イベント / EVENT

平成29年度 第7回 レポート

ラーニング・アナリティクスの動向などを紹介

国立情報学研究所は1月30日、平成29年度 市民講座「情報学最前線」第7回を開催しました。本年度最終回となる今回は、情報社会相関研究系 古川雅子 助教が「オンライン教育の可能性-学習ログ分析を学びに活かす-」と題して講義しました。

pic_report_furukawa1.jpgインターネット環境が進化した現在、インターネットを利用した学習「オンライン教育」はとても身近な学習環境と言えます。そのため、サーバーに蓄積された学習行動履歴データ「学習ログ」を分析し、その結果を学生や教員、教育機関へ効果的にフィードバックすることによりオンライン教育の改善を図る「ラーニング・アナリティクス(Learning Analytics) 」という研究分野が世界各国で注目されています。

古川助教は、最近のラーニング・アナリティクスの事例として、LMS(学習管理システム:Learning Management System)に蓄積されたクリック・ストリーム・データ(講義ノートの閲覧や掲示板への書き込みに伴うクリック履歴)から学習行動の転換点を発見する研究について説明しました。その他にも、学習者の感情情報を利用した研究の事例なども紹介し、「世界のラーニング・アナリティクスは常に進化しており、より実践的で成熟したデータ解析が進められています」と話しました。

pic_report_furukawa2.jpgまた、世界的に普及している大規模公開オンライン講座「MOOC」の課題として、「大学等のコンテンツ提供側のコスト」を挙げ、MOOCが継続的に「無料」であるためには運用コストの改善に取り組む必要があると話しました。この課題に対する取り組みとして古川助教は、自身の研究である「既履修学習者との協働による講座運用の効率化」の事例を紹介しました。国立情報学研究所は2016年、日本オープンオンライン教育推進評議会(JMOOC)の講座提供プラットフォーム「gacco」でプログラミング入門講座「はじめてのP」を開講、2017年に同プログラムの再開講を行いました。その際、初回の修了者12人にディスカッションボード(掲示板)のサポーターを依頼し、投稿内容の確認や質問に対するコメントなどの受講者支援を行ってもらいました。その結果、サポーターごとにコメント数に大きな偏りがあったことなどが分かり、今後どのように既履修学習者と協働していくべきか課題を探っていきたいと話しました。

受講者からは「オンライン学習ログの活用について最先端の動向を知ることができ興味深かった」「自分のクリックが分析されるのかもと思うと面白くもあり恐ろしくもあった」などの感想が寄せられました。

今年度の市民講座「情報学最前線」を受講していただいた皆様、誠にありがとうございました!来年度のプログラムについては決まり次第、ウェブサイトでご案内いたします。

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