研究 / Research

アーキテクチャ科学研究系

竹房 あつ子
TAKEFUSA Atsuko
アーキテクチャ科学研究系 教授
学位:博士(理学)
専門分野:計算機アーキテクチャ
研究内容:https://researchmap.jp/takefusa/

研究紹介

インタークラウド技術の研究開発

 クラウドコンピューティング(クラウド)は、コンピューター個々の計算能力や記憶容量を資源(リソース)と考え、ネットワークを通じてそれらのリソースを必要に応じて利用する計算技術です。クラウドを積極的に利用すれば、設備投資を抑えることができるので、大学などでの事務環境を構築するコストを減らすことができますし、コンピューターを使う演習など一時的にリソースを必要とする場合にも柔軟に対応できます。また、将来プラットフォーム(ハードウェア)のトレンドに対しても迅速に対応できます。

クラウドをつなげるインタークラウド

 これまで、グリッドやクラウドのリソースマネジメントに関する研究を行ってきました。ネットワークを動的に構築し、いろいろな研究機関のリソースを活用して、解析や計算ができるようにするための技術の開発を行ってきました。  現在は、手元の計算機環境とクラウド、あるいはクラウド同士をつなげて新しい何かをするための、基盤技術の開発に取り組んでいます。一言で言えば、インタークラウドと呼ばれる技術の研究開発です。ネットワークを相互利用するのがインターネットなら、クラウド同士をつなぎ、より有益な使い方ができるようにするのがインタークラウドです。インタークラウドでは、クラウド間のネットワークの安全性や性能が課題となっていましたが、大学・研究機関や複数のパブリッククラウドと繋がった学術情報ネットワーク「SINET 5」の運用開始により、高性能なインタークラウド環境を構築するための環境も整ってきました。

インタークラウドのメリットと将来

 インタークラウドのメリットはいくつかあります。そのひとつが、クラウドが大規模な自然災害で停止した場合に、離れたところにある別のクラウド(データセンター)で処理を代替できるようにするディザスタリカバリです。データの分散・重複バックアップも可能です。さらに、大学などの台数が限られるプライベートクラウドでリソースが足りなくなったときに、サービス品質を維持するためにパブリッククラウドのリソースを使うスケールアウトなどもあります。

 クラウド系の大手企業では自社のシステムで囲い込む流れもあるのですが、アカデミックな世界ではインタークラウドが非常に重要な技術なのです。2013年のノーベル賞「ヒッグス粒子」の発見には、CERN(欧州原子核研究機構)・LHC(大型ハドロン衝突型加速器)実験での膨大なデータ処理が貢献しています。このようなビッグサイエンスでは、世界中の研究機関が協力し、即座にデータを共有して処理する仕組みが必要になります。

インタークラウド普及のために

 今後もインフラネットワークの帯域は増加していきますし、短期的には東京オリンピックもあるので、より臨場感を高めるようなアプリケーションも多数登場するでしょう。それらの処理はクラウドで行うため、自然な流れとして扱うデータも増えます。そうなると複数のクラウドとその間のネットワークで、データやリソースをきちんと管理する技術がますます重要になってきます。それらを効率よく利用するために、取り組むべき課題はたくさん出てくると思います。インタークラウド環境を意識することなく使えるようにするための基盤技術を開発して、やりたいことが簡単にできる環境を提供したいと思っています。

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