イベント / EVENT

平成24年度 第1回 Q&A

第1回 2012年6月7日(木)

先端研究のネットインフラと社会〜 科学者の輪を広げるSINETとは?〜
漆谷 重雄 (国立情報学研究所 アーキテクチャ科学研究系 教授)

講演当日に頂いたご質問への回答(全21件)

※回答が可能な質問のみ掲載しています。

海外でSINETのようなネットワークはどのようなものがありますか?
そのNETとの相互接続の予定はありますか?

米国にはInternet2 network、欧州にはGÉANT、アジアにはTEIN4やAPANといったネットワークがあります。SINETは、海外回線(ロサンゼルス回線、ニューヨーク回線、シンガポール回線)を介して、海外のネットワークと相互接続をしています。

日本のSINETは、国際的に見てどの位のレベルにありますか?
米国、中国などと比較して。

多様なサービス(インターネット、広域Ethernet、各種VPN、高品質データ転送、オンデマンド専用線など)の提供という点では、世界でトップと言えると思います。ただ、回線の速度という点では、SINETは最速40Gbpsであるのに対して、米国、欧州、中国(予定)などでは100Gbpsになってきているため、更なる強化が必要と考えています。

SINETの建設・運用・保守はどこで行っているのでしょうか?

基本設計はNIIで行い、詳細設計と構築・保守は各調達(データセンタ、アクセス回線、バックボーン回線、米国回線、アジア回線、ルータ・L2多重装置、L1スイッチなどに分けて調達)で落札した複数の会社とNIIが協力して行い、運用はNIIが実施し、24時間365日の監視は別調達により選定された会社に委託しています。

スパコンへのシングルサインオンの認証機関は国内に限られるのか、選定の基準は?
(心が狭いかもしれないが、京のような素晴らしい施設を海外の機関も使えてしまうのか?)

2012年9月末のHPCI運用開始時点では利用は国内に限られますが、海外からの利用については検討中です。技術的には海外からも利用できるように認証基盤を設計しています。

先日、NHKスペシャルでKコンピューターを使用して、バーチャル心臓をコンピュータ上につくりだす研究をしていると聞きました。
東京大学が研究をしているそうですが、これにSINETは使われているのですか?

現在Kコンピュータを使うためには神戸に出向く必要がありますが、HPCIの運用開始後(2012年9月末)にはSINET経由で使用することが可能になります。

「L1スイッチ」って一般用語ですか?
「L1」で「スイッチング」ってものすごく違和感がありマス。

聞き慣れない用語かもしれませんが、割とよく使用されます。L1用の装置はこれまで静的に設定するのが基本でしたが、SINETでは頻繁に動的に設定・変更するため、L1スイッチがしっくりくると思います。

端末のコンピューターのURをDNSに送るのはISPでしょうか?

DNSの仕組みは図を用いての説明が理解しやすいと思います。例えば、以下のサイトをご覧ください。
http://www.tatsuyababa.com/NW-DNS/

自宅や移動中の研究者がSINETを利用することは可能ですか?

自宅や移動中の研究者のからのSINETの利用は、所属する組織のネットワークに商用ネットワーク経由などなんらかの手段で接続して頂く形であれば可能です。

SINETのセキュリティー対策は、どの程度の強度のものなのでしょうか?

大学毎にセキュリティーポリシーが異なり、SINETは大学等の共用バックボーンネットワークですので、セキュリティ対策は基本的に大学側で実施しています。ただし、大学からの依頼により、大学と連携してSINET側でも攻撃対策を実施する場合があります。また、ネットワークのルータ等が攻撃の対象になることは少ないと思いますが、万全を期して対策は打っています。

SINETが目指す「高信頼」について、講義では災害等に備える話がメインと感じたのですが、NETのNEWSでよく耳にする不正アクセス等のサイバーテロ?などのリスクはあるのでしょうか?
 (まと外れな質問でしたらスミマセン。)

質問9の回答をご参照ください。

外部からサイバー攻撃を受けた事は、あるのでしょうか?また、その対策はされているのでしょうか。

ネットワーク側がサイバー攻撃を受けたことはありません。対策に関しては、質問9の回答をご覧ください。

一般のネットワークサービスでは、多くのアメリカ企業がグローバルスタンダードの地位を獲得してきていますが、学術用ネットワークサービスについては、将来的にNIIのサービスが、アメリカの学術用ネットワークのサービスに取って代わられる心配は無いのでしょうか?

アメリカ側が常にイニシアティブをとりたがっているのは確かです。ただ、SINETでは、幸いにも研究者の皆さんのネットワークの使い方が高度ですので、要望を十分に把握したうえで新しいサービスを開発・導入することで、アメリカに先駆けたサービス(オンデマンド専用線など)を提供できています。

各大学へ、課金はしているのでしょうか?
課金している場合、使用量・時間・スピードで課金しているのでしょうか?

各大学とSINETの費用分担は、アクセス回線側が大学、バックボーン側がSINETとしています。使用量・時間・スピードで課金はしておりません。

遠隔ドリルに関連して・・・これをオペに応用するということは可能なのか?
やはり血管等を縫う場合の質感をいったものの感じ方は難しい?

オペに求められる通信品質を十分に把握した上でないと正確な回答はできません。ただ、遠隔ドリルで用いたパケットレベルでの品質制御よりは、オンデマンド専用線であれば可能性はあると考えます。オンデマンド専用線では、画像の乱れをゼロ、操作までの遅延時間を一定にできますので、繊細な作業を遠隔から実施するのに適すると考えます。

SINET5で一番重視する所は?

一つに絞ることは難しいです。多様なサービスを提供し超高速・低遅延・高信頼なネットワークであることは必須と思います。これに加えて、新しい技術(クラウド技術、ビッグデータ分析技術、SDN技術)の発展を受けてどのような魅力的なサービスが提供できるか、そこを重点的に検討していきたいと考えています。

・(本題から外れますが)IPv6がいろいろ問題になっているようですが、我が国の現況について。
・インターネットでIPv4からIPv6になると新聞(確か産経の6/6付)載っていましたが世の中がどうなっていくのでしょうか?

IPv6対応に関してはISP間で温度差があります。SINETでは、早くから全国レベルでIPv6を提供できる基盤を整備しています。IPv6の本格展開に向けては各大学と連携して進めていきたいと考えています。

今日のテーマとは直接関係ありませんが、講師が関心をお持ちになっている「シニヤは若手に何を残すべきか」について、「何」が大切か、ご本人のご考えをお聞きしたい。

1年の過ぎる速さが加速度的になってきていて、50歳を超えた現在、やや焦りに似た感覚があります。卑近な例でいえば、大規模なネットワークの構築は、ある程度のノウハウや経験がないとつらいと思いますので、早めに若手に伝授したいと考えています。

クラウドって何?

クラウド(コンピューティング)とは、大雑把に言えば、ネットワークを介してコンピュータを使用する形態のことです。ネットワークが高速になれば、場所が離れていてもストレスなくコンピュータを使用できるようになり、ネットワークを介したコンピュータリソースの分散化も図ることが可能になります。コンピュータ、ストレージ、上位アプリケーションなど、色々なサービスをクラウド形式で提供することが可能になっています。

予算が限られているのは事業仕分けによる影響でしょうか?

国家の財政が全体的に厳しいためです。日本全国の研究・教育を支える学術基盤としての重要性は認識して頂いているようです。

私は一つのハードにマルチな機能を持たせるのは反対です。例えば、コピー、FAX、スキャナの複合機でどれか一つの機能が壊れてしまうと困ったことになってしまうのでは?

色々な考えがあることは理解しています。ただ、多様なサービスを全て別のハードで実現する場合、ネットワークコストが膨大になってしまうという問題があります。SINETでは、一つの物理ネットワークに複数の論理ネットワークを形成しつつも、サービス毎に高信頼化機能を実装し、かつ各高信頼化機能間の干渉を排除して、ネットワーク全体としての高信頼化を図っています。

shimin 2012-qa_1 page2533

注目コンテンツ / SPECIAL