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平成22年度 第8回 Q&A

第8回 2011年2月16日(水)

脳の中に創られる世界とは?
脳でモノを見る

臼井 支朗(理化学研究所脳科学総合研究センター 神経情報基盤センター長)

講演当日に頂いたご質問への回答(全27件)

※回答が可能な質問のみ掲載しています。

30年位前の本で「月が低い位置に出ているときに大きくみえる理由はまだわかってない」と読んだことがあるのですが、今でもまだわかってないですか?

「月の錯視」ですね。以下のサイトをご覧下さい。http://sci.la.coocan.jp/fchem/log/rika/13852.html

人種が異なる(他文化)の人の笑顔がなぜ笑顔に見えるのか。

スミマセン。お答えできるような知識はありません。でもサルも笑顔を理解しているようですね。

目が青い人と黒い人では、同じ色に見えていますか?

講座でもお話ししましたように、色は主観なのでわからないとしかお答えできません。個人的には、同じように見えていると思います。

魚類における反対色生成過程→人も同じ過程?
反対色の処理の所をもう少しかみくだいてほしい。
新たなフィードバック仮説のシートの「L」はどういう意味?

原理的には同じと考えていますが、実体は異なっています。反対色の処理は「文字の記録」を見てください。LはLuminosityです。

人間が「見る」という脳内の処理と、ロボットなどの画像認識(もしくは信号処理)のアルゴリズムは、全く異なるメカニズムと考えてよろしいのですか?
視神経の後(R・G・Bの後)は、オペアンプ(演算増幅器)の集合体ですか?

原理的には共通的な所もあるかと思いますが、実体は恐らく異なると思います。次のご質問は理解出来ません。

視野に対して大きな面積を占める物と動く物と(時間的に視覚体が変化する物)どちらを優先的に知覚しますか。

基本的には、まず、動いているものに注意が向きます。

固視微動とそれが無い場合の影響について、もう少し詳しくお教えください。(ex.どんな振動か?対象の動態認識に影響があるのか?)

固視微動は1/f揺らぎのブラウン運動的な動きといわれています。センサーが常にrefreshされないと機能しないので、固視微動がないと灰色の世界になってしまいます。

「見える(see)」と「視る(look)」はどう違うのですか?
私は、脳梗塞で3ヵ月ほど「視る」と猛烈に頭が痛くなりましたが、物は「見えて」生活はできました。

心焉に在らざれば視れども見えず!

双眼鏡をのぞくと、初めは片目ずつの円が別々で、レンズの距離を調整すると、2つの円が融合され、1つの円として人間の視覚のように見え易くなる。
この現象が今日の話と関係ありますか?

すごく関係があると思います。スーザンの本を読んでください。

英語などの表音文字を読む(見る)時と、漢字などの表意文字を読む時とで、使う脳の部位が違うという話を聞いたのですが、本当でしょうか。

本当だと思います。以下のURLが参考になれば、、。 http://www.nature.com/news/2004/040830/full/news040830-5.html

盲点補完等の補完能力は、生得的なもので変わらないものでしょうか。それとも、経験や学習によって向上するのでしょうか。

網膜の構造に基づいて脳が作り出した生得的な機能だと思います。

色は一度反対色に変換されるとのことですが、錐体に黄色がないのはなぜですか。青細胞はどうしているのでしょうか?

講義でもお話しましたが各色のセンサーがあるのでなく、3つのセンサーで色全体を取り込む仕組みになっています。4種の錐体を持つ動物もいまして、詳細はまだ良くわかっていません。

生死の境目が瞬間に迫っている場合(例えば、道を歩いていて交通事故にあったような場合)、見えてる世界がカラーからモノクロになるという話を聞いたことがあります。
理由はモノクロの方が情報量が少なく、より高速に情報処理ができるからだそうですが、これはどういう仕組みなのでしょうか。

面白いテーマですが、小生には答えられません。最近、こういう研究もあります。http://www.plosone.org/article/info%3Adoi%2F10.1371%2Fjournal.pone.0001264

人間が世界を彩色に主観認識するのは生存のためですか?
モノクロに認識する動物には、どんな種類がありますか?

生存のために、ものを識別する上で必要なのでしょうね。イヌ、ネコ、ブタなど、また、夜行性の動物はそういわれているようです。

加齢による視覚細胞や皮質の衰えはありますか?

正直わかりませんが、加齢による老化はあるでしょうね、、。

440nm近辺の強いスペクトルと440nm近辺が最も多いが550~650nmの光も含む光を人の視覚ではどのようにとらえるでしょうか。(絵の具で見る淡色と明るいまたはさえた色の違いについて調べています)

面白い重要な質問ですが、ここで説明するのは難しいですね。また機会があれば、、。

(1)屈折率の測定例の図。もう少しわかり易く説明してください。
(2)盲点の部分を補う話。もう一度説明をお願いします。
(3)平衡細胞の青の細胞への働き、もう一度説明をお願いします。

話しが下手でスミマセン。「文字の記録」を読んで下さい。

目の中心部に青がないのはなぜですか?

難しい問題で、現在も研究されています。一説では、中心部の視力を保つためにセンサーの種類が押さえられているとも言われています。

認知とは何か? 認知症はどこが欠けているのか?

講義ではお話ししませんでしたが、以下が参考になればと思います。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%8D%E7%9F%A5
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%AA%8D%E7%9F%A5%E7%97%87

固視微動が止まると灰色になるとのお話でしたが、なぜですか?
逆に言うと、動きが色を作っているということですか?

良い質問ですが、網膜は変化するものしか反応しないので、例えば、TV放送が終了し電波が止まった後、画面が灰色になるような感じですね。動きと色は直接的には関係ないと思います。

野球選手がバッターボックスに立ったとき、ピッチャーが投げるボールが止まって見えるとかスローモーションで見えるとかの場合は、眼や脳では何が起こっているのですか?

動体視力の問題ですね。面白いですが、まだきちんとわかっていないと思います。画像がフリーズして見えるような感じですよね。

視覚障害者のためにカメラでとらえた信号を額の皮膚に電子信号を送って目の代わりをする装置が開発されていますが、皮膚で受けた刺激が目と同じように像を認識するのはなぜでしょうか。

面白い質問ですが、まだ良くわかっていないと思います。もちろん学習が必要かと思います。最近の研究によれば、視覚野も関係しているという報告もあります。

色彩の知覚と「知覚は主観的である」という点についての質問です。
私は昔から「リンゴが赤い」という場合、自分が見ている(知覚している)リンゴの「赤」と、隣の人が知覚しているリンゴの「赤」が果たして同じ色なのだろうか?という疑問を抱いています。
「色覚の個人差」を極論すれば、色覚障害等に行きついてしまいますが、そこまでいかなくても、健常者の範囲内で共通して「赤」と称される色は、単に「リンゴを見たときの色」が言語的に共通して、表象されているに過ぎないのではないか?と考えてしまいます。
仮に他人と「色覚」を交換した場合、同じリンゴが従来と全く違う色に見える訳ではない、ということは実証されているのでしょうか?
商品や映像、美術の選好に関わる点だとも思いますので、何卒ご教示ください。

素晴らしい質問です。私もそんな感じを持っています。個人的には、みんな同じような色味を見ているのではないかと思っていますが・・。ただ残念ながら「色覚」を交換することはできないのです。明確に答えられないのが歯がゆいところです。

shimin 2010-qa_8 page2577

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