研究 / Research

参画する大型プロジェクト

受け入れ状況(2024年度)

受け入れ件数 金額(千円)
35件 5,253,816

※年間の研究費が20,000千円以上のプロジェクト

科学技術振興機構(JST)ASPIRE

情報技術への社会的信頼を樹立するソフトウェア研究ネットワーク

研究代表者:アーキテクチャ科学研究系 教授 蓮尾 一郎

近年の情報技術の発展はめざましいが、(自動運転の国際安全規格の不在にみられるように)安全性保証技術が未発達で、新情報技術の社会受容の妨げとなっている。本研究は、従来情報技術の安全性保証を担ってきたソフトウェア科学分野に立脚し、同分野が新情報技術において直面する2つの学術的困難、即ち (1) 研究コミュニティの細分化と (2) 物理的・統計的要素の包摂、これらを解決する。日本側は2つの困難を乗り越える世界初の業績を複数有しており、そのリーダーシップのもと独・蘭・英のトップグループとともにソフトウェア科学を変革する国際ネットワークを構築する。若手を中心としつつ卓越したシニア研究者も含む体制により、若手の往来による個別成果を大きな学術的うねりにつなげる。また4 拠点体制を通じて(線的でない)面的協働を実現する。本研究の学術的成果は国際規格などの社会・産業応用に接続され、新情報技術への社会的信頼の樹立と、真の情報化社会の実現の基礎となる。

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JST ASPIRE

離散数学、グラフアルゴリズム、グラフ理論の横断的研究

研究代表者:情報学プリンシプル研究系 教授 河原林 健一

日本では、情報学分野のトップ国際会議において、全体のわずか数パーセントの日本人研究者の論文しか採用されていない等、理論研究者が日本企業に貢献した例が極端に少ないだけでなく、理論研究者が活躍している事例も少ない。巨大IT 企業のようなイノベーションを推進するためには、数学理論を熟知した人材が、社会問題解決に挑む必要がある。

このような背景のもと「ERATO 河原林巨大グラフプロジェクト(2012-2018)」では、数学的理論を駆使することのできる人材を社会に供給し、かつ数学的理論を情報学の各分野に応用することによって、日本のIT 基礎研究分野の地位向上にも貢献した。さらに、理論(数学的)解析を主とするアルゴリズム分野のトップ国際会議であるSODA'13、SODA'15、FOCS'15、STOC'17にて最優秀論文賞受賞するなど、世界の当該分野をけん引するような研究成果をあげてきた。

ASPIRE では、研究活動のさらなる強化、特にアルゴリズム、離散数学のそれぞれの分野での世界的な研究成果発信を目指し、かつアルゴリズム・離散数学研究における世界的拠点の構築も目指す。また海外研究者との共同研究を通して、PD、大学院生の研究交流を行い、アジア、そしてヨーロッパの離散数学、グラフアルゴリズム、そしてグラフ理論研究のVisibility 向上もめざす。

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JST AIP加速課題

フェイクメディア検知技術の社会実装加速と普及

コンテンツ科学研究系 教授 山岸 順一

人間の顔や音声などを深層生成モデルにより学習し、本物と見まがうような画像や音声を合成し、不正目的で利用する問題は、「ディープフェイク」として社会で認知され、現在世界中で対策が求められている。この課題に対処すべく、日本の国立情報学研究所、仏アビニョン大学、そして仏Eurecom 研究所で2018 年度から20023 年度に日仏共同戦略的研究推進事業「VoicePersonae: 声のアイデンティティクローニングと保護」を実施し、映像および音声のディープフェイク検知分野における先駆的研究成果を挙げた。また更に国内企業が研究成果を利用できるように一気通貫でディープフェイク映像検知ツールSYNTHETIQ VISION も開発し、研究成果の社会還元も行った。

その一方、StableDiffusion 等の画像生成商用サービスや音声のボイスクローン商用サービスが急速的に普及し、悪用事例が多々報告され始めている状況を鑑みると、AI製フェイクメディアが悪用された場合への対処技術の研究も、研究室単位のラボ実験スケールから、実社会を想定した技術へ迅速にスケールアップする必要があり、現在進行形の社会問題への対策技術として利用可能にする必要がある。

そこで、本AIP 加速課題では、我々が上記CREST プロジェクトにおいて研究を行ってきた複数のフェイクメディア対策技術の成果を統合し、さらに多くの日本企業がフェイクメディア対策技術を利用できるようにすると同時に、実社会への導入のために技
術高度化と不足技術の研究開発を実施中である。

具体的には「マルチメディア対応フェイクメディア検知技術」「フェイク追従のための機械学習の高度化」「音声・映像のアクティブディフェンスの開発」を主要テーマとして研究開発に取り組んでいる。

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JST CRONOS

データの非規格化を許容するインクルーシブロボット基盤モデル

研究代表者:情報学プリンシプル研究系 助教 小林 泰介

AIを学習するためのデータを収集する際には、一般的には入出力サイズやデータの種類など、規格を整えることになる。このデータの規格化はロボット分野でも一般的で、例えば複数のロボットやセンサ、アクチュエータを連携させる上で有用なRobot Operating System (ROS)では、観測・指令データの形式を事前に確定・共有する必要がある。近年注目を集めているロボット基盤モデルでは、大規模データを複数のロボットから収集して学習する際に各々の身体差を吸収すべく、入力を画像と言語、出力をロボットの手先位置移動量に入出力データの規格を揃えている。データの規格化はロボットシステムの開発を円滑にする一方で、規格に収まらない多くのデータを切り捨てる。特に、ロボットが有するセンサや自由度の構成は多様の一言であり、その規格化は非常に限定的な共通項のみの利用を強制する。いかに大規模データを収集しようとも、現状の規格化を前提とした方針では、多様なロボットの性能を十全に発揮できない。そこで本研究では、非規格化されたまま通信・収集されたデータに対し、多様なロボットに展開可能かつ各々の性能を最大化するデータ処理・学習基盤「インクルーシブロボット基盤モデル」に挑戦する。特に、優先して非規格化すべき4種、モダリティ・身体構造・動作指令・教示方法、に焦点を当て、非規格化に伴う差異を吸収する要素技術を各々の専門家が開発する。これらを統合することでインクルーシブロボット基盤モデルを構築し、個性豊かなロボットを持つ多くの研究者・大学や企業が自由にデータ共有して、それを活用したAIロボットの実現や社会実装を加速させる。

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JST 経済安全保障重要技術育成プログラム

サイバー攻撃下の抗堪性を確保するインフラ運用支援システムの実現

研究代表者:アーキテクチャ科学研究系 教授 高倉 弘喜

サイバー攻撃は日々巧妙化し、サイバーセキュリティの専門家を擁する機関ですら被害が顕在化するまで水面下で侵食する攻撃に気付けないこともある。また、従来の情報インシデント対応では、被害確認後にシステム緊急停止、原因調査、再発防止策を経て運用再開の手順を踏むことが一般的であった。

一方、多くのインフラ運用が扱う物理現象や化学反応を考えると、被害発生を受けて制御システムを緊急停止させてもこれらの瞬時停止は不可能である。それどころか、緊急停止を引き金としてインフラが制御不能に陥れば重大インシデントに至りかねず、安定停止状態になるまで制御を継続しなければならない。インフラ運用では、攻撃を阻止する防御力だけでなく、攻撃への対応中でもサービス継続に必要な必須機能を維持する抗堪性の確保も必須となる。

そこで、重要インフラの一つである医療を対象とし、医療情報ネットワークにおいてサイバー攻撃の存在把握、攻撃の意図性判定、被害範囲の特定などにより攻撃で医療サービスが受けるインパクトやリスクを推定する手法を実現する。推定に基づき、看護に大きな影響を及ぼす重要医療機器の特定やデータ汚損の有無確認、汚損データの無害化処理による医療サービスの維持、運用継続が困難と判定した際の医療従事者への代替措置案の提示など、重要インフラ運用を支援する手法を開発する。これらの実現を目指し、代表機関のNII、京都大学・大阪大学・九州大学・順天堂大学に所属する情報セキュリティ管理、情報管理、ネットワーク管理、医療情報の研究者が連携する5 年計画のプロジェクトである。

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JST 創発的研究支援

言語知性の機能的・発生的評価基盤の構築

研究代表者:コンテンツ科学研究系 助教 菅原 朔

自然言語処理の分野では、人間のように言語を理解するシステムの構築が目指され、その評価には自然言語理解ベンチマークが用いられてきた。近年、大規模言語モデル(LLM)が既存システムを上回る精度を示しているが、評価の説明性が低いという課題がある。本研究では、言語理解システムの評価に関する三つの課題に取り組む。第一に、現状のモデルは論理的・社会的・認知的な機能的能力が不完全であると指摘されており、実世界の言語使用に対応するための評価タスクの設計が必要である。特に、複雑な議論の論理的把握や常識推論における評価を充実させる。第二に、人間とモデルの言語獲得過程には乖離があり、意図した能力を効率的に獲得させる方法が確立されていない。モデルはバイアスを利用した問題解決や語用論的推論で人間とは異なる振る舞いを示し、学習の発生的・段階的評価が求められる。さらに、現状の言語モデルは計算資源の観点から非効率であり、人間の言語獲得と同様に他のモーダル情報を考慮した学習原理の検討も必要である。第三に、ベンチマークの妥当性を向上させる評価方法が未整備であり、適切なタスクセットや評価指標が明確でない。また、モデルの出力をより強力なモデルで評価する手法の信頼性も十分に検討されていない。本研究は、機能的能力の評価、発生的評価手法の確立、心理測定学的な評価手法の整備を通じて、人間らしい高度な言語理解システムの評価基盤を構築することを目的とする。これにより、信頼できる実世界応用、意図した能力を備えたシステムの効率的構築、説明性の高い評価手法の確立を目指し、人間とシステムの双方による言語理解を探究する。

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