研究 / Research

コンテンツ科学研究系

西岡 千文
NISHIOKA Chifumi
コンテンツ科学研究系 助教

サイエンスライターによる研究紹介

進みゆくオープンサイエンスの潮流

 現在、学術研究成果等の公開において、オープンサイエンスといわれる流れが加速しています。本来、学術は研究者のみならず誰にでも開かれるべきものですが、学術(特に自然科学)の公開媒体である学術雑誌購読料の高騰など諸々の事情によって、一般市民だけでなく専門家(研究者)でさえ、学術情報へのアクセスが困難になってきています。そこで、2000年代から、大学等の機関リポジトリをはじめとする、オンライン上の学術研究成果等の情報システムが多数稼働し、論文のオープンアクセスが進んできました。そのような形で、学術研究成果等を広く共有し、知識の創造・伝達のプロセスを全ての人に開放する運動(movement)をオープンサイエンスと呼んでいます。私は大学院生時代から一貫して、このオープンサイエンスの流れに基づいた研究に取り組んできました。

CiNii Researchのリソースを拡充

 NIIにおいては研究者としてコンテンツ科学研究系に所属するとともに事業系の教員としてオープンサイエンス基盤研究センターに所属し、NII研究データ基盤(NII Research Data Cloud)の開発に携わっています。NII研究データ基盤は3つの基盤から構成されており、そのうち、CiNii Research(検索基盤)チームでリソースの拡充・連携を担当しています。多くの研究者の方々がご存知の通り、CiNii Researchでは主に学術雑誌・紀要に掲載された論文、図書、研究データ、プロジェクト等を検索することができます。しかし昨今、プレプリント(査読を経ていない論文)など、従来の学術論文の枠を越えたリソースの重要性が高まっています。特に一昨年から世界を席巻しているCOVID-19の研究においては、多くのプレプリントによって最新の研究成果が共有され続けています。学術情報の検索基盤にプレプリントを加えるのは世界的な傾向で、たとえば、欧州ではOpenAIRE Exploreなどのシステムですでにプレプリントが検索できるようになっています。そのような新たなリソースをCiNii Researchに拡充していくことで「サイエンスの加速」に貢献していきます。

研究者としてオープンサイエンスを測定

 研究者としての私は、上記の仕事によって成長していく学術情報データベースに関連して、オープンサイエンスの状況や研究者、アカデミア、社会などにどのような効果を与えていくかという調査研究を行なっています。例えば学術データ公開状況の調査は多くの機関で行われていますが、私の研究はメタデータやアクセスデータ等の「大規模なデータに依拠した分析」を特徴としています。また、自らオープンサイエンスの実践者でありたいとも思っており、自分の研究成果データの公開等を行っています。さらに、オープン・サイテーション(論文等の引用データのオープンデータ化)に関する研究も行なっています。学術論文の被引用数はその論文の価値を測る指標として多く利用されていますが、単に定量化された数値に注目するのではなく「なぜそのような数値が出てくるのか」あるいは「その数値の背景には何があるのか」を洞察しつつ使うべき指標です。オープン・サイテーションから始めて「どんなコンテクストで引用されているのか」、「研究者にどんなインパクトを与えたのか」といったところまで詳らかにしていきます。

指標の多様性。データの背景の重要性

 世の中に完全なものが存在しないのと同様に、研究評価においても完全な指標はありません。だからこそ、指標の多様性が重要となります。今後の研究では、そのような多様性の中でメタ評価を行うことによって、各エレメントの良い点と悪い点を示していきたいと考えています。また、CiNii Researchの開発実務では、エビデンスに基づく政策立案(EBPM)にも活かせるように、情報検索という面だけではなく、そのデータの背景やそのデータから導かれることなど、ソフト面においても有用な情報を提供できるようにしていきたいと考えています。


取材・構成=清水 修 2022年12月更新

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