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「モバイルセンシングを活用したスマートシティアプリケーション」研究プロジェクト/「クラウドセンシングを活用した バスロケーションサービスに関する実証実験」を実施

大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII、所長:喜連川 優、東京都千代田区)は、国立大学法人 北海道大学(以下、北海道大学)と共同で開発したスマートフォン用アプリ(以下、本アプリ)を用いたバスロケーションサービス「Ride around-the-corner.(ライド・アラウンド・ザ・コーナー)」の実証実験を3月17日から開始します。

本実験では、バス利用者自身が本アプリを利用して位置情報提供に協力するというクラウドセンシングによって、バス事業者への負担が少ないバスロケーションサービスの実現を目指します。北海道札幌市や地元バス事業者の協力を得て、札幌市を中心とする地域を対象に実証実験を行い、利用者と事業者双方にとって有益なサービス提供につながることを検証します。

本アプリの開発および実証実験は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の委託を受け、「ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発」の一課題の中で実施しています。

背景

従来のバスロケーションサービスでは、各々のバスに位置情報を取得するGPS受信機と、得られた位置情報を定期的にサーバに送信するための通信回線が必要となり、これをバス事業者自身が負担していくにはコスト面で課題があり、財政の厳しい自治体や事業者では導入が進んでいませんでした。

特に地方都市においては、人口減少とともにバスの路線やその運行本数の減少が進んでおり、そのような中での天候や交通状況等による運行スケジュールの乱れは利用者の利便性を大きく損ね、公共交通機関としての信頼度の低下も懸念されます。

バスの到着時間が利用者に予め分かるバスロケーションサービスは、こういった地方都市での公共交通のサービス性向上には有効なものと考えられ、これを簡便かつ安価に導入可能とする方法の実現が期待されています。

適用技術

本実験で提供するバスロケーションサービスは、バス利用者の協力を得て成り立つクラウドソーシングモデル(特許出願中(*1))を採用しています。

各バスにはIDの付いたBluetooth信号を発する簡易なビーコンのみを設置します。

乗車したバス利用者がスマートフォンに本アプリをインストールしていると、本アプリがバスのID付きのビーコン信号を検知し、スマートフォンから利用者の位置情報とIDを合わせてバス位置情報収集サーバに転送します。

同様にバス停にもビーコンを設置し、バス利用者の端末から位置情報を取得することで、バス事業者は、バス停での利用者の状況を把握することができます。

実証実験の内容

本実験では、北海道中央バス株式会社の協⼒の下、札幌市内の路線バス3路線8系統にて、路線バスにビーコンを設置して⾛⾏させます。

今回の実証実験では、本アプリ実験担当者が乗車し、位置情報の収集やサーバを経由したバス位置情報の市民への提供が円滑に行えるか、その動作や課題等を検証します。

本サービスは、バスの位置を知りたい利用者が、バスの位置の収集にも協力するクラウドセンシング型バスロケーションサービスであり、この市民参加型のモデルにより、バス事業者の負担を軽減し、利便性の高い公共交通サービスが可能となることを実証していきます。

20180316_1.png(図)「Ride around-the-corner.」アプリの仕組み

「Ride around-the-corner.」の主な特徴

1.バスの位置情報を市民が収集する「クラウドセンシング(Crowdsensing)」

バス利用者がサービスを利用するだけでなく、状況把握のためのデータ収集に参加することで、利用者自身にとってメリットがあるだけでなく、他の市民にも役立つサービスです。

バス利用者に限らず、本アプリをインストールした市民の方がバスの近くにいれば、バスの位置情報の収集に協力できます。

2.公共交通事業者のサービス向上を市民が支える

バス事業者は、ビーコンを設置するのみのため、初期導入コストが相対的に低くなります。また、位置情報の取得とその通信は、利用者の端末と回線を利用するため、バス事業者側のランニングコストの負担は、電池代程度となり安価で済みます。

バス利用者にとっては、バスの位置が分かるというメリットがあり、実質的な負担は極めて小さいため、アプリサービスへの参加・利用へのデメリットがほとんどありません。

3.バス事業者が利用者の動向を把握できる

ビーコンをバス停に設置することで、利用者がどのバス停でいつからバスを待っていて、どの区間を乗車したのかなどをデータで取得することができます。

利用動向を把握できるようになることで、効率的な計画の策定などに活用できるようになり、公共交通サービス改善などに役立てられることが期待されます。

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「Ride around-the-corner.」アプリ概要

本アプリは、「Ride around-the-corner.」サービスをご利用いただくためのiPhone/iPad用アプリです。

アプリリリース日: 平成30年3月11日
サービス提供期間: 平成30年3月31日まで(予定)
動作環境: iOS9以降のiPhone(5S以降)およびiPad
言語: 日本語
価格・利用料: 無料
利用者登録: ログイン認証用のパスワードおよび簡易アンケートへの回答のみで利用可能

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アプリダウンロードページ(アップル社 App Store)

「モバイルセンシングを活用したスマートシティアプリケーション」研究プロジェクト

本プロジェクトは、国立情報学研究所 相原 健郎 准教授および北海道大学 猪村 元 特任助教らによる研究グループが実施しているものです。

スマートフォン等の普及しているモバイル端末を活用し、サービス利用者である市民からリアル空間(街)の状況把握に資するデータを収集するクラウドソーシングの方法論に関する研究です。

特にここでは、利用者にとって有用なサービスを提供することで、その利用データを収集し、収集したデータを活用することでサービスの高度化を実現する好循環を生み出すことが重要であるという認識の下、利用者の参加を促す動機付け等に着目した取り組みを行っています。

収集したデータは、利用者自身に還元するとともに、公共の目的で広く活用可能にすることを目指しています。

本アプリの開発および実証実験は、国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の「ソーシャル・ビッグデータ利活用・基盤技術の研究開発 -- 課題A ソーシャル・ビッグデータ利活用アプリケーションの研究開発(モバイルセンシングを活用したスマートシティアプリケーションの研究開発(178A13))」の下で実施されています。

本実験では、主に北海道札幌市を中心とする地域を対象に、札幌市や地元バス事業者等の協力を得ながら、その有効性等の検証を行っています。

ニュースリリース(PDF版)

「モバイルセンシングを活用したスマートシティアプリケーション」研究プロジェクト/「クラウドセンシングを活用した バスロケーションサービスに関する実証実験」を実施


(*1):特願2017-053249:「移動体位置測位システム」
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