研究 / Research

情報社会相関研究系

水野 貴之
MIZUNO Takayuki
情報社会相関研究系 准教授
学位:博士(理学)
専門分野:情報利用
研究内容:http://researchmap.jp/takamizuno/
研究室WEB

研究紹介

経済物理学の視点から、ブームの法則を解き明かす

コンピューターネットワークの普及によって、人々の行動が電子媒体に大量に記録されるようになりました。この膨大な電子データを物理学の手法を使って解析し、自然現象と同じように経済現象や社会現象を解き明かそうというのが経済物理学とよばれる新しい学問です。私は経済物理学の立場から、経済活動の中で起こるブームの法則性を解き明かしたいと考えています。

データ化された行動からブームを読み解く

ある商品がブームになると、ブームにあおられた人々がこぞってそれを買い、品薄状態に陥って高値で取り引きされるようになります。金融市場で投資家たちが大量の投機を行うと、資産価格が高騰してバブルが起こります。やがて、ある時点でクラッシュし、今度は一気に暴落します。不動産においても企業の資産や成長においても同様で、ブームの芽が生まれてから崩壊するまでのプロセスには共通の法則性が見られます。
こうしたブームは、人々の行動が複雑に作用しあって起こる現象です。今は消費者の購買履歴や店舗の価格改定履歴,市場の取引データ、企業の財務データ、ネットサーフィンの履歴や電子メールなど、行動を記録したデータは膨大にあるわけですから、それらを詳細に観測し分析すれば、人々がどう動き、どんなメカニズムでブームが起こるのかが見えてくると思うのです。実際に、金融市場での暴騰・暴落のメカニズムは少しずつわかってきています。ミクロの動きが積み重なって地震というマクロな現象が起こるのと同じように、暴落の前には投資家たちが通常とは異なる動きをしているのです。

ブームの普遍的な方程式を見つけたい

価格比較サイトにおける店舗の価格改定と消費者によるクリックのデータを分析し、家電オンライン市場をモデル化し、予測される価格変動を再現することにも成功しています。このモデルを使えば、値崩れを起こす前兆が読めるようになります。さらに、企業についてもその成長が予測できるようになってきました。最終的にはそれぞれの分析結果をつなげて、ブームの普遍的な方程式を導き出すことを目指しています。
もし方程式が完成すれば、バブル崩壊や価格の暴落などのリスクを緊急地震速報のように事前に予測し、ブームを制御できるようになるはずです。経済の動きをより正確に把握できるようになり、市場のルールづくりや金融政策の面でも役立てられるのではないかと思います。

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取材・構成 財部恵子

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