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平成27年度 第3回 Q&A

第3回 2015年10月22日(木)

もっと手軽にCG制作
高山 健志 (国立情報学研究所 コンテンツ科学研究系 助教)

講演当日に頂いたご質問への回答(全15件)

※回答が可能な質問のみ掲載しています。

モデル1つをCGモデリングするのに何分くらいかかりますか?

どんな物体をどの程度のディテールまでモデリングするかという条件次第で、モデリングにかかる時間は大幅に変わってきます。例えば一つの目安として、2008年に発売されたSporeというゲーム内の「クリーチャークリエーター」というツールでは、ゲーム内で使用できる3Dモンスターの形状を数分~数十分程度でモデリングすることが可能です。

モデリングやアニメーションで使われている数学の技術はどのようなものがあるのでしょうか。

線形代数はどんな分野でも必須ですが、それ以外であれば、例えば微分幾何学は3次元形状を分析するのに役立ちますし、最適化の理論は特定の目的に合った形状や動き等を生成するのに役立ちます。ただ私個人の場合、これらの数学の技術を学んでからCGの研究を始めたというよりは、CGの研究をする過程で必要に応じて数学を学んだというのが正直なところです。CG研究者でも数学科出身でない人はたくさんいるので、初心者にも分かるように数学の基礎知識を解説した論文や書籍などがいくつも出ています。

・複数の形状を混ぜあわせることでその中間のデザインを作った時に、このデザインの意匠権は誰に帰属するのでしょうか。
・「複数の形状を混ぜるCG」で、新しいデザインは意匠や知財の問題はどう考えたらいいでしょうか。

例えば画像の場合、複数の画像を混ぜ合わせて作ったコラージュ画像は二次著作物と見なされます。3Dモデルの場合も、それと同様の扱いになるのではないかと思います。

CG技術は、企業と学術とどちらがリードしているのか?大学や研究機関がリードして企業が利用するといったイメージでしょうか?

どちらかというと大学や研究機関がリードしていると言えるかも知れませんが、Microsoft・Disney・Adobe等の大手企業もインターンシップ制度を中心に活発に論文を出しており、アカデミアとインダストリーのバランスは比較的良い方だと思います。

モーションキャプチャとか作れるか?素人が3Dアニメを作れるのはいつくらいでしょうか。

本格的なモーションキャプチャシステムは一般ユーザにとっては高価過ぎますが、簡易的なキャプチャであれば、例えばMicrosoft KinectやLeap Motion等の安価なデバイスを使ってある程度は行うことができます。

・お話を聞いて、さらに進化させて人間の言語で入力する方法(「もっと早く動け」とか)が楽しいし良いと思いました。そのような研究は行われていますか?
・言葉で指示するとかはどうですか?

CG制作に音声入力を取り入れる研究は、ほとんど取り組まれていないように思います。参考までに、画像の分析と編集という文脈において音声入力を活用したという研究が昨年発表されています。
Cheng et al. ImageSpirit: Verbal Guided Image Parsing. ACM Transactions on Graphics (2014)
http://mmcheng.net/imagespirit/

アジアでは、どこがこの研究が進んでいますか。

やはり中国が強いです。Microsoft Research Asiaが北京にあることも大きな要因だと思います。

「筋肉の流れ」に沿った自動リトポロジーは可能ですか?

「筋肉の流れ」が外から見てはっきりと明確な場合は全自動でのリトポロジーは十分可能ですが、顔の筋肉等のより複雑でわかりにくい場合は、全自動のみでは望み通りの結果が得られないことも多々あります。そのような場合、「ガイド」と呼ばれる線をユーザが描くことで、メッシュの向きをコントロールすることがある程度は可能です。

・「スケッチによるポーズ」などのアニメーションツールの実用化は?実際の制作現場では類似ソフトは使われていますか?
・どのくらい実用化されていますか?混ぜるとか使えそうです。3Dアニメはどうですか?

今回ご紹介した一連のアニメーション作成技術の多くは、まだ実用化には至っていないと思います。実際の制作現場では既に確立された(アーティストが慣れ親しんだ)作業の流れというものがあり、またソフトウェア会社も開発コストと収益のバランスを考慮する必要があるため、アカデミックな研究成果を実用化するにあたっては残念ながら多くの障壁があります。

スカルプトモデリングについて、ポリゴンモデリングにとって変わる、又はリトポロジーが不要になることはありそうでしょうか?

近い将来では考えにくいですが、あり得ると思います。現在リトポロジーがCG制作において重要である主な理由は、Catmull-Clark法による曲面表現が長らくデファクトスタンダードとして使われていることだと思いますが、それに代わる実用的な形状表現方法が将来的に出てくる可能性はあります。

・モデリングの「複数の形状を混ぜ合わせる技術」について、人工物ではなく人の顔でも利用できますか。父親の顔と母親の顔を混ぜ合わせて子供の顔になるシミュレーションができたら面白そうだと思いました。アニメーション制作時以外に現実的に使われていることはありますか。
・Parts-based Recombination が自然に各パーツをつなげられる所が楽しかったです。各モデルに遺伝子を設定しておいて、箱庭で進化させて遊びたいですね。計算量はどの程度になりますでしょうか。

今回ご紹介した研究事例では、基本的には人の顔を対象としていません。目・鼻・口などの有機的なパーツを不自然さ無く、さらに生物学的な特性を考慮して混ぜ合わせることは、面白い研究テーマだと思います。また、これらの技術をアニメーション制作以外の用途に応用したという事例は、私の知る限りでは見当たりません。

コンピューターシミュレーションによるCG(よくNHKスペシャルとかでやっている映像)今日のお話ででてきたCGは同じものでしょうか。

はい、同じものです。

CGの"芸術性"を高めるという考え方は全くないのですか?もし考えがあるのならどんな違いがあるのでしょうか?

「芸術性」を客観的に評価することは難しいので、「芸術性を高める」のではなく「芸術的な表現のための自由度を高める」という考え方が学術研究の文脈では主流だと思います。その「自由度」も定量的に測ることはやはり難しいので、現実的な評価方法としては、複数のアーティストに提案手法を試用してもらい、その制作結果の多様性を見るという、ある程度主観的なものになることが多いと思います。

技術が進歩して脳でコンピュータを動かせるようになったら、イメージするだけで映像を再現できるようになるのでしょうか?

私は脳波に関しては全くの素人ですが、数年前に話題になった生物学分野の研究として、被験者が映像を見た時の脳波の動きを何度も計測することで、脳波から被験者が見ている映像を予測する、というものがありました。脳波の研究はまだまだ発展途上だと思いますが、将来的にこれとCG技術を組み合わせることで面白いことができるようになるかも知れません。
Nishimoto et al. Reconstructing Visual Experiences from Brain Activity Evoked by Natural Movies. Current Biology (2011)
https://youtu.be/nsjDnYxJ0bo

「複数の形状を混ぜ合わせる技術」の結果は、それなりに実用性のある形(工作機械等)に見えましたが、具体的に実用化されたものはありますか。

今回紹介した手法では、工作機械等としての機能性については現段階では考慮していないので、その用途は見た目のみが問われるCG制作に限定されると思います。

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