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先端技術部門優秀賞の山岸 順一准教授に表彰状
第17回ドコモ・モバイル・サイエンス賞の授賞式
第17回ドコモ・モバイル・サイエンス賞(*1)の授賞式が10月19日、ANAインターコンチネンタルホテル東京で行われ、「声のアイデンティティに関する多角的研究」の業績により先端技術部門優秀賞を受賞した、NIIコンテンツ科学研究系 山岸 順一准教授に表彰状が授与されました。
山岸准教授は、複数人の収録音声から「平均声」をつくり、その平均声に本人の声を掛け合わせ、本人に似せた声をつくる「話者適応」という技術を開発。従来の手法では、1人当たり数十時間以上の膨大な音声を収録する必要がありましたが、この技術を用いることで、数分程度の少量の音声データから、性別、年齢だけでなく、話者特有の声質も再現できる「声のデジタルクローン技術」を世界で初めて確立しました。
そして、この技術を応用して、病気等により声を失いかけている方の声を再現し、コンピュータを介して自分の声で会話ができるようにすることに成功(「ボイスバンクプロジェクト」(*2))。さらに、声のなりすまし攻撃を検知する機械学習に利用可能な大規模コーパス(*3)を構築し、肉声由来の音声か人工音声かを区別する生体検知技術などを開発しました。この他、声のアイデンティティに関する音声知覚実験も行い、新たな科学的知見も発見しました。今回の授賞は、これらの業績の科学的価値が非常に高く、また福祉や医療などさまざまな分野で社会応用されていることが評価されたものです。
授賞式では、選考委員長の羽鳥光俊 東京大学名誉教授からの講評のあと、受賞者一人ひとりに表彰状が手渡されました。
第17回ドコモ・モバイル・サイエンス賞の授賞式で、表彰状を受け取る山岸准教授(右)
第17回ドコモ・モバイル・サイエンス賞の受賞者たち。前列一番右が山岸准教授、後列右は推薦者である喜連川 優 NII所長
山岸准教授の受賞の言葉
「ここ数年、機械学習により音声合成技術は大きく進展し、人間とほぼ同等の品質の音声を合成することが可能になりました。これからますます、音声合成が社会で活用されるようになるのは間違いありません。そこで、私が現在取り組んでいるのは、このようなすばらしい技術が、万が一、なりすましやフェイクビデオ等に悪用されたとしても適切に検出することができるように、生体由来の音声か、人工的に生成された音声かを識別するという生体検知の技術開発です。
これまで、多角的な視点から声のアイデンティティに関する研究を進めることができたのは、私個人の力ではなく、国立情報学研究所というすばらしい研究環境と、喜連川所長、副所長をはじめとする皆さまから貴重な研究指導を直接いただいていることのたまものです。また、国内外の共同研究者と日頃から有意義な議論ができていることのおかげだと感じています。この機会にお世話になった方々に心から御礼申し上げます。今回の受賞を励みに、今後もさらに研究を発展させるよう努力していきます」
関連リンク
- (*1): ドコモ・モバイル・サイエンス賞:日本国内における移動通信分野の発展と若手研究者の育成を目的として、優れた研究成果・論文等の業績に対し贈られる賞。「先端技術部門」「基礎科学部門」「社会科学部門」の三部門がある。
- (*2): 2015年6月15日付ニュースリリース「日本語ボイスバンクプロジェクトに FC 岐阜が連携 ホームゲームでプロジェクト紹介、ボランティア参加も呼びかけ」参照。
- (*3): コーパス:データベース化された大規模な言語資料。
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