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大規模高性能データベースシステムの理論と応用に関する先駆的研究により国立情報学研究所(NII)所長の喜連川優が日本学士院賞を受賞
大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NII、東京都千代田区)所長の喜連川 優が、「大規模高性能データベースシステムの理論と応用に関する先駆的研究」の業績により、本日4月6日に発表された令和2年度「日本学士院賞」を受賞しました。
喜連川所長は、非順序型データベース演算実行方式の考案により、ビッグデータ時代に必須となる大量データ処理を飛躍的に高速化しました。従来手法に比べ約1,000倍の性能向上を達成し、さまざまなデータベースの高速解析に活用されています。医学的知見の導出や医療政策立案のほか、減災・防災のためのデータベース解析等に、その高速性と大量データ処理性能が広く利用されています。
日本学士院賞「大規模高性能データベースシステムの理論と応用に関する先駆的研究」
氏名: 喜連川 優(きつれがわ・まさる)
現職: 国立情報学研究所(NII)所長/東京大学 生産技術研究所 教授
生年月日: 昭和30年7月13日(64歳)
専攻学科目: 情報学
出身地: 大阪府
現住所: 東京都
受賞理由: 喜連川 優氏は、非順序型データベース演算実行方式(*1)を創案し、ビッグデータ時代に必須となる大量のデータ処理を飛躍的に高速化することに成功しました。従来は同期入出力(*2)が用いられていたのに対し、本方式では、非決定性を伴う非同期入出力(*2)を活用した新たな手法により、従来方式に比べ約1,000倍の性能向上を達成しました。本手法は約2,000億レコードから成る6年分のレセプトデータベースの高速解析に活用され、新たな医学的知見の導出や自治体における医療施策立案に利用される等、活用が進んでいます。喜連川氏は先進的データベース技術を用いた社会課題の解決への取組みも進め、DIAS(Data Integration and Analysis System)と呼ぶ世界的に極めてユニークな地球環境超巨大データプラットフォームの開発を37年に亘り進めて来ています。その容量は35PB(*3)を越え、衛星画像、河川のテレメトリ(*4)、レーダ等の多様なデータがリアルタイムに集積され、登録利用者は6千人を越え、その半数は海外です。激甚化する環境変化に対し、洪水、浸水災害の軽減・防災や医療分野に利用されつつあります。
〈図1〉非順序型データベースエンジンと従来型の相違
〈図2〉DIASシステムの概要
喜連川 優所長のコメント:
本コメントは4月8日更新版です。リリース発行日4月6日版コメントは本ページ下部のPDF版でご確認ください。「栄誉ある賞を賜り身の引きしまる思いです。紙に穴を空けたパンチカードを使い東大大型計算機センターに通った学生時代を懐かしく振り返りますと、当時ITがここまで発展するとは予想しておりませんでしたが、「データ」が最も重要な要素の一つとなることは感じておりました。データ或いはデータベースと取組んだ半生を過ごさせて頂きました。常に、社会的に価値のある、出来る限り大きなデータ、例えば、数十ぺタバイトに及ぶ膨大な地球環境データ、日本のウェブ約20年にわたるページ、全保険レセプト、巨大ツイッタ空間、大規模医療画像データベース等に挑戦を続けて参りました。そしてその実現に必須となる新しい超高速データベースエンジンの基本原理とシステム開発を行い、現在も改良を続けております。
構築して参りましたデータプラットフォームにおいては、『データの共有』の精神の重要性を常に第一に考えて参りました。DIASなる地球環境データに関しては非常に多くの関連研究者に、レセプトデータも多くの医療系学会の方々に、そして、医療画像データも多数の画像AI研究者に利用されています。更なる知の共創を祈念しております構築して参りましたデータプラットフォームにおいては、『データ
の共有』の精神の重要性を常に第一に考えて参りました。DIAS なる地球環境データに関しては非常に多くの関連研究者に、 レセプトデータも多くの医療系学会の方々に、そして、医療画像デ ータも多数の画像AI研究者に利用されています。更なる知の共創 を祈念しております。
全ての研究は、共に研究を進めてくださった多くの素晴らしく優秀な同僚の先生方や、才能に満ち溢れた学生、ポスドク、助教の皆様 がおられなければ、絶対に出来ませんでした。ソートベンチマーク を世界で始めて1秒以下にしたり、最大のデータベースベンチマー クに世界初登録をするなど企業との連携も忘れられません。人生で 国内外の数多くの一級の研究者とご一緒出来たことを心より感謝致 します。 Covid-19なる人類にとっての未曾有の危機に対し、国立情
報学研究所所長として、東大のデータ研究者並びにCDOとして、 微力ながら全力投球しております。ITの進歩は指数的であり、常 に想定外でした。想定外に慣れた研究領域に身をおいてきた人間と して、この難関に立ち向かう所存でございます。データの共有とそ の積極的な利活用が真価を発揮すると確信致します。」
ニュースリリース(PDF版)
大規模高性能データベースシステムの理論と応用に関する先駆的研究により国立情報学研究所(NII)所長の喜連川優が日本学士院賞を受賞
- (*1)非順序型データベース演算実行方式:従来、同期入出力を多用していたのに対し、非順序型データベース演算実行方式は、全ての入出力を非同期入出力とする。一般に外部記憶からの読出しには時間がかかるため、当該方式では読出しデータの到着を待たずに次々と非同期読出し命令を発行する。読出し命令発行順と読出したデータの到着順は異なるため、処理が複雑になるという問題が生じるが、これを技術的に解決した。当該方式では外部記憶装置の入出力性能をフルに活用可能となり、従来に比べ大幅に高い性能を発揮する。
- (*2)同期入出力/非同期入出力:ある入出力命令を発行した後、その命令の完了を待って次の入出力命令を発行する方式を同期入出力と呼び、完了を待たずに次の入出力命令を発行する方式を非同期入出力と呼ぶ。
- (*3)PB(ペタバイト):10の15乗(1,000兆)バイト。
- (*4)テレメトリ:テレメーター(遠隔計測装置)を使って、遠隔地の測定結果をコントロールセンターに送信すること。
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