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平成30年度 市民講座 SINET特別セッション(2) Q&A

SINET特別セッション(2) 2019年2月12日(火)

東京2020に向けた新たなスポーツパフォーマンス研究
-トップアスリートのパフォーマンスを探る!-

講演当日に頂いたご質問への回答(全32件)

※回答が可能な質問のみ掲載しています。

陸上のフォースプレートのそれぞれのグラフの意味が知りたかった。長距離との比較など。

3つのデータはそれぞれ垂直方向、前後方向、左右方向の力の推移が示されたものです。短距離と長距離では速度が違うので形が違うように見えますが、着地からキックして離地するまでのパターンは概ね同じような形が出ます。疲労してくるとわずかに変化しますのでその変化を少なくすることは重要だと思います。

射撃でのサポートはどのようなものがありますか?

本学でのサポートはあまりありませんが、直立姿勢で呼吸をするだけでもフォースプレートからの力の変化は現れます。呼吸と射撃やアーチェリーなどのパフォーマンスに関してはサポートがされているようです。また眼を鍛えておくトレーニングもあると思います

アテネで1回増えたのに北京で減ったのは何故ですか?

北京五輪でもアスリートのパフォーマンス向上やサポートもうまくいっていたと思いますが、中国が自国開催で日本以上に力をかけており、そこを上回ることができなかったのではないかと思います。

(ゴルフに関して)自己評価のスコアが良くても、研究的には悪いフォームの場合、それを克服させるアプローチはするのか?

そこはアスリートやコーチと十分に意見交換を行うことがまずは大事だと思います。本人が望まないことに介入することは行いません。十分に説明し本人が納得したならば進めるべきだと考えます。

(陸上に関して)フォームを変えることは目的ではなく手段で、目的はパフォーマンスを高めることだと思いますが、フォームとパフォーマンスとの関係を横断的にも縦断的にもみることはしているのか?

はいいつもそうしています。これまでの研究などから、速い人はどういう動きになっているかというデータはありますので、その動きをまねしていくとたしかにパフォーマンスが向上することは多いですが、個人差はありますので、フォームとパフォーマンスはいつも同時に確認しています。

アスリート個人のパフォーマンス向上は理解できますが、チームのパフォーマンス研究はありますか。

チームの戦略、フォーメーションなどの研究も進んでいます。本学のスポーツパフォーマンス研究センターでは、サッカーの選手全員の位置情報や速度がわかるシステムがあり相手チーム選手との位置取りや自チームの選手との距離などを可視化してチームのパフォーマンス向上に役立てています。

アスリートのパフォーマンスに加えてアスリート以前(児童/学生)に対する研究はありますか。

発育発達に関する研究はスポーツでも報告されています。本学のスポーツパフォーマンス研究センターでも近隣の小学校・中学校と連携して、パフォーマンスがどのように推移していくか縦断的に記録しています。

モーションキャプチャについて。 体のふしぶしを点で結ぶやり方は今後も変わりませんか?

はい、基本的には今もその方法です。重要な関節部にマーカーを取り付けてその動きを記録することでスティックピクチャーを作ることができ、そこから角度、角速度の変化などを求めています。

パフォーマンスをあげるためのトレーニングと栄養学、休養回復、生理学、心理学、大脳生理学、データの蓄積とデータ活用、オリンピックへ向けてどのように研究しているのか(弱いのではないか)

私の分野以外の方々も多角的にアスリートにサポートしています。コンディションを高く維持することは、ご指摘のように栄養学、運動生理学、大脳生理学なども分野も多くの方々が関わっております。公表されていないことが多いのではないかと思われます。

(上記 質問No.8続き)
① 1/3→トレーニング(姿勢バランス、筋力、動き)
② 1/3→栄養学
③ 1/3→休養回復疲労
①~③の それぞれの科学的分析はどうなっているのか

①姿勢・バランス、筋力、動きそれぞれにトレーニングの効果については研究成果が多数発表されています。私は主に動きを担当していますが、個人差が大きく出てきますので各分野ともその人にあった方法を探すには時間がかかると思います。詳細はここでは説明しきれません。
②栄養学 JISSの例を示した通り、縦断的に管理しており、種目特性も鑑みて時に増量、時に原料なども専門家がサポートしています。
③疲労回復はコンディション記録(主観的・客観的)を溜めることで大事な試合に向かうための練習を何度も繰り返し、オリンピックやパラリンピックに臨んでいます。予期しないケガなどがあるとそこが難しくなるのが現状だと思います。

数々のデータの収集が出来ることは分かったが、データを知っても、それだけでパフォーマンスを改善できるとは考えにくい。データを見ながら、くりかえし試行するのだろうが、そこの所をもっと科学的に短時間で体得させる技術はないか。

データが出て次の課題がわかった場合、どのようなトレーニング、どのようなドリルを行えばその課題が改善されていくか、それこそがスポーツパフォーマンス研究で、本学が縦断的に大学生を対象として行っているところです。トレーニングの効果を明らかにするには時間とマンパワーが必要ですが、そこを地道に行っており、その効果はウェブジャーナルのスポーツパフォーマンス研究で発表しています。それらの結果をもとに短時間で改善できる方法を今後も発表して参ります。

トップアスリートのメンタルトレーニングへの進化について教えてください。

私の専門分野ではないのですが、スポーツ心理学者が多角的に取り組んでいます。緊張やプレッシャーなどの対策についてやルーティーンの効果なども心理学研究の成果だといえると思います。オリンピック・パラリンピックが終わったら、選手が行った事例などが公表されるのではないかと期待しております。

トップアスリートになる素質(スポーツをはじめてトップアスリートになる資質)はどの様に見出しているのか?

日本でもタレント発掘事業として、幼児期、小学生を対象とした多角的なパフォーマンステストを実施することで見出すことができると思います。生まれながらの筋線維タイプなどからもその人にあった競技が判定されていくと考えられます。

スポーツで最高の成果をあげるために心理状況をフロー(又はゾーン)という状態にするとモチベーションがとても高くなると聞きました。 フローの状態にするための科学的アプローチが行われていれば 具体的にどの様な事が行われているのかご教授をお願いします。

スポーツ心理学の分野ですので詳細は分かりませんが、まずは十分な技術と体力が備わっている人に現れるものだと考えられます。どんな状況でも繰り返し自身の高いベストプレーを再現できる人は、そのような状態に近くなると考えられます。

古武術のパフォーマンス研究の現在?解明できたこと。できないこと。

私はあまり古武術の研究をしたことがありません。しかし、古武術の技術を応用してパフォーマンスを向上させている方を時々拝見します。今回ご紹介したような3次元動作分析の結果も少しずつ発表されておりますが、やはり効率のよい動きのヒントがあるように思います。

国立スポーツ科学センタにはサイバー空間での練習・強化プログラムなどもあるのでしょうか?(すなわち、スポーツに対するCPS実装は?)(P.S CPSはイメージトレーニングに有効?)

申し訳ありません。この質問については私はわかりません。ある可能性があると思いますが、今は公表できないかもしれませんね。申し訳ありません。

フォースプレートによるキック力分析の知見は、一般者の通常歩行などにも応用できそうですよネ⁉(つかれない高効率の歩き方とは・・・)

はい、ご指摘の通り、歩行の動作分析にもフォースプレートが使われています。効率の良い歩きはリズムを持っており、足を起点とした逆振り子のような動きをすると疲れないことがわかっているようです。

集団のスポーツで、試合中のパフォーマンスを集団の画像から分析するような取組みはなされているのでしょうか。スタジアムにもモーションキャプチャ並べられないと思います...。

サッカーなどの研究で始まっています。GPSだけでなく、映像データだけでも選手の移動距離などがわかる時代になっているようです。モーションキャプチャーほど正確ではないものの、試合当日の動きが分析できて大変すばらしいと思います。

機械による自動分析技術も研究されているのでしょうか。

はい、動作分析には自動追跡機能があり、どんどん応用されております。スポーツ界もIT分野との共同研究がたくさん入ってまいりました。

流行りのAI分析等は活用されておりませんでしょうか。

はい、動作分析には自動追跡機能があり、どんどん応用されております。スポーツ界もIT分野との共同研究がたくさん入ってまいりました。

大学ということもあり、研究データを学生が自分の研究テーマ等に扱ったりするのでしょうか。

体育学部の学生は卒業研究として、大学院生は学位論文の作成が義務化されております。本学の学生も自身の独自の視点からパフォーマンス向上に関する研究を行っております。若い視点のアイディアは私たちにも多くの刺激を与えてくれています。

データ活用、解析において、SINET特有の点は?どこがメリット?

一気に多くのデータが取得されますし、パフォーマンス向上には縦断的に多くの人のデータが取得されます。その他日常生活の情報なども含めて考えるとSINETのお力を借りながらどんどん解明されていくと思います。

今後、広域データ収集基盤との連携は?

本学がというより全国的、全世界的にデータの収集がされていくようになると思われます。国際オリンピック委員会や各競技団体の国際連盟などがそのデータを管理していく時代になると思います。

走り方として(最も効率の良い走り方は?)
1.両足の重心と左右の足のステップの幅について一番効率的な走り方は?(直線上に足を運ぶのか、直線にこだわらなくてよいのか)
2.腕の振り方と足の幅の関係は?(重心の移動)

1.これまでのデータから見ると直線にこだわらなくていいように思います。個人の骨格などに合わせた走り方を探すべきだと思います。
2.腕の動きと脚の動きは自然に連動します。両者のバランスはピッチやストライドに影響することになります。重心の移動がもっともスムーズで速くなる動きを個人ごとに探しています。

前田先生はもともとスポーツ科学を志して大学に入学されたのでしょうか?それとも、何かの競技を専門に練習していたアスリートだったのでしょうか?

野球をしていた一般的な学生でした。大学の授業でスポーツ科学の進化にびっくりして、とりあえずわかっていることを勉強しなくてはアスリートに還元できないと思い勉強を始めました。どんどん進化しているので、まだまだ今も勉強中です。

定理的なFactorと練習の成長と本番の成果との関係はどの程度分析できているのでしょうか?

大変重要なご指摘だと思います。その点はまだまだ完璧ではありません。ただし最近は、確かな技術があり繰り返し同じ動作ができる方は増えており、本命が本番でも勝つケースがよくみられるようになったと思います。ご指摘の点は今後も大切に進めて参りたいと思います。

高校野球(少年からプロまで)球数制限の議論がありますが、どのように考えておられるのか?また、例えば陸上では、走行距離についてのメドなどが科学的に出されているのですか?高校生レベルに限ってで結構ですのでデータがあれば、お聞かせください。

重要なご指摘をありがとうございます。私もまだこの研究成果をまとめ切れておらず、しっかりと答えられません。特に高校生に縦断的に介入できていないと思います。しかしサッカー選手がこのようなパフォーマンスの状態になると多くの人が怪我をするという研究は発表されています。このように球数制限、ランニングのし過ぎなどのエビデンスはまさに今、進めている最中であろうと思います。

リカバリーミール(おにぎり、バナナ、100%オレンジジュース)を摂取するタイミングを詳しく教えてください。

おにぎりは消化に時間がかかるので、少なくとも2時間前には食べたほうがいいと思います。その他は比較的すぐ消化されますので適宜摂取してよいかと思います。

(上記質問 No.28の続き)100%グレープフルーツジュースの評価を教えてください。

オレンジジュースに近く、効果的だと思いますが、現場ではオレンジジュースを進めることが多いようでした。

バスタブが1つしかない場合、冷水シャワーで代用できるかを教えてください。

代用できると思います。しっかり当てることが大切だと思います。

トップアスリートをサポートするための研究はどの様な形で一般社会に還元されるのでしょうか?研究成果がオリンピックのメダルで終わってしまっては、ごく限られたスポーツエリートの利益という閉じた世界の出来事で終始してしまいます。
国立大学(+国立情報学研究所)が研究を国の予算を使って行う以上、広く社会的に説得力を得る必要があるのではないでしょうか?

重要なご指摘ありがとうございました。トップアスリートに成果が表れた場合は、まず学術的にしっかりとまとめて論文として、または学会で発表し公表することになると思います。それを基にして、様々な商業誌やシンポジウム、研修などで広く公表されることになると思います。ご指摘の通り、公表できる時が来たら(五輪終了後など)、公開され、多くの方に知っていただくことが大切だと思います。

米国アメフトは資金が豊かで、スポーツ研究も進んでいると思う。 日本が及ばない点はどのような事がありますか?

研究に関する資金は圧倒的に差があります。スポーツ科学だけでなく、他の分野もそうですが、特に近年中国は、研究に多額の予算をかけています。日本でも大学スポーツを米国に学び、多くの人に支援していただくUNIVASが始まりました。今後は産官学連携でスポーツの研究と選手育成を進めるべきだと思います。

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