研究 / Research

科学研究費助成事業(科研費)

科研費は、研究者の自由な発想に基づいて行われる学術研究を広く支える資金であり、基礎から応用までの幅広い学術研究を対象としています。教員・研究員ともに、科研費の応募を積極的に行っており、多数採択されています。
また、獲得した科研費を他の研究機関の研究者(研究分担者)へ配分し、連携のもとで研究に取り組んでいます。
同様に、他の機関の研究者が獲得した科研費にも、研究分担者として多くのNIIの教員が参画しています。

採択状況(2021年度)

採択件数 金額(千円)
研究代表者 69 397,950
研究分担者(他機関→NII) 59 84,988

【科研費による研究事例】

マスター生体情報のなりすまし防止と生体情報の活用を実現する生体情報保護活用基盤

 基盤研究(A) 

研究代表者:情報社会相関研究系教授 越前 功

高性能なカメラやマイクロフォンの普及により、人物の顔、音声、歩行動作、さらには指紋、静脈、虹彩といった生体情報が、遠隔からの撮影や録音を経て、サイバー空間に共有されることで、生体認証の突破や、詐欺や詐称といった「なりすまし」の脅威となることが指摘されています。これらの「なりすまし」には、撮影や録音された画像や音メディアから人物の生体情報を復元する必要がありましたが、機械学習の進展により、特定の人物の生体情報を復元せずに、公開されている生体情報データセットから複数の人物の生体情報と認識される生体情報(マスター生体情報)を生成可能なことが新たに分かってきました。
そこで、本研究では、マスター生体情報の検出により「なりすまし」を防止する一方で、当該情報の生成に用いられる生体情報データセットについては、その有用性を担保しつつ、生体情報データセット固有の脅威を「無毒化」する生体情報保護活用基盤を確立します。

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説明可能フェイクメディア検出と自動ファクト照合による次世代メディア解析技術

 基盤研究(A) 

研究代表者:コンテンツ科学研究系教授 山岸 順一

本物に類似した映像・音声・文章等のフェイクメディアが機械学習により容易に生成でき、フェイクニュース等不正確な情報も氾濫するインフォデミック時代の今、社会に正しいメディアや情報を提示し、適切な意思決定を支援すべく、次世代メディア解析技術を世界に先駆け提案する。
まず、フェイクメディアの改ざん領域と手法を同定し根拠として表示する事で、真贋判定の説明可能性を向上させた生体検知手法を提案する。次に常に変化するメディア生成方法に頑健に対処するため、未知のフェイクメディア生成法を原理的に内包した新たな検知方法およびその学習法を提案する。更に、ファクトチェックを自動化した自動ファクト照合(Automatic fact verification)の高度化・メディア解析技術との融合に取り組む。

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知識表現・推論と機械学習の統合によるロバストAIの実現

 基盤研究(A) 

研究代表者:情報学プリンシプル研究系教授 井上 克巳

人工知能(AI)研究においては、機械学習(Machine Learning; ML)の発展によりパターン認識機能が近年飛躍的に向上しているが、記号処理を伴った高度な知的作業においては知識表現・推論(Knowledge Representation and Reasoning; KR)が活用されてきた。
本研究では、これまで独立して研究されてきたMLとKRの両技術を有機的に統合することで、説明可能であってロバスト性も有するような次世代のAIを構築するための技術基盤を確立する。このために、(1) KR技術の導入によるML技術の説明可能性・更新容易性の向上、(2) ML技術に支えられたロバストなKR技術の開発、(3) MLとKRの統合による画期的なAI応用、という3つの研究目標を設定している。

数理モデルと機械学習の統合的手法による次世代無線システムの高信頼実時間制御

 基盤研究(A) 

研究代表者:アーキテクチャ科学研究系教授 計 宇生

超スマート社会の先進的なアプリケーションと知的イノベーションをサポートするためには、情報通信サービス基盤のさらなる高機能・高性能・高信頼化が求められます。この研究では、次世代無線通信システムにおける大容量、高密度な無線接続要求に対応するために、ダイナミックに構成される無線システムの多次元的要素空間における集中/分散型信号処理・資源割当・干渉制御、自律的アクセス制御・移動制御などの問題を数理モデルと機械学習の統合的な手法で解決する方法を検討します。また、資源の時空間的制約を総合的に考慮し、通信・処理・記憶・制御機能をシームレスに連携させ、高信頼実時間処理をエンドエンド間で実現することをめざします。

視覚的障害物がキャンセルされた光線場を実空間中に創出する超多眼系構築技術の探索

 挑戦的研究(萌芽) 

研究代表者:コンテンツ科学研究系准教授 児玉 和也

狭小な雑居ビル等は視界を大きく遮る柱や壁の存在に悩まされながらも、老舗のライブハウスから数多のアイドルグループを育成した劇場に至るまで、安価なコミュニティスペースとして流用され、演劇、音楽、映画など新しい対抗文化を力強く支える持続可能な地域社会の拠点となってきた。感染症対策が要請した新時代のソーシャルディスタンスのもと、さらなる狭小空間のリサイクルにより都市の効率的コンパクト化を推し進めるには、こうした視覚的問題の解消が欠かせない。空間中を飛び交う光線を遮蔽物の前後等で自在に入出力し視覚的障害物の仮想的透明化を実現する超多眼系の構築に取り組む。

自動解析サービスに対するオブジェクトレベルの敵対的サンプルを用いた個人情報保護

 若手研究 

研究代表者:情報社会相関研究系特任助教 レ チュンギア

本研究の目的は、SNS上の写真に含まれる個人情報をデータ解析サービスから保護するため、オブジェクトレベルの敵対的サンプルを探索することです。オブジェクトローカライゼーション、ランドマーク認識、視覚言語システムを用いた個人情報の無断解析・追跡を防ぐことを計画しています。また、従来の敵対的サンプルでは画像全体に適用されるため、見た目が不自然になるうえ、変換・圧縮によって無効化されやすいという課題がありました。本研究では画像中の操作可能な領域を自動的に特定し、画質への影響を最小限に抑えて、保護された画像が目立たず自然に見えるようなソリューションを目指します。

VRリハビリテーションにおける運動回復プロセスのモデル化とリハビリ戦略の最適化

 新学術領域研究(研究領域提案型) 

研究代表者:情報学プリンシプル研究系准教授 稲邑 哲也

従来の運動機能障害のリハビリテーションは、理学療法士が患者の身体機能の回復状況を推定しながらリハビリの方針を策定するという、主観や経験則の要素が多くありました。この研究は、そのような理学療法士と患者のインタラクションの過程を最適化し、患者個人の状態に応じて最適なリハビリプログラムを提供するシステムの実現をめざします。運動障害がある現状の運動機能の状態Xに対して、リハビリテーションの戦略fを施すことによって、運動機能状態Yに回復させる際のリハビリ過程Y=f(X)をモデル化することを目的とします。これにより効果の高いリハビリテーション戦略の自律的な決定が期待できます。

振動同期を利用した分散合意手法に関する研究

 基盤研究(B) 

研究代表者:情報社会相関研究系教授 佐藤 一郎

自然界の振動系の同期現象(例えば心筋の伸縮周期やホタルの発信周期などの同調)に相当するメカニズムを分散システムに導入して、分散合意を効率化していきます。分散合意はさまざまな分散アルゴリズムの基礎となりますが、複数コンピュータによる合意要求等が重なると、分散合意処理に手戻りが生じ、合意に至るコストが大幅に大きくなるという問題が知られています。一方、分散合意手法がマルチキャスト通信とそれに対する返信を順番に繰り返していることから、自然界の振動系の同期現象と近く、自然界の同期メカニズムを分散システムに導入する方法を提案し、実装・評価を行います。

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