イベント / EVENT

2019年度 第4回 リポート

トポロジカルフォトニクスとは?
フォトニクス技術の新たな可能性を紹介
岩本 敏教授が講義/市民講座「情報学最前線」第4回

 国立情報学研究所は1月21日、市民講座「情報学最前線」第4回を開催しました。今年度最終回となる講義は、講師に岩本 敏 東京大学先端科学技術研究センター 教授/新学術領域「ハイブリッド量子科学」研究メンバーをお招きし、「トポロジーで光を操る-光はボールとドーナツを見分けるか-」と題しお話しいただきました。

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 光・フォトニクス技術は、身近なデバイスに活用され、私たちの生活に欠くことのできないものとなっています。その新たな展開の一つとして、トポロジーという数学の概念を導入して光を制御・活用しようとする「トポロジカルフォトニクス」という分野が注目を集めつつあります。トポロジーとは 「ものの形をざっくり区別する数学」のことで、連続変形して同じになるものはすべて同じ形と考え、ネットワークなど目に見えるもの以外にもトポロジーの考え方を使うことができます。

 周期構造中の光は、方向(正確には波数)とエネルギーの関係(バンド構造)をもちます。波数空間の中をバンドに沿って一周したときに、波動関数や光分布が描くかたちのトポロジーを考えるのがバンドのトポロジーで、バンドトポロジーが異なるものをつなげると「エッジ状態」と呼ばれる特殊な状態ができます。光はバンドトポロジーの切り替わるところを見分けて、エッジ状態に存在するようになります。つまり、「光はボールとドーナツを見分けることができる」のです。

 このバンドトポロジーの概念をフォトニック結晶などの周期構造中の光に適用し、新たな機能を発現・応用しようとするのが、トポロジカルフォトニクスと呼ばれる新しい分野です。岩本教授は、「数学(トポロジー)、物理(物性科学)、工学(フォトニックナノ構造技術)の三位一体で、新しい光の技術が生まれようとしています。そのような可能性がある新しい分野が盛り上がっていることを知っていただきたい」と話しました。

 今年度最終回となる講義には、約210人が参加し、岩本教授の講義に真剣に耳を傾けていました。大変難しいテーマでしたが、参加者からは、「実際のもの以外にもトポロジー的な考え方が応用できることがわかった」「トポロジーの境界(エッジ状態)で特別な性質をもつことが興味深かった」などの意見が寄せられました。

今年度の市民講座「情報学最前線」にご参加いただきましたみなさま、ありがとうございました。
2020年度の講義については、決まり次第、NIIウェブサイトでご案内します!

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