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第17回ドコモ・モバイル・サイエンス賞でNII准教授の山岸 順一が「先端技術部門優秀賞」を受賞

 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII、所長:喜連川 優、東京都千代田区)コンテンツ科学研究系 准教授の山岸 順一が、本日10月4日に発表された「第17回ドコモ・モバイル・サイエンス賞」(*1)で、「声のアイデンティティに関する多角的研究」の業績により、先端技術部門優秀賞を受賞しました。

 山岸准教授は、複数人の収録音声から「平均声」をつくり、その平均声に本人の声を掛け合わせ、本人に似せた声をつくる「話者適応」という技術を開発。従来の手法では、1人当たり数十時間以上の膨大な音声を収録する必要がありましたが、この技術を用いることで、数分程度の少量の音声データから、性別、年齢だけでなく、話者特有の声質も再現できる「声のデジタルクローン技術」を世界で初めて確立しました。

 そして、この技術を応用して、病気等により声を失いかけている方の声を再現し、コンピュータを介して自分の声で会話ができるようにすることに成功(「ボイスバンクプロジェクト」(*2))。さらに、声のなりすまし攻撃を検知する機械学習に利用可能な大規模コーパス(*3)を構築し、肉声由来の音声か人工音声かを区別する生体検知技術などを開発しました。この他、声のアイデンティティに関する音声知覚実験も行い、新たな科学的知見も発見しました。

 今回の受賞は、これらの業績の科学的価値が非常に高く、また福祉や医療などさまざまな分野で社会応用されていることが評価されたものです。授賞式は、10月19日にANAインターコンチネンタルホテル東京で行われます。

 山岸准教授の受賞に関する情報は以下の通りです。

氏名: 山岸 順一(やまぎし・じゅんいち)
年齢: 39
職名: 国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 准教授
業績名: 「声のアイデンティティに関する多角的研究」

授賞理由:

 従来、数十時間から数百時間の大規模なコーパス構築と作業時間が必要とされていた音声合成の分野において、数分程度の少量の音声データから、話者の声のアイデンティティや発話様式を再現できる「声のデジタルクローン技術」を世界で初めて提案し、確立した。

 さらに、声を失いかけている障がい者の声の再現や自分の声による音声翻訳、なりすまし攻撃を検知する大規模コーパスの構築、知覚効果に関する科学的知見など、声のアイデンティティに関する独創的で多角的な研究業績は、国際的にも認知され、企業等での産業利用も進んでいる。科学的価値のみならず産業的価値も非常に高い。今後も福祉や医療の分野をはじめ、音声翻訳システムなど、多様な分野で大きく貢献することが期待される。

山岸准教授のコメント:

 「ドコモ・モバイル・サイエンス賞という大変栄誉ある賞をいただくことができ、光栄に思っています。機械学習の進展により音声合成技術はここ数年大きく進展し、人間とほぼ同等の品質の音声を合成することが可能になりつつあります。社会において音声合成が使われる機会はこれからますます多くなることと思います。

 私が声のアイデンティティに関して多角的な視点から独自の研究を進めることができましたのは、国立情報学研究所、エジンバラ大学、名古屋工業大学、東京工業大学をはじめ、フィンランド、フランス、オーストリア、およびスイスのさまざまな研究者と有益な協力関係を築くことができ、活発な議論を常日頃から行い、貴重な意見を賜ったことによるものです。お世話になった皆様に厚く御礼申し上げます。今回の受賞を励みに、研究にまい進していく所存です。

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ニュースリリース(PDF版)

第17回ドコモ・モバイル・サイエンス賞でNII准教授の山岸 順一が「先端技術部門優秀賞」を受賞


(*1)ドコモ・モバイル・サイエンス賞:日本国内における移動通信分野の発展と若手研究者の育成を目的として、優れた研究成果・論文等の業績に対し贈られる賞。「先端技術部門」「基礎科学部門」「社会科学部門」の三部門がある。
(*2)2015年6月15日付ニュースリリース「日本語ボイスバンクプロジェクトに FC 岐阜が連携 ホームゲームでプロジェクト紹介、ボランティア参加も呼びかけ」参照。https://www.nii.ac.jp/news/release/2015/0615-2.html
(*3)コーパス:データベース化された大規模な言語資料。
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