イベント / EVENT

平成30年度 第7回 Q&A

第7回 2019年1月23日(水)

テラヘルツ電磁波の新展開
-遠赤外線はコーヒー豆を煎るだけではない-

平川 一彦

講演当日に頂いたご質問への回答(全25件)

※回答が可能な質問のみ掲載しています。

テラヘルツの範囲で、実用化して考えている周波数は何種類くらいを検討しているのでしょうか。

テラヘルツ周波数領域では、未だ標準化の作業ができていませんので、実用化されるときに何種類程度の周波数領域に分類されるのかはよくわかりません。すみません。情報通信研究機構など、総務省関係の研究所の方に聞かれるとよいかもしれません。

検出器のデバイスとしては、他にどのようなものを検討されているのでしょうか。

講演でお話ししたMEMSを用いた検出器の他に、ショットキーバリアダイオードを用いた整流素子が検討されています。整流素子は、室温動作が可能で、感度も高いのですが、感度領域はおおよそ1THz以下に限られます。

テラヘルツ波の性質について、他の領域の光に比べてなぜ物質固有の吸収が良いのか

原子間、分子間の振動や、分子の回転など、物質に特徴的な周波数がテラヘルツ領域に入っており、ちょうどテラヘルツ電磁波を共鳴的に吸収するために物質固有の吸収が見えます。

テラヘルツ波の性質について、波長が長いとなぜ透過性が良いのか

紙や繊維、粉のように可視光が散乱される場合には目には不透明に見えます。しかし、波長が長いテラヘルツでは、波長が長いために繊維や粉が散乱体として働かず(散乱体を平均化してみるため)、テラヘルツ電磁波は透過します。ただし、この場合、透過させたい物質のテラヘルツ吸収が小さいことが必要です。

遠赤外線が他の電磁波に比べて熱エネルギーに変わり易いのはなぜですか

吸収さえあれば、遠赤外線が特に熱に変わりやすいと言うことはありません。

焼き芋の研究はどなたがしているのですか?

誰も真面目に研究してはいないかもしれません。面白いテーマだとは思います。

スライド№8、№28
価電子帯

荷ではないのですか?

固体物理の分野では、「価電子帯」という表記を用います。

テラヘルツの範囲で、実用化として考えている周波数は何種類くらいを検討しているのでしょうか。

上記1の質問と同じ。

検出器のデバイスとしては、他にどのような物を検討されているのでしょうか。

上記2の質問と同じ。

サーモグラフィのレンズの材質は何ですか。

抵抗の高いシリコンやゲルマニウムが使われていると思います。

周波数は安定ですか。連続で可変できますか。

多くの半導体を用いたテラヘルツ光源素子は周波数可変ではありません。動作条件などをチューニングして、わずかに周波数が変わる程度です。

THz電磁波は表面から100umまでしか侵入しないのに、なぜ数㎝奥の乳ガンが見えるのですか?

大変よい質問ですね。私もよくわかりませんが、乳がんの場合、皮膚表面の温度も局所的に高いのかもしれません。専門ではないので、必ずそうだとは言い切れませんが。

"無線通信ではテラヘルツ帯で、超高速通信や広帯域増幅の可能があるとのことですが、実現への課題はどういったことでしょうか。 また、実現の見通しや、いつ頃、実用化されるとお考えでしょうか。"

増幅器が利得を持った状況で安定に保っておけない、室温で動作しない、高速に変調できないなど、研究開発はこれからと言えます。実用化に関しては、周波数レンジによりますが、数百GHzでは比較的近い将来可能です。一方、1THz以上の周波数では、まだいつ頃というレベルではないように思います。

テラヘルツで情報通信をする場合に、共振器や変調器が必要になりますが、どの程度研究されていますか? テラヘルツ応用は、波の位相を利用するようなレベルではなく、おおざっぱにその周波数領域のエネルギーを利用するだけのレベルにとどまっているように感じました。

テラヘルツの共振器や変調器の研究は、始まったばかりで、研究はこれからだと思います。またおっしゃるとおり、テラヘルツでは波の位相まで制御すると言ったレベルからはほど遠い段階にあります。

電波法では3THzまでを電波として定めていて、それ以下の周波数では免許や手続きが面倒になるので、研究する上で3THz以下は避けようというような意識が働くことはありますか?

私は電波法についてはよく知らないのですが、多くのテラヘルツ研究者が電波法のことをよく知らないと思います。またほとんどの場合、室内で微弱なテラヘルツの実験を行っているので、実際上は問題になることはないのではないかと思います。ただ、おっしゃるとおり、電波法は今後重要になるかと思います。

P.42MEMS共振器について。ここに出てくる共振特性というのはMEMSの機械的な共振の話で、テラヘルツ波の共振とは関係のない話という理解であっていますか?

はい、おっしゃるとおりMEMSの機械的な共振の意味です。

MEMSは何の略ですか?

microelectromechanical systemの略です。

"速い"の中の"近距離"とはどれくらいの距離を言うのでしょうか?

周波数によりますが、100 GHzぐらいですと屋外で100mぐらいの無線映像中継を行った例があります。数百GHz以上ですと、数m程度の室内での通信ぐらいかと思います。

単一分子のTeraHertz電磁信号が300Kでみえるというが、熱振動の方が大きすぎるのではないかと危惧しています。他の測定は4Kくらいなのになぜか?(機械振動は熱振動がまじらないか?)

すみません。きちんとお話ししなかったかもしれませんが、単一分子の振動を見る実験は液体ヘリウム温度(約4K)で行っています。

テラヘルツ電磁波の技術により、ドラえもんの秘密道具であるXYZ線カメラ(箱の中身を透撮可能なカメラ)が実現する可能性は有りますでしょうか。

テラヘルツ電磁波は透過性が高いというような話され方をよく聞きますが、そうばかりとは言えません。繊維、粉体のように散乱が強い場合には、波長の長いテラヘルツは散乱されにくく、透過性が高まります。しかし、分子と強く相互作用もするので、テラヘルツ領域に強い吸収を持った物質があると、それを透過して向こうを見るのは難しいです。XYZ線カメラになるのは、もう少し条件を絞る必要があります。

遠赤外→熱、料理、暖房等
サブミリ波→電波天文学、ACMA
THz・・・はどの分野で多く使われていますか?

遠赤外、サブミリ波とテラヘルツ電磁波は同じものですので、書かれているようなところで使われています。また、最近では製薬メーカーなどで、分子構造の決定や錠剤のオンライン検査などにも使われています。

現在は、THzを扱える半導体はあるのですか? サブミリ波はACMAで検知しているようですがどのような素子が使われているのでしょうか?

THz電磁波を扱うためには、超高速生が必要ですので、ガリウムヒ素やインジウムが入ったインジウムガリウムヒ素などの化合物半導体が使われて、半導体デバイスができています。共鳴トンネルダイオード、単一キャリア走行ダイオード、ショットキーダイオード、光伝導アンテナ、量子カスケードレーザなどのデバイスが実現されています。

フラーレン以外にも他の分子のスペクトルも測っておられるのでしょうか。医療などへの応用もあるのでしょうか。

我々の研究室では、購入することができる簡単な分子しか扱えませんので、フラーレン系の分子を測ってきました。今後、様々な分子に展開していきたいと思います。

テラヘルツでスイッチングが可能になると1000倍程度速いデジタルコンピュータができるのでしょうか?

原理的にはそうですが、イントロでお話ししたように、古典的なトランジスタを1000倍速くすることは原理的に不可能と思われます。従って、1000倍速いコンピュータを実現するには、デジタルコンピュータではない原理のものになると思われます。

テラヘルツなのサイエンスに関連した(特に分子生物、医学などのジャンル)人間、ヒトが持つエネルギーや熱に関する参考文献などご教授頂きたく存じます。

私は分子生物学、医学に関連した研究をしていないので、いいアドバイスをすることができません。生体と熱の関係等に関しては、名古屋大学の川瀬晃道先生、京都大学の小川雄一先生が詳しいと思いますので、コンタクトされるとよいと思います。

shimin 2018-qa_7 page3777

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