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平成30年度 第3回 Q&A

第3回 2018年9月13日(木)

流体力学で描くデジタルアートの世界
-幸運をもたらすシーンのCG、美しさは数学?-

講演当日に頂いたご質問への回答(全39件)

※回答が可能な質問のみ掲載しています。

「水の形状を自然に再現」の部分でCGのデモがどうも不自然に感じるのは何故か?と考えたのですが、原因の一つに水が動くと水中に取り込まれる空気の存在が考慮されていないからではないか?と思いつきました。スライド17では光と影を考慮したCGが示されましたが水(流体)と併せて、水が接する「空気」のある面の動きも併せて計算・表現する必要があるのではないでしょうか?

ご指摘の通りで、飛沫等で発生する泡などを含めた2層流体の計算によってもっと自然な水の表現が可能と考えています。

流体は、液相のみを解いているのですか。(気相は圧力のみ保持) 自由表面流れを、粒子法を選択しない理由はありますか。

液体のみを解いています。自由表面の流れを粒子法で解く手法も存在しますが、本講演ではあえて格子法を中心に紹介しました。

パターンは確率的、コントロールできるのか?初期値の依存性、カオス的なふるまい?

液体の挙動はとても複雑で、少しの初期値の違いで結果が大きく異なるため、コントロールは現在難しい研究課題の1つとなっています。

自然現象の再測、できないもの:予測? 例えば3Dのマーブルキング?

身の回りで観測できる流体現象は、ある程度再現できます。

防災棟へのシミュレーションには使えるのか?

コンピューターグラフィックスの数値流体は、精度をあえて落としているため、人命に関わるような防災への応用はそのままでは難しいです。

なめらかさの追求 どういうものが難しいのか?

端的に回答すると、小さなスケールから多きなスケールの液体シミュレーションは難しい問題です。

写真との比較においてCGのアートについてどうお考えでしょうか。

写真と比べて、CGはカメラアングルの調整や危険性を伴わない利点がある一方、写真のような自然の忠実さを表現するにはまだ技術的な課題があります。

論文書くときにどうやって動画を入れるのか?

動画は、動画ファイルをインターネットで提出します。

ソフト、PCのスペックは?

GCC コンパイラを使用し、Intel Core i9-7920X 12コアメモリ128GB です。

ナビエストークスの方程式で粘度の違いによる流体の動きを再現できますか?その際、分子構造はパラメータに必要ですか?どういうパラメータが必要ですか?

再現可能で、粘性係数をパラメータとして与えます。

貴研究は、津波、高潮のシミュレーションや、火災における煙の挙動等、防災技術への展開はすでになされているのでしょうか。

災害への予測は計算精度の保証といった観点から慎重さが必要であり、現在展開はなされていません。

自然現象の再現のその先に、コンピューターグラフィックスでしかできないこととして、どのようなことが可能になりますか?なりそうですか?

3次元プリンタで印刷可能な3次元モデルの設計などが挙げられます。

人が描いた風景画では自然の風景を非常に良く表しているように思います。人がどのように描いているのかを分析すれば、精密なシミュレーションができるのではないですか。

指摘の通りで、人がどういった挙動を自然に感じるのかを分析して、研究に生かせればと思っています。

シミュレーションしたものと現実のものとで見た目はどのくらい違いますか。また、物理や数学で「小さな誤差が大きな差につながる」というカオスの話を良く聞きますが、シミュレーションしたものは時間が経つと現実との差は大きくなりますか。

印象という点では、シミュレーションと現実は近づいていますが、細かな挙動は大きく異なることがあります。

現実でマーブリングは3次元でもできますか。

液体内にインクを垂らせば、3次元でもマープリングが出来ますが、その後紙に転写出来ないため、難しいと思います。

マーブリングの頂点間の曲線はどのように決まるのですか。

講演では説明しませんでしたが、ベジェ曲線などの数学モデルを使うと決定できます。

チームLABOなどがコンピューターグラフィックでアート表現をしていますが、これらの技術について先生はどう見ていますか?

そういった産業アートへ役立てれば嬉しいと思っています。

マーブリングの手法について、マーブリングを作るときに、円に対して先に色と重さを与えてから変形したら、面白いデザインになるのではないかと思いますがどうでしょう?

その通りで、そういった用途も可能です。

3次元のシミュレーションで、さざ波が表現されていたが、同じ方程式からの計算結果ですか?

そうです。

使用しているソフトは市販されていますか?

レンダリングは Mitsuba Renderer というフリーのプログラムを使い、シミュレーションは GCC というコンパイラで C++ 言語で開発されています。

PCの最低必要な性能源は?

小規模な計算であれば、ノートパソコンでも計算出来ます。

粒子追加法で、水が表面張力で水滴になることは表現できますか?

現在そこまでの表現は難しいです。

プログラミング言語は何を使っておられますか?

C++ という言語です。

CGの出来映えの評価は主幹評価なのか。客観的な「正解」はあるのですか?

主観評価がほとんどです。客観的な「正解」もありますが、非常に限られています。

数値解析しているだけなのに方程式を解くと言われるのは違和感が・・・

ナビストークス方程式は解析的に解けないため、数値解析で近似値を計算するというのが現状となっています。

マーブリングの話は仮定として「最初に落とした絵の部は連結変形する」というものがある?(そのように仮定して一般性を失わない?) ●⇔●●とはならない?

落とした絵の具を別々に計算して、それを最終的に結合するという手法をとっています。

水しぶきと共に泡立つと思われますが、泡は表現できていないのですか?

可能ですが、私の研究例では泡を表現していません。

新しい手法はどうやって思いつくのですか。

数式を解いている時に、その法則性からヒントを得たりして、思いつきます。

これらの研究は、見た目を自然現象に似せる・近づけるようなものなのであって、自然現象を科学的に解き明かしていることににはならないのでしょうか。(人間が見ているものが同じようなものなら、違いもないのかもしれませんが)

科学的に解き明かすことは直接的な目的ではありませんが、解明に役立つことはできる可能性があると思っています。

空気は流体として扱っているのですか?

はい。

先生の提案された水の表現手法を取り込んだCGや3Dソフトウェアはありますか。もしまだないなら、何が問題となっていますか?

発表した研究アイデアが、実際に市販されている3Dソフトウェアの一部に活用された例があります。

圧力の計算を荒くしたシミュレーションは粘性が高い流体に見えた。また、粒子法の時、表面がなめらか差がなくなるというが、見た目表面張力の差に見えた。どう関係しているのか。

計算格子が粗いと、数値拡散という現象が起こるために、粘性が高く見えます。表面張力は水面を滑らかにしようとする作用があり、それに関係しています。

差分法での「数値振動」はどのようにとらえて解決されているのでしょうか?例えば求めたい物理現象の固有振動の周期と一緒の雑音エラーともいえる数値振動の周期がニアリイコールの場合、本来解かエラー解かの区別判断ができづらいと思えるのですが、こういうったときは数値振動をどのようにとらえて解決しているのでしょうか?

数値振動が起きない差分スキームを選択しています。

本当の波ではその先端の水が分離することがあります(波しぶきの水滴)、しかし、そこで薄膜の保持が働くと水滴ができなくて不自然な波となるような気がするのですが、これは問題ではないのでしょうか?(水しぶきにおける、水が切れる場合と切れない場合の判断は?)

水がある一定以上薄くなると、薄膜の保持を行わないようにしています。

格子はどれくらい細かく切るのが実際的なのか。

これは水の挙動によっても変わるため、使い勝手の判断に任せています。

アートとして考えると、自然そのものでは人の目からみてそれらしく見えないということもあるかと思います。極端に表現するなど、そのような点はありますか。またその対応は行っていますか。

指摘の通りで、シミュレーション結果をどう使うかをアーティストにゆだねています。

計算例がWEBで見れるようになりませんか?

http://research.nii.ac.jp/~rand/ で閲覧出来ます。

質問の「初期値」「制御」というものが何を意味するのですか?

初期値は、シミュレーション開始時の状態で、制御とは、シミュレーションを望んだ結果に近づけるための操作になります。

配布資料では動画が分からない。後で復習するために動画をWeb上にUPして頂けないでしょうか

http://research.nii.ac.jp/~rand/ で講義で使用した動画の一部が閲覧出来ます。

shimin 2018-qa_3 page3322

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