【概要】
オープンサイエンスは科学のあり方そのものを変容させることを予見しており,学術雑誌の電子化にとどまらずICTを活用した様々な成果公開の試みなどがすでに取り組まれている。その際,オープンに公開される情報の質が保証されることで,安心して利活用が進み,オープンサイエンスも進展する。学術雑誌が電子化される前から質の保証の手段である査読(ピアレビュー)のあり方は常に議論されていたが,電子化とオープン化によって,オープンピアレビュー,軽量査読など質の保証についても様々な試みが生まれている。最近では,コンピューターサイエンス等の分野によっては,プレプリントに上げること自体が主な研究成果公開手段となりつつある中で,どのようにその成果を評価するかも喫緊の課題となっている。あるいは,英国の研究助成団体であるWellcome Trustが,査読つきのオープンな研究論文,データ出版プラットフォーム(Wellcome Open Research)を運営するようにもなっている。
このような状況下, 2017年度の第2回SPARC Japanセミナーではプレプリントサーバ・機関リポジトリの取組を議論する中で,質の担保が論点となり,議論を掘り下げる必要性を強く認識した。さらに,第3回ではサイエンスの成り立ちとピアレビューの始まりが語られ,コンテンツの質の担保は古今を問わない普遍的な課題であることを再確認した。 ICTの発展とオープン化が新たな研究環境を生み出している中,特定の研究者コミュニティ内のピアレビューを超えて, 分野間,あるいは,市民を含む誰もが科学研究に参加できる場において,質の保証を行う仕組みをどう開発していくかは今後の学術コミュニケーションを見通す上で非常に重要なポイントとなる。
そこで,本年度第2回のSPARC Japanセミナーでは,オープンサイエンス時代のクオリティコントロールの方向性とコンテンツの質の保証をテーマに,現状の具体的な試みについて最新の情報共有と議論を行う。
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