ニュース / News

ニュースリリース

NIIとOpenAIREが協力協定を締結
~協働で研究基盤の研究開発を進め オープンサイエンスの推進に貢献~

 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構 国立情報学研究所(NIIエヌアイアイ、所長:黒橋くろはし 禎夫さだお、東京都千代田区)と、欧州の研究基盤の開発・提供を行うOpenAIRE(会長:インガ・ニーヴァーブルグ、ギリシャ共和国・アテネ)は、研究コミュニティ内でのFAIR原則(*1)の実践とオープンサイエンスの推進を目的として、研究基盤の研究開発を推進するために協力協定を締結しました。この協力協定では、CiNii Researchナレッジグラフ(*2)とOpenAIRE Graphの連携強化による質の向上、オープンサイエンスモニタリングと研究評価改革に向けた研究開発、データガバナンス機能(*3)の相互運用性の確保に取り組みます。これらの活動により、日本と欧州の研究基盤がサービスを提供する研究機関の研究成果の透明性、インパクトがより高くなることが期待されます。

release_20240327_fig1.jpg関係者による本協定に関する協議の様子(2023年9月マドリードにて)

 国立情報学研究所(NII)とOpenAIREは、研究基盤の相互運用性の強化とグッドプラクティスの促進を目的として、協力協定(Agreement on Collaboration; AoC)を締結しました。この協定は、研究データを含む学術情報のメタデータ標準、収集、キュレーションに関するノウハウを共有することにより、研究機関に対してFAIR原則に則った研究基盤を提供することを目指しています。

 この協定の一つ目の柱として、CiNii ResearchナレッジグラフとOpenAIRE Graph間の連携を深めて、両ナレッジグラフのカバレッジと品質を向上させることが挙げられます。そのために、OpenAIREはメタデータの強化と重複除去に関する専門知識をNIIと共有します。一方、NIIは、OpenAIREが提供する所属機関の名寄せ(識別)とキュレーションサービスOpenOrgsに協力し、日本の研究遂行機関(Research Performing Organization; RPO)のキュレーターとして機能します。

 二つ目の柱として、オープンサイエンスモニタリングと責任ある研究評価(Responsible Research Assessment; RRA)が挙げられます。NIIとOpenAIREは、オープンサイエンスモニタリングと責任ある研究評価に関する情報を利用者に提供することに努めます。この活動は、研究評価改革の推進のための有志連合(Coalition for Advancing Research Assessment; CoARA)に設置されたワーキンググループ「責任ある研究評価のためのオープン基盤に向けて(Towards Open Infrastructures for Responsible Research Assessment)」と連携しており、Horizon EuropeのプロジェクトGraspOS、PathOS、Patternによっても支援されます。さらに、オープンサイエンスモニタリングと研究評価支援に関して、NIIとOpenAIREは、利用者が必要とする指標と機能を検討します。

 三つ目の柱として、FAIR原則に沿った研究データ管理の促進が挙げられます。NII研究データ基盤(NII RDC)のデータガバナンス機能とOpenAIREのデータ管理計画のためのサービスARGOSは、機械可読なデータ管理計画(maDMP)に関する相互運用性に関する知識を共有します。これは、科学的知識の生産を計画、追跡、評価するためのプロセスと手段の進展を目指したプロジェクトであるOpen Science Trails(OSTrails)の下、イベントやウェビナーを通じて行われます。

 これらの三つの柱により構成された戦略的な計画をNIIとOpenAIREが協力して実行することにより、サービス提供先の研究機関の研究成果のインパクトをより高いものにします。本協定に基づいて知識の交流を促進することにより、CiNii ResearchナレッジグラフとOpenAIRE Graphの透明性とコラボレーションを強化して、オープンサイエンスの世界的な進展に貢献します。NIIとOpenAIREは共に、世界中の研究機関にとって、よりインパクトのある協力的な未来に向けた道を切り拓いていきます。

山地 一禎 NIIオープンサイエンス基盤研究センター長からのコメント

「優れた研究基盤を開発するOpenAIREとAoCを締結できたことを嬉しく思います。私たちは、研究基盤の相互運用性を向上させ、グッドプラクティスを共有することにより、オープンサイエンスとデータ駆動型研究において先駆的な役割を果たしていきます。この協力協定を通じて、NII研究データ基盤をより高いレベルに引き上げ、透明性と公正性をもったオープンサイエンスの実現に貢献していきます。」

ナタリア・マノラ OpenAIRE CEOからのコメント

「信頼できる仲間とのこのコラボレーションは、オープンサイエンスと研究公正を支援し、地球規模でデータ駆動型研究を推進する上での新たなマイルストーンです。OpenAIREは、世界中の学術ナレッジグラフの品質と相互運用性を強化することを非常に重視しています。これは、高い水準のコミットメントとコラボレーションを促進するエコシステムを構築するために非常に重要です。」

国立情報学研究所(NII)について

国立情報学研究所(NII)は、情報学という新しい学術分野での「未来価値創成」を使命とする国内唯一の学術総合研究所です。情報学における基礎論から人工知能やビッグデータ、Internet of Things(IoT)、情報セキュリティーといった最先端のテーマまでの幅広い研究分野において、長期的な視点に立つ基礎研究、ならびに、社会課題の解決を目指した実践的な研究を推進しています。また、大学共同利用機関として、学術情報ネットワーク(SINET6)をはじめ、学術コミュニティー全体の研究や教育活動に不可欠な学術情報基盤の構築・運用に取り組むとともに、学術コンテンツやサービスプラットフォームの提供などの事業を展開・発展させています。

OpenAIREについて

OpenAIREは、永続的なオープンな学術コミュニケーション基盤を確保し、欧州およびその他地域での研究支援を目的として、2018年に法人OpenAIRE AMKEとして設立された非営利のパートナーシップです。OpenAIREは、オープンサイエンスを集合的かつ実践的な方法で実現しています。その専門分野と活動には、サービス提供、政策、トレーニングが含まれます。2009年から運営されているOpenAIREは、欧州オープンサイエンスクラウド(European Open Science Cloud; EOSC)の発展に不可欠な存在であり、その牽引役となっています。

関連リンク

News Release: PDF

NIIとOpenAIREが協力協定を締結
~協働で研究基盤の研究開発を進め オープンサイエンスの推進に貢献~


(*1) FAIR原則(FAIR Data Principles):データを共有するための基準となる国際的な原則。「FAIR」は「Findable(見つけられる)」「Accessible(アクセスできる)」「Interoperable(相互運用できる)」「Re-usable(再利用できる)」の略で、データ公開の適切な実施方法を表現しており、本原則に準拠したデータを作成する機運が国際的に高まっている。詳細は「データ共有の基準としてのFAIR原則」https://doi.org/10.18908/a.2018041901 参照
(*2) ナレッジグラフ: 論文、研究データ、研究プロジェクト等のリソースと、それらの間の引用、助成等の関係性を明確に定義したもの。CiNii ResearchならびにOpenAIREでは、論文、研究データ、研究者といった検索対象として想定している学術情報資源の間を名寄せして関係リンクを構築することで、高品質なナレッジグラフに基づいたサービスの提供を実現している。
(*3) データガバナンス機能:データガバナンスを「研究データを研究者・グループの知的資産としていかに生産し、保管し、利用していくかを統制(計画、執行、モニタリング)すること」と捉え、研究サイクル中の研究計画の作成から論文およびデータの公開まで、データ管理計画に基づき研究者自身が研究プロジェクトのデータ管理の質を高めることを支援する機能。詳細は「データガバナンス機能」https://rcos.nii.ac.jp/service/dmp/ 参照
6294

注目コンテンツ / SPECIAL