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平成29年度 第4回 レポート

"制御屋さん"のモノの見方とは?

国立情報学研究所は10月18日、平成29年度 市民講座「情報学最前線」第4回を開催しました。

今回は、情報学プリンシプル研究系 岸田昌子 准教授が「動きをデザインする科学 -制御屋さんのモノの見方と考え方-」と題して講義を行い、制御の基礎や制御技術の歴史、最先端の制御理論研究などを紹介しました。

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まず、岸田准教授は「制御とは何か」ということについて、「入出力がある動的システムから望みの出力を得るように自動的に入力を調整する仕組みのこと」と説明しました。

制御の理論や技術は、身近なところでは、エアコンが望みの室温を保つ、自動お湯はり機能がお風呂の水位を一定のところで止める、お掃除ロボットが何かにぶつかったら進行方向を変える、自動車がクルーズコントロールで一定速度を維持するなどの仕組みに応用されています。岸田准教授は、「一言で言うと、制御とはモノを望み通りに動かすための技術です」と述べました。

また、18世紀に蒸気機関の回転数を調整するためにワットが考案した調速機から始まった制御の歴史についても紹介しました。

次に、「制御理論とは何か」について、「モノを望み通りに動かすために必要な条件や手法などの法則を数学を使って厳密に導き出すこと」と説明しました。

制御理論は、自動車やロボット、医療、交通などあらゆる分野で活用されており、これらの多彩なシステムに関わる問題は、一見全く異なるものに見えますが、実際は共通する構造や性質が多くあります。その根本的な原理を理解し、汎用可能な一般的な手法や理論の構築ができれば、多くの問題の解決の手がかりになります。

そこで、具体的なモノからそのエッセンスを取り出して抽象化した数理モデルを使って、モノの動きを解析し、モノを望み通りに動かすために必要な条件と手法を考えるのが制御理論の研究です。岸田准教授は、「異なるシステムでも微分方程式で表してみると同じことがある。制御理論の世界で微分方程式の解を操作することが、実世界のモノの動きをデザインすることにつながります」と話しました。

最後に岸田准教授は、制御が近年、医療や交通、経済といった様々な分野で重要な役割を担っていると説明。電話やインターネットなどの通信網、鉄道や道路などの交通網などのほか、ドローンや自動運転などにも制御の技術が深く関わっていることを紹介しました。

参加した方からは「実生活における制御の活用例が挙げられていて分かりやすかった」「制御の歴史が興味深かった」「制御の数式は難しいが、図に表すとシンプルに見えて理解しやすかった」などの感想が寄せられました。

第5回は11月16日(木)に、アーキテクチャ科学研究系 栗本崇 准教授が「時代を映すインフラ -電話から学術情報ネットワークSINET-」と題して講義します。

詳細、お申し込みは、https://www.nii.ac.jp/event/shimin/#5th へ。

みなさまのご参加をお待ちしております!

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