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国立情報学研究所に「先端モバイル駆動研究センター」を新設
~高性能モバイル5G環境で革新的な価値創成プラットフォームを目指す~

 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NIIエヌアイアイ、所長:喜連川 優、東京都千代田区)は、2022年(令和4年)111日付で「先端モバイル駆動研究センター(Center for Advanced Mobile Driven ResearchCAMDR)」(センター長:喜連川 優 NII所長)を新設しました。NIIは本センターを拠点として、東日本電信電話株式会社(NTT東日本、代表取締役社長:澁谷 直樹、東京都新宿区)と共同研究を運営していきます。ローカル5G(*1)の高性能なモバイル機能をもとに、DX推進などに役立つ革新的な価値創成プラットフォームの創出を目指します。

 NIIとNTT東日本は、2022111日付で共同研究契約を締結し、この共同研究を運営する拠点として、NIIに共同研究部門(*2)の研究施設である「先端モバイル駆動研究センター」を設置しました。本センターには、両者以外に、センター発足当初に東北大学、東京大学、京都大学、広島大学からも研究者が参加し、今後もより多くの機関の研究者が参加する予定です。

 本センターで実施される共同研究は、超高速・超低遅延・多数同時接続といった特長がある第5世代移動通信システム(モバイル5G)を活用し、新たな価値創成を促進する革新的なプラットフォームを生み出すことを目的としています。モバイル5Gは、我が国の経済成長に不可欠なSociety 5.0 (*3)を支える基幹インフラとして、様々な分野での活用が期待されており、公衆モバイルネットワークに加え、ローカル5Gと呼ばれるプライベートモバイルネットワークが制度化されています。ローカル5Gは、大学や企業、自治体等の様々な運用主体が自らの建物や敷地内でモバイル5Gの電波を占有できる環境を構築できるため、様々な分野における斬新な活用やデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進などが期待されています。本共同研究では、産業界や大学等の連携により、特にローカル5Gのユースケース(*4)の蓄積や高度なアプリの開発・活用を通じ、新たな価値を生み出す革新的な共用プラットフォームの創出を目指します。

 NIIでは、世界一の高密度超高速400Gbpsネットワーク「SINETサイネット6(*5)の運用を2022年4月より開始しました。SINET6には、1,000の大学や研究機関等が約1,500回線で接続しており、このうち900回線以上が超高速(10Gbps, 40Gbps, 100Gbps, 400Gbps)の回線となっています。そのため、モバイル5Gの理論上の最高速度である10Gbpsの性能を最大限に活用できるバックボーンへの接続環境がすでに整っています。

 2018年12月から開始した「モバイルSINET(*6)」(商用モバイル網に学術専用の仮想モバイル環境を作りSINETL2VPN(*7)と結合させた仮想網)において蓄積してきた様々なユースケースを活用して技術の適用範囲を広げるなどにより、ローカル5G研究に得られた知見を有効に利用する予定です。

 今回の共同研究では、SINET6の高速性やこれまでのモバイルSINETでの経験を最大限に活用しつつ、今後展開が期待されるローカル5Gによる電波の占有(*8)、アンテナの動的指向制御、上り方向通信帯域割合変更などを可能とする高性能で高機能なモバイル環境を想定し、数多のユースケースや高度なアプリの開発・活用を進める予定です。これによりローカル5G環境を有効に活用するための次世代の革新的な共用プラットフォームの創出を目指します。

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<図> 先端モバイル駆動研究センターの取り組みイメージ

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ニュースリリース(PDF版)

国立情報学研究所に「先端モバイル駆動研究センター」を新設
~高性能モバイル5G環境で革新的な価値創成プラットフォームを目指す~


  • (*1) ローカル5G:携帯電話事業者によるモバイル5Gの全国サービスと異なり、地域や産業の個別ニーズに応じて、地域の企業や自治体等の様々な主体が、自らの建物内や敷地内でスポット的に柔軟に構築できる5Gシステム。
  • (*2) 共同研究部門:公益性が高く研究上有意義で優れた成果が期待できる研究部門を民間機関などから受け入れる経費等を活用して設置・運用するために情報・システム研究機構が制定している制度。
  • (*3)Society 5.0:サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムにより、経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(Society)。
  • (*4)ユースケース:ローカル5Gが持つ多くの特長を、超高速性や超低遅延性などの技術的尺度で示すのではなく、一般のユーザーが理解しやすく、将来の実社会での活用を促進するような使い方、適用方法等で訴求するための利用事例。
  • (*5)世界一の高密度超高速400Gbpsネットワーク「SINET6」:ここでいう高密度とは、ネットワークへの接続拠点が全国に多く整備され、加入機関が極力短い距離で接続拠点に接続できる状態のことを指す。SINET6では、従来に比べ接続拠点を20か所増強し、かつ、沖縄県を除く全ての接続拠点から超高速400Gbps回線が利用できる。SINETの全体像は2022年4月1日付ニュースリリース [Society5.0対応の学術研究プラットフォームを4/1スタート~全国400Gbps化したSINET6と研究データ基盤NII-RDCを融合し日本の研究データ活用・流通・管理を促進~] https://www.nii.ac.jp/news/release/2022/0401.html 参照。
  • (*6)モバイルSINET:2018年12月20日付ニュースリリース [SINET「広域データ収集基盤」新サービスの実証実験をスタート~Society 5.0の実現に向けて、環境・生体・IoT研究などで モバイル端末からのデータ収集と処理をワンストップで実現~] https://www.nii.ac.jp/news/release/2018/1220.html 参照。
  • (*7) L2VPN: Layer-2 Virtual Private Networkの略。レイヤ2(イーサネット系)で実現される、通信相手を特定したプライベートな専用網であるかのように利用できる仮想閉域ネットワークサービス。
  • (*8)電波の占有:公衆モバイル5Gでは、電波を他のユーザーと共用しているため通信帯域等に利用制限があるが、ローカル5Gでは、特定のエリアで電波を占有できるため、他ユーザーとの干渉が無く自由に利用できる。
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