イベント / EVENT
平成20年度 第8回 Q&A
第8回 2009年2月18日(水)
文化情報とコンピュータ
--文化遺産を未来に継承するデジタル化の技術とは--
小野 欽司(国立情報学研究所 名誉教授)
講演当日に頂いたご質問への回答(全12件)
※回答が可能な質問のみ掲載しています。
文化・芸能の古記録をデジタル化することで歴史の理解が進むことを理解できた。昔物語を忠実に視覚化する研究・作業は具体的にあるか?
昔物語(古文書)をディジタルアーカイブすることは現在では多くの機関で行われていますが、これをより忠実に再現し視覚化することは課題として研究されています。それらの取り組みは学会の研究会などでも報告されています。
著作権のうち、何が公開の場合、大変なのでしょうか。
著作人格権、著作周辺権で利権が異なり、著作者本人はあまり煩く言わないのでは。
著作権についてはディジタルシルクロードプロジェクトではインターネット上での公開を前提ととしていますので、ディジタル化だけでなく、公開した時の著作権保護は重要です。ディジタルシルクロードプロジェクトでは著作権の切れた文書(日本では著作者の死後50年)を選んでディジタルアーカイブしています。またプロジェクトでの創作物についてはコピーライト表示をしています。
ディジタル技術の高度化によって、書籍・文書を画面上ではなく複製本を作成すると、真新しい本ではなく原本オリジナルと寸分違いないものを作ることが可能になった。黙っていると複製本ではなく、オリジナルと判断される事例もあった。悪意的には、高価で販売されることもあるようだ。複製物にしたときは、複製表示をする、埋め込んでおく必要があると思うが。如何考えられますか。
原本オリジナルと寸分違いないものには複製表示は必須です。電子透かしなどの技術で埋め込み非表示とすることも必要です。
DSRイマジナリ・ミュージアムの投稿は一般の人でもできるのですか?
クロノロジカルマップについて、もう少し説明してください。
もちろんできます。どなたでも投稿大歓迎です。投稿画面で最初にID:名前(ニックネームでもよい)を登録してパスワードをもらい以後はそれを使用して何度でも投稿可能です。
クロノロジカルマップは投稿されたサイトの時代が歴史的、地理的にどのような状況であったかを理解することができます。一種の年代記のようなものと考えていただいたらよいでしょう。
過去の文物を再現する際に、実際の遺物だけでは埋められない部分があるのではないかと思います。それを補うのは学説やあるいはそこまでいかなくても研究者のファンタジーだと思うのですが。やはり、人によって違いが出てくるはずです。そうした違いを絡めて見せ方を変えるといった工夫はされているのでしょうか?
オリジナルの復元(物理的な)手法に対するフィードバックはあるのでしょうか。デジタルアーカイブの成果や手法が、復元技法を改善したり、全く新しい復元技術を生み出したという例があれば教えてください。
Bam遺跡の3DCGでは遺跡が破壊されてしまったので、3次元計測はできません。従って現存する破壊前の写真や地形図などを用いて、3Dモデルをクリエイトします。3DCG復元では過去のBam遺跡を知っている専門家の評価を大切にしています。将来の物理的な復元に使用することを前提として例えば建築の専門家が修正コメントできるようにしています。
またデータベースで追加説明を加えられるようにしています。
ただし、Bamの物理的な復元はまだ目途がたっていませんので、具体的なフィードバックは今のところありません。
配布資料p.10「アプローチ」の「多言語処理」について。シルクロードでは多様な文字が使われている。例えば、中国の地名を漢字(旧字、簡体字、常用漢字)、アルファベット、カタカナなどで表示する可能性がある。資料p.12の「探検資料の書誌情報」のデータでも「解題」フィールドでは、楼蘭・敦煌は漢字、コータン、ミーランはカタカナで記述されている。デジタルシルクロード内のデータを検索する場合、敦煌⇔DongFay ミーラン⇔美蘭? とできるようなシソーラスや典拠ファイルが存在するのか?ペルシャ文字、アラビア文字etc.についても?
多言語インターフェイスについては、特定の項目については言語を限定して検索は可能ですが、全ての言語、多様な記述方法については今後の課題として研究をしています。
人文科学の画像のデジタル化・データベース作成の際について。古典籍などのデジタル化をする際、従来のデータ項目では記しきれない情報がどうしても出てくると思いますが、そういうことはアノテーションでデータを維持することがベストなのでしょうか。検索の際、階層が違ってくることで結果が変わるかが、気がかりですのでお伺いいたします。
規定されたデータ項目では記しきれない情報についてはアノテーションでデータを維持することは有効です。Metadetaとして標準化されたものはありますが、文化遺産のようなケースには不十分なのでディジタルシルクロードのためにASPICOというメタデータ管理システムを開発して色々な専門家に評価してもらっています。
継承できる表現力についても学習させていただきました。11頁「特徴」のナビゲーションとサーチについてより詳しくお教えいただけないでしょうか。
ナビゲーションとはWeb上でリンクをたどり興味のあるものを効率的に閲覧することです。サーチとは必要とするコンテンツに直接的にアクセスすることを助けることで、検索エンジンが重要な働きをします。
XMLでマークアップして、貴重書情報の標準化(一般化)のためのタグの設定は統一化されているのでしょうか。メタデータの標準化は世界的、日本国内では設定されているのでしょうか。
XMLは文書やデータの意味や構造を記述するために「タグ」を用い、情報交換のデータ形式や保存のファイルフォーマットの定義もできます。メタデータの標準化は図書館や博物館の情報資源については標準化が進んでいますが調査・探検資料を含む文化遺産についてはこれからと思います。
「東洋文庫所蔵」図像資料DBについて、貴重書110冊約27400ページは如何なる手法をすればデジタル資料として「見る」などのアクセス出来るか
デジタルシルクロードのホームページ(http://dsr.nii.ac.jp/ )から「東洋文庫所蔵」図像資料DBへナビゲートして探検隊の資料や写真などにアクセスして見ることができます。また全文検索でも目的の文書のページを探すことが可能です。
デジタルシルクロードプログラムの中で最も苦労した点はどんなことですか?
国立情報学研究所は情報学の研究所で、ディジタルシルクロードのようなマルチディシプリナリの研究をする際以下のような苦労がありました。
・コンテンツの確保や利用許可・歴史や考古学の専門家の協力
・解説やメタデータの付与・海外との交渉(Bam遺跡の3Dではイランの関係機関や大学との交渉
デジタルシルクロードプロジェクトは最終的にどのような内容を最終目標にしているのでしょうか。また、いつごろの完成を目指しているのでしょうか。
シルクロードに関するのあらゆる文書、遺産(歴史、文化、自然)をディジタルアーカイブし、専門家だけでなく、世界中の子供や一般の人々にもわかりやすく2次元的、3次元的に見せる、また将来の物理復元にも役立てることができたらと思っています。さらに参加型の部分を拡張して、皆で協力しながらシルクロードの素晴らしさを後世に継承するように考えています。期限はありません。
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