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ニュースリリース

人文学・社会科学総合データカタログ「JDCat」運用を開始
研究・教育、政策立案の分野で活用できる人文学・社会科学データを検索可能に

 独立行政法人 日本学術振興会(JSPSジェーエスピーエス、理事長:里見 進)と大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NIIエヌアイアイ、所長:喜連川 優)は、人文学・社会科学分野のデータを検索するための人文学・社会科学総合データカタログ「JDCatジェイディーキャット」を公開しました。このJDCatは、JSPSが推進している人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業(*1)(人社データインフラ事業)によるもので、NIIのオープンサイエンス基盤研究センター(*2)RCOSアールコス、センター長:NIIコンテンツ科学研究系教授 山地 一禎)が開発したリポジトリソフトウェアWEKO3をもとに構築したものです。このシステムを利用することで、人社データインフラ事業に参画している研究機関が提供する多様な人文学・社会科学分野のデータを分野横断的に検索したうえで、各機関のデータにアクセスすることができます。

人文学・社会科学総合データカタログ JDCat
https://jdcat.jsps.go.jp
2021年7月15日(木)10時公開

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図1 JDCatでは、JSPSの事業に参画している研究機関が提供する多様な人文学・社会科学のデータを分野横断的に検索することが可能です。データの所在を特定した上で、各機関が提供しているデータにアクセスすることもできます。

 人文学・社会科学分野のデータは、人間の営みや社会事象を捉えた記録の一種であって、学術研究はもとより、客観的な証拠に基づく政策立案をはじめとした、社会の様々な意思決定でも活用されています。これらのデータには、社会調査の個票データや公的統計の統計表、歴史資料のテキスト、画像データなど様々なものがあります。海外では、そうしたデータを公開し、広く社会と共有するための基盤の整備が積極的に進められています。今回公開したJDCatは、JSPSが公募を通じて採択した5つの研究機関(大阪商業大学JGSS研究センター、慶應義塾大学経済学部附属経済研究所パネルデータ設計・解析センター、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研究センター、一橋大学経済研究所、東京大学史料編纂所)が提供しているデータを分野横断的に検索できるシステムです。ただし、この度の公開では、社会科学分野のデータを対象とし、今年10月頃には人文学分野のデータを追加する予定となっています。

 JDCatで扱うデータを説明するための情報(メタデータ)は社会科学分野の国際標準規格Data Documentation Initiative(*3)に準拠しており、日本語と英語で検索できるように設計しています。検索は、一般的なテキスト検索だけでなく、詳細検索とファセット検索(*4)も用意しました。人文学・社会科学分野のデータに関心のある幅広い利用者にとって、直感的で使いやすい検索環境になっています。本システムを経由して取得されるデータが、個人研究や共同研究、教育、政策立案といった様々な場で利活用されることを期待しています。

廣松 毅 JSPS人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進センター長からのコメント:

「今回公開したJDCatはJSPSが推進している人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業の一環として行ってきたデータカタログ作成の成果を世に問うものです。そのために、これまで海外におけるデータアーカイブの状況調査から始めて、そこで用いられているメタデータスキーマの統制語彙の選択・翻訳、備えるべき機能の決定、システムの試験運用と改修などの作業を3年かけて行い、このたび本格運用に到った次第です。

 JDCatの特徴はFAIR原則(*5)に則り、①データの特定を容易にする、②国内外での相互運用に優れている、③英語でも日本のデータの検索を可能にする、④海外からのメタデータの自動収集を容易にするデータインフラストラクチャーの構築を目指していることです。技術的には、それぞれ①データへのDOIの付与、②DDI・JPCOARスキーマとのマッピング、③日本語と英語の両方によるメタデータの整備、④メタデータのCC0適用(*6)による公開によって実現しています。」

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ニュースリリース(PDF版)

「人文学・社会科学総合データカタログ「JDCat」運用を開始
研究・教育、政策立案の分野で活用できる人文学・社会科学データを検索可能に


  • (*1)人文学・社会科学データインフラストラクチャー構築推進事業:人文学・社会科学分野の振興を目的として、2018年4月よりJSPSが新設した事業。人文学・社会科学研究に係るデータを分野や国を超えて共有・利活用する総合的な基盤を構築することにより、研究者がデータを共有しあい、国内外の共同研究等を促進することを目指している。詳細はhttps://www.jsps.go.jp/j-di/index.html参照。
  • (*2)オープンサイエンス基盤研究センター:世界的なオープンサイエンスの気運を受け、そのインフラとなる学術基盤を開発・運営するために、2017年4月にNII内に設置。学術論文と研究データがアカデミアおよび社会で広く共有され、幅の広い研究活動がオープンに行われることで、研究活動の加速化や、社会と緊密な連携の上に成り立つ問題解決が進み、学術活動が新しい次元(=オープンサイエンス)に移行することが世界的に期待されている。詳細はhttps://rcos.nii.ac.jp/ 参照。
  • (*3)Data Documentation Initiative:社会科学、行動科学、経済科学、健康科学の分野における調査や実験などの観察によって得られたデータを記述するための国際標準メタデータ規格。ICPSRやUKDSなどの諸外国のデータアーカイブで採用されており、検索システムの運用などで活用されている。詳細は http://www.ddialliance.org/参照
  • (*4)ファセット検索:検索システムがあらかじめ検索条件を用意し、ユーザーがその検索条件を選択することで検索対象を絞り込むことができるナビゲーションシステムのこと。JDCatでは、配布者などのいくつかの項目についてファセット検索を採用し、専門的なキーワードを知らない初学者が簡単にデータを検索できる環境を目指している。
  • (*5)FAIR原則(FAIR Data Principles):データを共有するための基準となる国際的な原則。「FAIR」は「Findable(見つけられる)」「Accessible(アクセスできる)」「Interoperable(相互運用できる)」「Re-usable(再利用できる)」の略で、データ公開の適切な実施方法を表現しており、本原則に準拠したデータを作成する機運が国際的に高まっている。詳細は「データ共有の基準としてのFAIR原則」https://DOI.org/10.18908/a.2018041901参照
  • (*6)CC0(Creative Commons licenses zero):クリエイティブ・コモンズ(Creative Commons,CC)が提案し、世界的に流通している利用許諾条件(ライセンス)のルールに基づく表記。CCライセンスは、著作権を保持しつつ、一定の条件下で著作物の自由な流通と再利用を可能にするルールである。なかでもCC0は、著作物に関するすべての権利を法的に可能な限り放棄することを示すものであり、誰もがどのような形でも使用できることになる。詳細はクリエイティブ・コモンズ・ジャパンWebサイト:https://creativecommons.jp/licenses/参照

※本発表は、日本学術振興会(JSPS)との共同発表です。
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