【概要】
日本におけるオープンサイエンスの推進に向け,研究データの利活用に向けた取り組みが各所で進められている。しかし,これを実現するための方針であるデータポリシーやその運用体制の整備は不十分である。この状況を踏まえ,「国立研究開発法人におけるデータポリシー策定のためのガイドライン」(以下,「ガイドライン」という。)が策定された(※1)。このガイドラインに基づき,国立研究開発法人のみならず,公的資金の配分を受ける大学や企業等においても,データポリシーを作成する必要に迫られている。(※2)
ガイドラインでは,研究データ管理・利活用ポリシー策定におけるポイントや,定めるべき項目(目的,定義,制限事項,管理,メタデータ,識別子など)が示されている。研究データを日々生成し管理・公開を行う研究者はもちろん,メタデータの付与などを通じて研究データの品質管理・流通・提供に携わる図書館員も,各々の専門性を発揮してデータポリシーの策定に積極的に関わることが求められている。たとえば,ガイドラインにおいてはデータが具備すべき要件として「国際的なデータ管理原則である「FAIR 原則(※3)」に可能な限り沿うもの」とされている。ここでうたわれる「Findable(見つけられる),Accessible(アクセスできる),Interoperable(相互運用できる),Reusable(再利用できる)」 という原則は,研究データのみならず,これまでの主たる対象であった文献情報を含む学術情報流通全般に適用でき,図書館におけるサービスの基底となりうる考え方といえる。
本セミナーでは,このガイドラインの位置づけや経緯を踏まえ,どのようにしてデータポリシーを策定するか,また図書館の提供サービスにおいてデータポリシーをどのように活用できるかを検討する。
※1 総合科学技術・イノベーション会議に設置された「国際的動向を踏まえたオープンサイエンスに関する検討会」による。
※2 イノベーション戦略調整会議で検討が進められている「統合イノベーション戦略(素案)」によると,国立研究開発法人のデータポリシーの作成は2020年度末まで,研究資金配分機関によるデータポリシー策定要請の制度化は2021年度予算での公募までに導入することとされている。
※3 「データ共有の基準としてのFAIR原則」(2018 年4 月19 日,NBDC研究チーム)DOI:10.18908/a.2018041901
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