イベント / EVENT

平成29年度 第2回 Q&A

第2回 2017年 8月25日(金)

ダイヤモンドと量子情報
-テレポーテーションから量子認証まで-

講演当日に頂いたご質問への回答(全29件)

※回答が可能な質問のみ掲載しています。

量子コンピュータは現在のPCのような形で一般に普及するのでしょうか?

そのように考えています。

もつれについて、もう少し詳しく説明していただけますでしょうか。

講演では二つの量子で一つの状態と申しましたが、説明がつたなく、大変申し訳ございません。現象的には、二つの量子にいかなる測定をかけても相関した結果が得られるものです。

NVとは何ですか?

NVとは、ダイヤモンド中の不純物窒素(N)と炭素欠陥(V)が隣接したものになります。

「|左>」の 「|」や「>」はなんと読むのでしょうか?

「|」と「>」で挟まれたものをケットと読み、量子状態を表します。

中継ができるのであれば盗聴できるのではないですか?

中継部で得られる情報は量子もつれの種類だけですので、伝送されている情報自体を知ることは不可能です。

ダイヤは高価なイメージがありますが材料としてはいくらぐらいで作れるのですか?

ダイヤモンドの質に応じて値段は大きく変わります。我々の使用している最高グレードですと、3mm角(厚さ0.5mm)で10万円程度です。

1つのダイヤにたくさんのダイヤモンドNVを作ることができるのですか?(人工的に作るとすると)

はい。窒素イオンを注入し、熱処理することで人工的に濃度を制御してNVを作ることができます。

量子情報を担うのはダイヤモンドNVという話がありました。CがNに置き換わって孔があるという欠陥のあるものと理解しました。そこで質問です。
実験に使うダイヤモンドは人工的に作るのですか?自然のものですか?

はい。人工的に作ります。その中のNV欠陥は天然にできることもあれば、人工的に作ることもできます。

中国の量子暗号衛星の通信はダイヤモンドNVによるのですか?

いいえ、違います。現在の量子衛生には量子中継は実装されていないものと思います。

量子は小さい必要も大きい必要も粒子である必要もないのに、なぜ「量子」と名付けられたのでしょうか?

Quantumを日本語化する際にどのような考えがあったのかは存じ上げませんが、原語には「小さい」や「粒子」といった意味合いはないかと思います。

質量のない世界で状態のコントロールは可能なのですか?

はい、可能です。例えば、光の量子である光子は質量がありませんが、偏光子などの装置で状態をコントロールすることができます。

テレポーテーションの速度は?時間を遡ることはできますか?

光速と思っていただければよろしいかと思います。時間を遡ることはできません。

量子テレポーテーションも量子情報通信の一種とみなしてよいでしょうか?

はい、その通りです。200km程度までの短距離では量子テレポーテーションは不要です。それ以上の距離では、量子テレポーテーションの原理を使った量子中継が不可欠です。

量子テレポーテーションの原理で「通知」はもう少し具体的に言うとどのような処理を行うのでしょうか?

量子もつれには4種類あり、このいづれかを通知します。

量子テレポーテーションしたウルトラマンは原子レベルでは別物ですか?
仮に別物であれば、量子テレポーテーション前のオリジナルはなくなってしまうのでしょうか?

微妙なご質問ですが、原子レベルでは同じものと言えると思います。ただ、状態は異なりますので、オリジナルの状態は壊れてしまいます。

量子テレポーテーションした後でも、送信元が電子だった場合、SPINは上か下のどちらかに残るのだから、状態が壊れたことにならないのではないのでしょうか?

壊れると表現した意味は、SPINの上と下がランダムに分布するという現象を指しています。元々持っていた分布が壊されるとお考え下さい。

量子テレポーテーションでなぜ通知による補正が必要なのか?通知するなら量子通信の意味がないのではないでしょうか?

補正信号だけを通知し、情報自体を通知するわけではございません。量子通信は盗聴が不可能な通信ですので、少々手間がかかります。

EPR相関に関するお話をされていたという認識で合っていますか?

はい、その通りです。

光子から電子に変換する技術、この基礎技術により、万能量子コンピュータ(古典コンピュータで言えば、NOT、AND、ORの構成)の実現への可能性はありますでしょうか?

光子から電子への変換はインターフェースの役割を果たすものですので、万能量子コンピュータの実現をサポートするものとお考え下さい。

光速よりも早く量子もつれを使えば情報を伝えられるのですか?

量子テレポーテーションで光速より早く情報を伝えることはできません。量子もつれの測定結果を伝える時間が必ず必要です。

現状のコンピュータや通信ネットワークは24hr連続的に動作することがいわば暗黙の前提となっております。量子コンピュータでは一度に超多並列(相当)の計算を行えると伺いましたが、計算の前準備や、結果の読み出し処理に長い時間を要するのでは?と思っています。実際のところはどうなりそうなのでしょうか?

パイプライン処理を行いますので、実行速度が前準備や読み出し時間で大きく律速されることはないかと思います。

ある量子回路の演算結果の出力を別の量子回路の入力にしたりすることができるのでしょうか?

はい、できます。

量子通信インフラを作るのには、膨大な費用が必要になると思いますが、既存の古典的暗号のインフラと併存して構築するだけの需要と価値があると思いますか?

はい、あると思います。量より質の重視されるアプリケーションが需要を増していくと想定しています。

量子通信のコストや誤差は解析されているのでしょうか?

現状ではコストや誤差の具体的な想定は難しいかと思います。

1.0ms→1.0sという長時間の変化はかなり大きいと思いますが、どのようなブレイクスルーが起こった結果その変化は実現されたのでしょうか?

材料の改良と測定技術の進化によるものです。

もつれを遠方へ送るのに運搬装置のようなものはいらないのでしょうか?粒子1個が衛星との間でとぶとは思いにくいのですが。

光の量子である光子を用いて遠方に送ります。

量子通信の信頼度はどれくらいなのでしょうか?従来型通信だと、ノイズ除去技術や再送で高信頼性を確保しているが、量子通信のそれらに対応する技術はあるのでしょうか?

信頼度は100%にしていく必要があります。量子エラー訂正といった技術を併用して信頼性を上げていくことになります。

暗号化技術と量子テレポーテーションについて、量子コンピュータが市場に出回っていくと、量子認証も破られるのではないでしょうか?ブロックチェーンは大丈夫でしょうか?

はい、その通りです。今回お話した量子認証は、量子コンピュータによって破られます。その際には、量子もつれを利用した量子認証などの新たな手法の開発が必要です。

企業の研究所に勤めています。
テーマ提案をする際、どれだけ儲かるかということを嘘でもいいから話さないと、超伝導量子ビットや量子コンピュータの話を全く聞いてもらえません。これからの世の中、電子工学も量子力学の最前線の研究成果を取り込んでいかなくてはいけないと思いますが、どのように量子力学の必要性を訴えればいいでしょうか。

量子通信と量子コンピューターでは訴え方が変わるかと思います。量子通信では、情報の価値が量から質へと変貌しつつある時代背景を訴えるとよろしいかと思います。量子コンピューターでは、ビッグデータの解析、画像処理、最適化問題などの単純ではあるが膨大な計算の需要が増している背景を訴えればいかがでしょうか。

shimin 2017-qa_2 page2701

注目コンテンツ / SPECIAL