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2022年度 第3回 Q&A

第3回

人をデジタル化する事は可能なのか?
-知能と身体の深い関係-

稲邑 哲也

※回答が可能な質問のみ掲載しています。


「人のデジタル化が進み、バーチャル空間でリアルタイムに活動できることは、楽しみが増えると思います。
しかし、それはあくまでもバーチャルの自分であり、リアルの自分とは別物です。
重要なのはバーチャルの自分ではなく、リアルの自分が健康で楽しく活動することです。
バーチャルの自分がテニスをみんなと楽しみ、うまくなっても、 リアルの自分の体験にはなりません。
バーチャルの自分とリアルの自分の違いを認識し、リアルの自分の役に立つようにするには どのようにするのがよいとお考えですか。

 少し場面を変えて、普段ほとんど会えない人と何年ぶりかに電話で話す、という状況のことを考えてみてください。
電話越しに聞こえる相手の声は、デジタル化された上で伝送されている声であり、リアルの声ではありません。バーチャルな声で す。でも、二人は昔話に盛り上がり、普段会えなかったけれども、お互い絆でつながっている事を確認できて、幸せな気分になる事が容易に想像できます。
これはリアルの体験なのでしょうか?バーチャルの体験なのでしょうか?
ほとんどの人は、「電話越しに会話をするというリアルな体験をした」と認識するかと思います。
では、バーチャルの空間で仲間とテニスをする、という体験はバーチャルなのでしょうか?リアルなのでしょうか?
想像ですが、バーチャルな体験であると思う人が多いのではないかと思います。
ここで、この二つの体験はこのように整理できます
・声だけの電話の体験:リアルな体験
・声+身体+映像のVRテニス体験:バーチャルな体験
これを俯瞰して見ると、少し矛盾しているように見えます。なぜ、声だけの会話はリアルなのに、声だけでなく映像や身体運動も加わった、「リッチな」体験はバーチャルに感じてしまうのでしょうか?
これは、「この体験はリアルだ」と脳が信じているか否か、という曖昧で主観的な議論に行き着くことになってしまいます。電話は既に多くの人に使われ、当たり前の技術として社会的に認知されており、「リアルな体験をする道具」となっています。しかし、もしタイムマシンに乗って江戸時代などに行き、電話を一般の人に体験してもらったら、昔の人々は恐怖におののくでしょう。
つまり、社会的にも技術的にも「この体験はリアルだ」と感じることが、リアルの自分の役に立つための条件になるわけです。VR技術は今後、技術的な発展の加速が見込まれ、社会的にも許容されていくことが予想されるので、リアルに役に立つことが容易になって行くと考えています。

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