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ニュースリリース

研究データ管理基盤「GakuNin RDM」本運用を開始
全国学術機関の研究データ管理・共有を支援

 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NIIエヌアイアイ、所長:喜連川 優、東京都千代田区)のオープンサイエンス基盤研究センター(*1)RCOSアールコス、センター長:NIIコンテンツ科学研究系教授 山地 一禎)は、公開前の研究データを組織的に管理・共有するための研究データ管理基盤「GakuNinガクニン RDMアールディーエム」を開発し、2月15日(月)より本運用を開始しました。
 NIIは、日本の科学技術政策や国際的なオープンサイエンスの動向を受けてGakuNin RDMを開発しました。本サービスは日常的な研究室での研究活動から公的資金での研究プロジェクトまで研究者のデータの管理を支援するサービスであり、共同研究者間で組織を越えてデータの管理・共有ができるほか、多様なクラウドサービスや研究ソフトウェアとの連携も可能です。 別の観点では、GakuNin RDMはシステムに保存された研究データについて、証跡管理機能で操作履歴が記録されるため、研究不正につながる操作を抑止することが期待されます。研究成果の公開前に研究不正を未然に防ぎ、研究データが正しく公開・検索される起点となることにより、これからのオープンサイエンスの発展を支えます。

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https://rdm.nii.ac.jp/

 近年、産業のみならず学術の場においてもデータの重要性が増しています。研究データを適切に管理することは、研究プロジェクトを効果的に進めるためだけでなく、成果が得られる過程の透明性を高めるうえでも重要です。また、高度に複雑化した現在の学術研究において、研究者は学際的研究や産学連携での研究プロジェクトをスピーディかつ高効率に進める必要があります。我が国の科学技術政策(内閣統合イノベーション戦略2020(*2))の中でも、「公的資金による研究活動により生み出された研究データ利活用を含む先進的なデータマネジメントの促進」等が盛り込まれており、国レベルでの研究データ基盤の必要性が高まりつつあります。

 こうした学術における新たな要請に応えるために、国立情報学研究所では2017年4月より、研究データの管理を支援する新しいサービスGakuNin RDMの構築を進めてきました。2019年1月からの実証実験の中で必要な機能の拡充を重ね、2021年2月15日(月)より、本格的に大学や研究機関に向けたサービスの運用を開始します。

 利用申請については、利用申請情報のページをご参照ください。

利用申請情報:
https://meatwiki.nii.ac.jp/confluence/display/gakuninrdmusers

 GakuNin RDMは、組織を越えた複数の研究者と迅速に研究データの管理・共有ができるため、個々の研究活動だけでなく、共同研究のハブとして、多様な規模や分野の研究プロジェクトにも柔軟に活用することができます。また、研究者がよく利用するクラウドストレージや外部ツールとも連携できる高い拡張性を備えています。本サービスは、学術認証フェデレーション(学認)(*3)にも参加しており、テレワークや出張先からでも、いつもと同じ環境にログインしてサービスを利用できます。

 GakuNin RDMは、第三者の時刻認証事業者のタイムスタンプを用いた証跡管理機能を持ち、システム中に保存されたデータがある時刻に存在したことを証明することができます。このことは、研究公正の観点からも強力な機能となります。学術機関にとっては、共通基盤のシステム上で研究データを一元管理することにより、学術機関の組織のデータガバナンスを高めることが期待できます。学認参加機関であれば、利用申請および認証システムを連携することで、容易に本サービスを組織として導入することができます。

 図1はGakuNin RDMを用いて複数の研究グループで、研究データ管理・共有を行っている例です。本サービスを用いると、研究主宰者が研究マネージメントのために各グループのプロジェクトを一覧で管理することもできます。

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図1 GakuNin RDMを用いた研究室での研究データ管理の例

山地 一禎 NIIオープンサイエンス基盤研究センター長からのコメント:

 本サービスは、NIIが提供する研究データプラットフォーム、NII Research Data Cloud(NII RDC)(*4)の一つで研究データの管理・共有を担う「管理基盤」です。

 これまでNIIの学術コンテンツ事業では、公開された論文などの研究成果を扱うサービスを提供してきました。NII RDCの中でも、公開基盤と検索基盤と呼ばれているものは、従来のサービスに加えて研究データも扱えるように強化したものですが、管理基盤は、公開に至る前の研究中の情報を扱う新しい基盤を提供するものであり、我々にとっても大きな事業転換になります。

 GakuNin RDMは、これまでに増して、研究者の日々の生活に近いサービスになることが期待されることから、今や研究に欠くことができなくなっている学術情報ネットワークSINET(*5)と同じように、GakuNin RDMを研究生活の一部になるように成長させたいと考えております。GakuNin RDMを利用することで、日々の研究データ管理が一段と便利になるだけでなく、研究コラボレーションの創世の場となることを目指します。研究者や組織の研究データ管理に携わる方々の声をどんどん反映できるような機能拡張にも努めて参ります。

ニュースリリース(PDF版)

研究データ管理基盤「GakuNin RDM」本運用を開始
全国学術機関の研究データ管理・共有を支援

 


  • (*1) オープンサイエンス基盤研究センター:世界的なオープンサイエンスの気運を受け、そのインフラとなる学術基盤を開発・運営するために、2017年4月にNII内に設置。学術論文と研究データがアカデミアおよび社会で広く共有され、幅の広い研究活動がオープンに行われることで、研究活動の加速化や、社会と緊密な連携の上に成り立つ問題解決が進み、学術活動が新しい次元(=オープンサイエンス)に移行することが世界的に期待されている。詳細はhttps://rcos.nii.ac.jp/ 参照。
  • (*2) 内閣統合イノベーション戦略2020:https://www8.cao.go.jp/cstp/tougosenryaku/
  • (*3) 学術認証フェデレーション(学認):学術認証フェデレーションとは、学術e-リソースを利用する大学、学術e-リソースを提供する機関・出版社等から構成された連合体。各機関はフェデレーションが定めた規程(ポリシー)を信頼しあうことで、相互に認証連携を実現することが可能となる。詳細は https://www.gakunin.jp/ 参照。
  • (*4) NII RDC(NII Research Data Cloud):NIIが提供する学術研究活動の過程で生成される研究データや関連の資料を管理・公開・検索するための情報インフラ。それぞれに独立した、管理基盤(GakuNin RDM)、公開基盤(WEKO3)、検索基盤(CiNii Research)から構成されている。
      公開基盤:https://rcos.nii.ac.jp/service/weko3/
      検索基盤:https://rcos.nii.ac.jp/service/research/
  • (*5) 学術情報ネットワークSINET:SINETは日本全国の大学・研究機関等の学術情報基盤として、NIIが構築、運用している情報通信ネットワーク。詳細は https://www.sinet.ad.jp/ 参照。
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