研究 / Research

コンテンツ科学研究系

孟 洋
MO Hiroshi
コンテンツ科学研究系 助教
学位:1997年 博士(工学)(東京大学)
専門分野:パターンメディア
研究内容:http://researchmap.jp/mohiroshi/

研究紹介

「映像百科事典」をつくる

映像を知識として使う

例えばニュース番組では、毎日事件をはじめとするたくさんの出来事が報じられています。新しい話題ばかりではなく、時間の経過とともに変化した、あるいは新たに明らかになった情報について、取り上げられたりもします。同時期に起きていたさまざまなニュースを比べてみると、ある社会現象が浮かび上がってくることもあります。しかし、単にニュース番組を見て、そこから時代の流れを汲み取ることは難しいでしょう。
テレビに代表される放送番組は、これまで視聴者にとっては受動的な情報源にすぎませんでした。しかし今では、オンデマンド視聴など、能動的に番組を選択できるようになり、さらに映像を知識として「使う」時代がやってこようとしています。「絵」で情報をあらわすことができる映像は、非常にわかりやすい知識源の1つです。大量にある映像の中から、必要な映像を探しやすくすることはもちろん、その映像が何をあらわしているのかを明らかにする技術、索引付けや自動整理の仕組みが不可欠です。現在、私はこれらの有用な技術の開発に取り組んでいます。

映像の索引付けとアーカイブ構築

1人の視聴者が、テレビで放映される番組のすべての映像を見ることは現実的に不可能です。そこで、ある番組がどのような内容なのかを知るための索引情報が必要になります。これまでは、新聞のテレビ欄のように、内容の要約を文字であらわすのが一般的な方式でした。しかし、文字は、内容をわかりやすく説明できるものの、映像の「絵」や「時間の流れ」を表現することが不得意です。映像にも、文章と同様に、話題の流れに応じた構造があります。例えば、あるニュースから発展した別のニュースは、もとになった映像を部分的に含む構造をとります。私は、この構造法則をとらえて、映像の中の重要な部分を静止画と文字で表現するために映像の索引付け手法の開発に取り組んでいます。また同時に、これらの技術により、さまざまな映像を蓄積し活用することができる、信頼性の高いアーカイブを構築することができます。このような映像アーカイブからは、例えば「旬のニュース」を自在に取り出せるうえ、あるニュースが、他との関連でどのような位置づけにあるニュースなのかを知ることもできます。このために、現在、放送番組、特にニュースを長期保存し、それらを対象にして解析とアーカイブの構築を行っています。

映像百科事典に向けて

高度な映像索引付けと自動整理が実現され、映像アーカイブが完成すれば、大量の映像情報の中で「今、何を見るべきなのか」を選ぶ手助けができます。こうなると映像は単なる情報ではなく、それ自体を知識として活用することができるようになるのです。私の夢は、いつかこのような映像の知識体系を「映像百科事典」のようなものにつくり上げることです。

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取材・構成 田中幹人

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