、誰も想像し得なかったことでしょう。パンデミックが続く限り、毎年のワクチン接種は欠かせませんし、元の暮らしに戻ることは望めそうにありません。多くの人がそうであるように、一国民、一地球人として、明るい未来を思い描くことの困難さに直面しています。

長引くパンデミックは、「実世界からサイバー世界へ活動の主軸をシフト」すること、すなわち社会のデジタルシフトを強制的に促し、遠隔通信(オンライン)の役割は一層大きくなっています。日本で唯一の情報学の学術総合研究所である国立情報学研究所(NII)に寄せられる期待も、日々高まっていると感じます。2020年12月3日・4日にオンライン開催したNII設立20周年記念行事(シンポジウムなど)では、約5500名という大変多くの方に視聴していただきました。また、NIIが構築・運用する「学術情報ネットワーク(SINET)」は、学術研究に関するデータだけでなく、オンラインによる学会開催や授業などの通信に日常的に活用されています。

2020年3月26日より、「高等教育を止めない」ことを目標にNIIが定期的に開催してきた、『大学等におけるオンライン教育とデジタル変革に関するサイバーシンポジウム「教育機関DXシンポ」』(「4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム」から名称を変更)にも、引き続き大きな関心が寄せられています。

このシンポジウムは、当初、7国立大学を中心にした遠隔授業の先行事例の紹介や失敗の共有がメインでしたが、三十数回におよぶ開催を経て内容は大きく広がり、いまや各教育機関の創意工夫に満ちたオンライン授業やDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが紹介されるなど、次のステージへ向かっています。最近では、医学部の臨床実習(教授回診)をオンラインで実施した事例(神戸大学)や、体育実技をオンラインと対面授業のハイブリッドで行っている事例(流通経済大学)など、先進的な取り組みが紹介されました。教育機関DXシンポは、我々にとっては教育現場の声を直接聞くことのできる貴重な場であり、参加者の方々の発表に、毎回、大いに刺激を受けています。

NIIは大学共同利用機関として、主に大学に必要となる最先端の学術情報基盤の構築・運用や学術コンテンツの提供などの事業を展開していますが、コロナを契機に、初等教育・中等教育の教育機関からも頼りにされる存在となりつつあります。その一例が、「バーチャル修学旅行」です。全国の学校で各種行事の中止・縮小が続くなか、NIIは日本航空株式会社(JAL)の協力を得て、足立区立第九中学校において、バーチャルな旅を体験できる授業「リモート夢旅体験」を実施しました。それぞれの教室を飛行機の機内に見立て、各クラスに配置された客室乗務員が訪問地を案内し、国内2か所、海外5か所をテレビ会議でつないで、現地の状況を中継しました。初めての体験に、子どもたちから大好評を博しました。今後もNIIはITの力で、大学のみならず小中高の教育支援に取り組んでまいります。

これらのITを活用した取り組みにおいて、最大の課題はセキュリティです。データ駆動型社会が進展するなか、NIIが2016年に設立したサイバーセキュリティ研究開発センターでは、SINETを守りながら、検知した最新ウイルスを無害化して学術に役立てると同時に、各種サービスを商用のセキュリティサービスと遜色ないセキュアなレベルで提供することに貢献しています。

また、今年度は現行のSINET5からSINET6への移行を進め、来年度からは全国の拠点をすべて400Gbpsで結びます。これに先立ち、 2021年2月からは、研究データ管理基盤「GakuNin RDM」がスタートしています。これはSINETを通じて、研究論文だけでなく、研究データや学術資料などを安全に蓄積・管理できる基盤であり、今後は公開できるデータについては、公開・検索基盤と連携して運用することにより、オープンサイエンスへつなげていきます。

さらに、学術情報の公開に関して、全国の大学図書館などの学術資料の目録所在情報サービスの再構築も手がけています。当システム基盤は株式会社紀伊國屋書店を通じて提供されることとなり、官民一体となって、学術情報のデジタル化および国際的な流通に資するプラットフォームを構築してまいります。

なお、2020年8月に天皇皇后両陛下が、政策研究大学院大学などが主催する「新型コロナウイルス感染症大流行下の水防災に関する国際オンライン会議」に参加された折には、初のオンラインでのご参加を滞りなく実施するために、バックヤードのお手伝いをNIIが手がけました。セキュアな通信基盤を構築・運用するNIIだからこそ実現できた取り組みと言えます。

このようにNIIは、これからも我々にしかできない、未踏の先端的な課題に果敢に挑戦してまいります。何卒ご支援のほど、お願い申し上げます。

2021年5月

page51

注目コンテンツ / SPECIAL