イベント / EVENT

平成30年度 市民講座 SINET特別セッション(2) リポート

スポーツパフォーマンスを科学的にサポート

「市民講座 SINET特別セッション」第2回/鹿屋体育大学の前田 明 教授が講義

 国立情報学研究所(NII)は2月12日、学術情報ネットワーク「SINET5」とモバイル通信を直結した新サービス「広域データ収集基盤」の活用に向けた最先端の研究を紹介する「市民講座 SINET特別セッション」の第2回を開催しました。

 今回は、鹿屋体育大学 学長補佐・スポーツパフォーマンス研究センター長の前田 明 教授に、「東京2020に向けた新たなスポーツパフォーマンス研究-トップアスリートのパフォーマンスを探る!-」と題して、お話しいただきました。

 講義に先立ち、NIIの佐藤一郎副所長が、「今回は、スポーツ分野におけるSINETの応用事例をご紹介します。これまでもスポーツにデータを活用する試みはありましたが、今は、リアルタイムにデータを収集して、リアルタイムに活用することにフェーズが移ってきています。そのためには、センシングだけでなく、データを分析するところまで高速に届けるネットワークが必要になります。SINETがスポーツ分野でも広く活用されることを期待しています」とあいさつし、SINETのサービスを活用した研究が期待できる事例として、鹿屋体育大学が実施している「スポーツパフォーマンス研究」を紹介しました。

 日本で唯一の4年制国立体育大学である鹿屋体育大学は、平成27年3月、アスリートの多様な動きをより実践に近い形で計測し、アスリートを科学的にサポートする「スポーツパフォーマンス研究センター」を設置しました。アスリートは測定されたデータをもとに自身の動きの問題点を確認し、パフォーマンスの改善、競技力の向上につなげることができます。現在、東京オリンピック・パラリンピックを目指す多くのアスリートがこのセンターの設備を活用し、前田教授らのサポートを受けています。 前田教授は、このセンターで実施している具体的な取り組みを紹介しました。

 例えば、陸上競技のトラックに50メートルにわたって「フォースプレート」(歩行や走行、跳躍などの動作をする際にかかる力量を測定する機器)を敷き詰めた走路では、スタートから加速してゴールする間の全てのキック力を1歩ずつ測定し、走行時の力量(鉛直方向・進行方向・左右方向)、ステップごとの接地位置、運動量等の算出を行うことができます。フォースプレートから得られたデータは即時にモニター可能なため、アスリートは、その場で自分の癖や弱点を知り、改善につなげることができます。

 また、赤外線を発する専用のカメラを複数台配置することで三次元空間を構築し、マーカーの三次元位置情報をデジタルデータとして取得するシステム「モーションキャプチャ」では、マーカーと呼ばれる反射素材を選手に装着し、マーカーの位置情報から選手の細かな動作の解析を行います。フォースプレートとの同時測定もできることから、スプリント動作をより詳細に測定することができます。

 前田教授は、「東京オリンピック・パラリンピック後もスポーツパフォーマンス研究を続け、オリンピアンだけでなく、日本のジュニア、一般の人にも普及する科学的エビデンスを提供していきたい。一人ひとりの個人差を大切にすること、データを示すことでその人が本当にがんばろうとする内発的動機付け促すことを大事にしてアスリートサポートをしていきたい」と話しました。

 また、講義の中で、0.1秒で6桁の数字がどのくらい見えるかという「瞬間視力」にチャレンジする場面があり、会場は大変盛り上がりを見せました。会場のお客様の中には、6桁の数字がすべて見えたという方もいらっしゃいました。前田教授は「瞬間的に多くのものを見るアスリートは、8桁まで数字を見ることができる」と話し、瞬間的に見るコツは「数字を左から読むのではなく、中心に視点を置いて周辺を見ること」と明かしました。

 参加した方からは、「スポーツにサイエンスが役立っていることがわかった」「選手一人ひとりに細やかなサポートをしていることに驚いた」などの感想が寄せられました。

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shimin 2018-report_sinet2 page3783

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