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ニュースリリース
SINET「広域データ収集基盤」新サービスの実証実験をスタート
~Society 5.0の実現に向けて、環境・生体・IoT研究などで モバイル端末からのデータ収集と処理をワンストップで実現~
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII、所長:喜連川 優、東京都千代田区)は、学術情報ネットワーク「SINET5(*1)」とモバイル通信環境を直結した新サービス、SINET「広域データ収集基盤」の実証実験(*2)を12月21日に正式スタートします。
本サービスは、我が国が目指す未来社会の姿として提唱されているSociety 5.0実現に向けた、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)の高度融合への重要な一歩となります。
新サービスの概要
本サービスでは、これまで有線のネットワーク回線では接続できなかった広範囲のエリアや海上などの遠隔地において、民間モバイルキャリアが提供するモバイル網を活用し、研究データを取得できます。こうして得られた研究データは、モバイル通信環境とSINET5で提供しているセキュリティに配慮したネットワークサービス(L2VPNサービス)(*3)を連携させることで、安全に保存・収集が可能です。さらに民間の協力事業者が提供する計算リソースなどの「データ処理環境(*4)」への接続機能を連携させることで、ワンストップかつ広範囲な研究環境の実現が可能となります(図)。
〈図〉SINET「広域データ収集基盤」のイメージ
実証実験での主な研究テーマ
この新サービス「広域データ収集基盤」の実証実験に参加する研究者は、SINET接続用のSIMを観測機器などに装着することで、本サービス以外の通信回線を確保しなくてもデータ収集が可能になります。そのデータは、様々なデータ処理環境で解析し、結果を研究にフィードバックできます。これにより各種環境測定や生態観測、災害防止のための監視などが容易かつ広域に実現でき、研究の幅が広がると期待されます。
NIIでは広域データ収集基盤を活用する実証実験の公募を行っており、様々な研究分野からの提案を募集しています(*6)。今年5月から7月までに行った1回目の公募では19の研究テーマを採択しました。第1回公募で採択された主な研究テーマと中心となる機関は次のとおりです。
■ IoT技術を活用した気候変動にロバストなマンゴー生産システムの研究開発(琉球大学)
温度や湿度、日照光量、CO2等の生育環境計測センサーのデータを広域データ収集基盤で効率よく収集し、データ処理環境を活用して適切にデータを分析しフィードバック、可視化します。産学連携共同研究により、果実生産の最適化を実現します。
■ 脳波等の脳データを対象に感情、活力度、認知状態などを遠隔再現するプラットフォームの開発(広島大学)
各大学・公共施設から脳データを広域データ収集基盤により効率よく収集し、データ処理環境を活用したデータ蓄積・解析、遠隔再現(可視化)の実証実験を行います。脳生理情報というプライバシー保護情報のセキュリティを、閉域モバイル網による転送で確保します。
■ ウェアラブルデバイスを用いた生体データを対象にストレス等の心身状態計測、それらを基にした心理的意欲・身体的活性度の労働力指標を可視化する生体指標プラットフォームの開発(放射線医学総合研究所)
企業・大学等の勤労者データを広域データ収集基盤で効率よく収集、データ解析結果をフィードバックして、快適な労働環境を目指す実証実験を行います。閉域モバイル網によるデータ転送で、心理生体データというプライバシー保護情報の、セキュリティを確保します。
■ エッジコンピューティング基盤(Distcloud)を活用したIoT実証実験(大阪大学)
全国に設置したIoT機器を、広域データ収集基盤を介してDistcloud(広域に分散配置されたサーバ群を接続し合ったエッジコンピューティング基盤)と接続します。収集したデータをエッジコンピューティング環境に蓄積して処理を行い、IoT機器の適応動作を検証します。
民間の協力事業者が提供する「データ処理環境」
これまでも、SINETに参加している機関に所属する研究者は、L2VPNで接続している大学などの計算機環境や「SINETクラウド接続サービス(*7)」で接続している商用クラウドサービスが利用可能でした。
それに加えて、今回スタートする実証実験の期間中は、民間の協力事業者によって広域データ収集基盤のためにカスタマイズされた計算リソースなどのデータ処理環境がアカデミック条件の契約により利用可能となります。今回の実証実験のスタート段階で協力いただく民間事業者が提供する主なサービスは次のとおりです。
■ エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
「Things Cloudによるデータ処理サービス」
IoT機器のデバイス管理・データ収集・蓄積・可視化を細やかにサポート:IoTデータの有効な利活用のためには、大きな費用対効果が見込める最適化/自律化を見据え、まずはデータ収集や蓄積・可視化から取り組み始める必要があります。Things Cloudはこれらに対応し、ウィジェット等により簡単・短期間・ノンプログラミングで様々なシーンのデジタル化を実現します。また、APIで外部のデータ分析システムとも連携し、データの高度な利活用に貢献します。
「生体情報を活用した情報収集とその活用」
ウェアと小型専用端末を利用し、心拍/RRIの取得が可能:機能素材hitoe®を利用して心拍、RRI(R-R Interval)、加速度等をリアルタイムで取得可能です。取得したデータは、個人の高温環境下での身体への負荷があるか、眠っているか等の状態把握への活用が期待されています。また、運動時の選手の様子の把握、運転手の居眠り状況の把握等への活用が想定されます。
■ KDDI株式会社
「KDDI評価用MEC(Multi-access Edge Computing)基盤」
オープンソースを活用したMECアプリ評価仮想化基盤:SINET網から接続可能な、CPU/GPU双方に対応した仮想基盤へのアクセス環境を提供。コンテナ基盤(Kubernetes)に加えて、仮想マシン基盤(Openstack)も提供予定です。アプリケーションデプロイ管理コンソールおよび機械学習/AI環境も、オープンソースソフトウェアを中心に構築する予定です。低遅延要件が検証上必要な場合は、KDDI DIGITAL GATEで検証いただけます。
■ ソフトバンク株式会社
「ソフトバンクのクラウドよるデータ処理サービス」
データの収集・統合・可視化ができるプラットフォーム:構造・非構造両タイプのデータの取り扱いが可能で、収集・統合・可視化を実現するデータプラットフォームを提供します。設備はクラウド上にあり、ご利用者様で構築する必要はありません。多額の費用をかけて構築するような処理インフラも、初期投資なく利用を開始することができます。クラウドサービスの提供を通じて、デジタル時代に欠かせない「データ」の活用を支援できればと考えています。
■ 東日本電信電話株式会社
「スマートイノベーションラボ」
AI・IoT技術の社会実装の加速を支援する共同実証環境「スマートイノベーションラボ」:大学/研究機関がデータ活用研究の核としてAI、ディープラーニング、ビッグデータ等の収集や解析に取り組むにあたり、機器等の高額な調達費用や専門人材(データサイエンティスト)の確保等、参入における課題があります。これらの課題解決の一助となるようデータ処理環境(計算リソース、エッジコンピューティング環境)と、大学や研究機関等、パートナー企業と共同で研究する場を「スマートイノベーションラボ」として準備しています。これにより、大学や研究機関様等がデータ活用研究を推進できるようご協力いたします。
■ Amazon Web Services, Inc.
「アマゾン ウェブ サービス(AWS)」
AI/ML(機械学習)等をはじめとする125を超えるサービスを利用できます:AWSのクラウドサービスは、コンピュート、ストレージ、ネットワーキング、データベースのみならず、データ分析(アナリティクス)、アプリケーションサービス、展開、管理、デベロッパー、モバイル、IoT、AI、セキュリティ、ハイブリッド、エンタープライス・アプリケーションなど、多岐にわたっています。学術研究機関においても様々な研究や教育でAWSのサービスは活用されています。
■ 株式会社 佐賀IDC
「SINETデータ処理環境実証基盤サービス」
問合せ対応が充実したオンデマンド型サービス:IaaS環境(サーバ)を提供します。サーバ運用(設定確認・サーバ運用のご相談・脆弱性対応など)の手厚いサポートを実施しますので、IoT/AI/ビッグデータ解析などに注力できます。特に研究分野や研究対象に制限はございませんので、様々な分野でご活用いただけます。
■ さくらインターネット株式会社
「さくらのクラウドによるデータ処理サービス」
多目的かつ柔軟な利用が可能な大容量仮想サーバを提供:IoTで収集したデータの解析・蓄積用に、20コア/160GB/1TBの大容量仮想サーバをご提供致します。大容量メモリとマルチコアの組合せで、様々な分野でのシステム利用が可能と考えています。また仮想サーバは SINET5 のL2VPNサービスで大学と 10Gbps(冗長) で直結されますので、セキュアで高速な通信が可能です。
■ 日本マイクロソフト株式会社
「Microsoft Azure IoT Services」
IoTの実現に必要なフルスタックのサービスを提供:Microsoft Azure IoT Services は、Azure におけるエンドツーエンド IoT アプリケーションの作成を支援するよう設計された、包括的な一連のサービスとソリューションです。 完全にホストおよび管理されたサービスとしてのソフトウェア (SaaS) ソリューションから、別個の特殊なサービスとしてのプラットフォーム (PaaS) サービスやインテリジェント エッジを構築するテクノロジまで、Azure IoT には、お客様の業界のニーズ、会社のスキルとリソースに合った豊富なオプションとツールが揃っています。
ニュースリリース(PDF版)
SINET「広域データ収集基盤」新サービスの実証実験をスタート
~Society 5.0の実現に向けて、環境・生体・IoT研究などで モバイル端末からのデータ収集と処理をワンストップで実現~
(*2) 本サービスの実証実験は、実証実験公募に採択された研究ユーザーに対して提供するものである。なお、将来的にはSINETに参加している大学・研究機関等に所属する全ユーザーが活用できるサービスとする予定である。
(*3) L2VPN(Layer-2 Virtual Private Network):レイヤ2(イーサネット系)で実現される、通信相手を特定したプライベートな専用回線であるかのように仮想的に利用するサービス(仮想閉域ネットワーク)。
(*4) データ処理環境:各大学等の計算環境、商用クラウドサービス、協力事業者が提供する処理環境等のこと。協力事業者からは、エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社、KDDI株式会社、ソフトバンク株式会社、東日本電信電話株式会社、Amazon Web Services, Inc.、株式会社 佐賀IDC、さくらインターネット株式会社、日本マイクロソフト株式会社の8社(2018年12月20日現在)が、共同研究ベースによる条件付きの計算リソース等を提供する。利用者(公募採択者)は、サービスを選択し事業者と契約することで利用が可能となる。今後の協力事業者の追加や提供概要は、ウェブサイト(https://www.sinet.ad.jp/wadci)に掲載していく。
(*5) GPUサーバ:科学シミュレーション、機械学習、データ解析などを実行するため、グラフィック処理ユニット (GPU:Graphics Processing Unit) と CPU を併用搭載したサーバのことをいう。
(*6) 新たに研究分野の拡大を狙った2回目の公募を今年10月から行っている。 https://www.nii.ac.jp/news/release/2018/1012.html
(*7) SINETクラウド接続サービス:大学や研究機関がクラウドをICT基盤として効果的に利活用できるように支援するNIIの取り組みの一つで、SINET加入機関とクラウド事業者の間をSINETのL2VPNサービスで接続する環境を提供している。 https://www.nii.ac.jp/news/release/2017/0316-1.html
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