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平成26年度 第8回 Q&A

第8回 2015年2月26日(木)

ビッグデータ分析による経済の進路予想
水野 貴之 (国立情報学研究所 情報社会相関研究系 准教授)

講演当日に頂いたご質問への回答(全18件)

※回答が可能な質問のみ掲載しています。

株でもうかる必勝法へのヒントはありますか?

「予測できる」と「儲かる」には隔たりがあり、手数料を超えるほどの予測は至難の業です。ほぼ確実に予測できる方法には高い手数料が設定されています。

ビッグデータから現象の分析・説明をしているときは、十分にみえても、将来予測をしようとすると、使用しているデータの十分性が問題になると思います。未知の現象、イベントを予測しようとする場合、データの検証をすることは可能でしょうか?

キーワードは普遍性です。現在までずっと続いている市場の性質は、人の根源的な群集行動と関係しており、その性質については未来でも起きると考えられています。

バブルが破裂するタイミングは、どのようにしたら把握できると思われますか?特徴のヒントをいただけたら。

バブルとは格差だと考えています。これまでのバブル期には、不景気の時には観測されないような、他と比べて極端に高い不動産が頻出しました。

最初の例で、文字入力と翻訳で許容される格差はどのように測るのですか。

相対的に測ることになります。バブル期では、希少な人材の確保にはお金に糸目を付けなくなるため、文字入力と翻訳での賃金格差は大きくなると思われます。

バブルという現象をとらえるとき、小さなバブルが発生していて、それが集合的に発生して「バブル」に見えるということはないのでしょうか?このところの日本株の値動きをみていてそう感じています。

市場には、デイトレードや年金などの長期運用など、様々な時間スケールで取引をする人が参加しています。従って、ミニバブルのように様々なスケールでバブルが発生していると考えられています。

主要先進国の国債利回りは、満期が短期のものを中心にマイナス金利になっています。この状態は、バブルを言えると思いますが、金利がバブルかどうかはどのように判断したらよいでしょうか。

現在進行形で進めているテーマです。

ネット上で生じる、いわゆる"炎上"というもののプロセスと、今回、説明のあった「バブル発生」のプロセスは、極めて似ているように思えるが、この両者を同じメカニズムの現象として、考えることは可能でしょうか?
*フォローする人がいなくなると"崩壊"するところまで、"炎上"と"バブル"は良く似ているように思います。

関心が関心を呼び込み「みんなが興味を持っているから私も興味を持つ」という状況は、「みんなが買っている(値上がりすると思っている)から私も買う(値上がりすると思う)」というバブルの状況と同じです。

バブルは個別の銘柄でも起こるのでしょうか?株Aはバブル、株Bは正常といったような感じに。

バブルとは、人々がより値上がりしている株に群ってさらに価格を上げるという状況であるため、他の銘柄に比べて極端に高い銘柄は高い確率でバブルだと思いますが、あくまでも確率論です。

格差とバブルに相関があるのか因果関係があるのかは、どこで見分ければよいのでしょうか。

一般的に、統計量だけで因果と相関の区別をすることは困難です。背後にある経済学的なメカニズムを考えて、因果があることを説明します。

バブルの生成過程で、アービトラージ(裁定取引)が効きにくくなるのはなぜですか?

人々に「皆の真似をしよう」という心理が働き、企業の業績に関係なく「皆が買っているから買おう」という投信がおこなわれてしまうためです。

リーマンショックの原因として、しばしばべき分布を考慮しない古典的な金融工学の問題点が指摘されているが、近年の経済物理学的アプローチでは、どう説明できるとお考えですか?(またはどんな実証研究が存在していますか?)

投げ売りが、さらなる投げ売りを呼び込むトレンドフォローのメカニズムで説明されることが多いです。トレンドフォローがべき分布を作り出すという考え方は定着しています。価格変動に対する蓮検定などの多体の相関分析により、トレンドフォロー戦略が暴騰・暴落時の主な戦略であることが示されています。

資産効果により、過剰な格差がさらに大きくなることはないのですか?

格差がさらに大きくなることはあります。我々は、格差には限界があり、限界に達した格差は経済システムの崩壊とともに解消されると思っています。

ビックデータの件数、実際に利用した件数を知りたいです。

首都圏の不動産分析では100万物件程度、価格.comの分析では8億件程度です。

研究する中で、大量データの処理にどの程度時間がかかりましたか?

処理により、15分程度~数週間程度まで様々です。

ビッグデータの重要性が近年よく聞こえてきます。データ解析の基本やどのような知識が必要になるのか、ご教授頂ければ幸いです。

統計検定を勉強して下さい。ビッグデータから得られたデータの癖が偶然なのか、そうでないのかの判断ができるようになります。

資産総額と営業利益の相関は、現在の営業利益ではなく、将来の営業利益と相関するのではないでしょうか。

将来の営業利益との相関のほうが大きくなりますが、予測という観点からは将来の値を使うことはできません。今回の分析に関しては、現在の営業利益を使った場合と将来の営業利益を使った場合とで傾向が変わらないことを確認しています。

不動産市場の分布について、中国やジャカルタなどの新興国ではどうなっていますか?

精緻化された新興国のデータの収集に手こずっています。データをお持ちであれば、ぜひ、お声がけください。

アベノミクスは、バブル格差とならない方向を目指しているとのことですが、よくわかりません。詳しく教えてください。アベノミクスは、いつピークアウトするでしょうか。

「富める者がまず成長していって、その後に富める者が他の者を引き上げる」という中国的な経済成長と、「皆で一緒に成長する」という日本の高度経済期的な成長の2パターンがあります。前者は格差を拡大し、バブルを引き起こすと考えられています。ピークアウトを予測するには、政策の効果などの外生的要因についての研究を進める必要があります。

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