イベント / EVENT

平成30年度 第4回 リポート

未来の新しい無線通信技術を考える

 国立情報学研究所は10月24日、市民講座「情報学最前線」第4回を開催しました。今回は、アーキテクチャ科学研究系 金子めぐみ准教授が、「将来の無線アクセスネットワーク -今のままでは周波数が足りない!-」と題して講義しました。

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 スマートフォンの普及に伴い、移動体通信システムの加入者は急増し、全世界で45億人を超えています。モノがインターネットに接続して制御などを行うIoT(Internet of Things)や機械同士がネットワークでつながるM2M(Machine to Machine)のデバイスも、2020 年には500 億個に達することが予測されており、こうした無線によるトラフィック(データ通信量)が爆発的に増加することは確実です。

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 その一方で、使用可能な周波数はひっ迫しており既に限界を迎えています。金子准教授は、「有限で貴重な無線資源の中で、膨大なデータ量に対し、高伝送速度、低遅延、省電力など複数の相反する要求を高レベルで達成することが次世代情報通信システムの重要な課題です」と話し、この問題の解決に向けて、無線資源の効率的な割り当て方法や、ユーザー同士の信号干渉や衝突を回避する無線アクセス制御の研究に取り組んでいることを紹介しました。

 無線資源を割り当てる際に、システム全体で伝送速度を最大にできても、一部のユーザーの通信品質が悪ければ公平とは言えません。個々のユーザーの要求を可能な限り達成しつつ、システム全体での周波数利用効率を高め、かつ高品質な通信を実現するという複数の指標を高次元で同時に達成できるようなバランスがとれた無線資源割り当て方法の設計が重要であると述べました。

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 2020 年を目標に、5G(第5世代移動体通信システム)の研究開発が世界中で進んでいます。その新しいネットワークアーキテクチャが、高密度スモールセルネットワークやクラウド無線アクセスネットワーク(CRAN)などです。また、5Gに向けて、無線資源の基本要素を複数ユーザーが同時に利用できる非直交多元接続「NOMA」などさまざまな新しい技術開発が進んでいます。

 金子准教授は、広い通信エリアを細分化して高密度にカバーし、それらをクラウドで連携させてコントロールしようとするCRANのための無線資源割り当て方法や、NOMAを活用した非直交無線資源割り当て方法を考案したことを紹介。さらに、CRANなどのエネルギー利用効率の最適化や、ダイナミックに変動する干渉環境の学習・予測を活用した無線資源割り当て方法の研究にも取り組んでいることを紹介しました。

pic_shimin_report_h30_4-4.jpg 参加した方からは、「5Gに向けて新たな無線通信技術が必要であることがわかった」「公平で高い品質の通信の実現がなければ、私たちの日常の安心・安全が守られないだろうと思った」などのご意見をいただきました。

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