研究シーズ2021情報基盤科学

安全かつ効率的にデータを収集・蓄積・解析
データ駆動型の研究開発促進を支援する

竹房 あつ子アーキテクチャ科学研究系 教授

研究分野Internet of Things(IoT)/クラウド/サイバーフィジカルシステム

安全かつ効率的なIoTデータの収集・蓄積・解析を支援するソフトウェアSINETStreamの開発を進めています。各分野の研究者と協力してIoTシステムに必要な機能の開発、提供を行うとともに、IoT研究開発を支援する活動も進めています。

研究背景・目的

生産性の向上や社会システムの効率化、新たな技術やサービスの創出を行う超スマート社会Society 5.0の実現に向けて、IoTを活用して各種センサーデータの高度な解析を行うデータ駆動型研究開発の必要性が高まっています。NIIでは、安全なIoTシステムの構築を支援するため、大学やクラウドの計算機からセンサー端末が接続されたモバイル環境まで、仮想的な専用回線(VPN)を用いて閉域網を構築する実証実験環境、「SINET広域データ収集基盤」(通称「モバイルSINET」)を運用しています。しかし効率のよいIoTシステムを構築するのは非常に困難で、特に医療情報のような秘匿情報を扱う場合には、VPNだけでは安全性が担保できません。私たちは、安全かつ効率的なIoTデータの収集・蓄積・解析を支援するソフトウェアSINETStreamを開発しています。

研究内容

IoTシステムの構築を容易にするために、SINETStreamでは簡易なAPIと安全かつ効率のよいシステム構築に必要な機能を提供しています。IoTシステムは、大量のセンサーデータを確実に収集する仕組みであるメッセージブローカーを利用しますが、既存のブローカーソフトウェアやクラウドIoTサービスは性能特性や運用コストが異なるため、初期段階で適切なブローカーを選択するのは困難です。SINETStreamのAPIを利用すれば、開発するプログラムを改変することなくさまざまなブローカーの利用が可能です。また、センサー端末の認証・認可、データの暗号化、性能チューニング支援機能も提供し、安全かつ効率的なシステムの構築を支援します。各分野の研究者と協力してIoTシステムに必要な機能の開発、提供を行うとともに、モバイルSINETでのSINETStreamを用いたシステム構築事例を広める活動も進めています。

21_takefusa_image1.png

図1)SINET広域データ収集基盤(通称「モバイルSINET」)

産業応用の可能性

SINETStreamはオープンソースソフトウェアであり、商用インターネット環境でどなたでも利用することができます。VPNだけでは情報漏洩やサイバー攻撃などのリスクを回避するには不十分であり、SINETStreamで安全なIoTシステムの構築を支援します。また、今後5G/6G技術により、性能バランスやサービス需要が大幅に変わることを考慮すると、SINETStreamのプログラム可搬性や性能チューニング支援機能も開発コストの削減に役立ちます。

21_takefusa_image2.png

図2)SINETStreamを用いたオンラインビデオ解析実験 (参考)YOLO v3: https://pjreddie.com/darknet/yolo/, OpenPose: https://github.com/CMU-Perceptual-Computing-Lab/openpose

研究者の発明

❖SINETStreamはオープンソースソフトウェアとして公開 https://www.sinetstream.net/
❖"SINET広域データ収集基盤を用いたオンラインビデオ処理実証実験", 竹房, 孫, 藤原, 長久, 吉田, 政谷, 合田, 情報処理学会論文誌デジタルプラクティス, 1(1), 45 - 57, 2020年10月. http://id.nii.ac.jp/1001/00207284/

関連リンク

竹房 あつ子 - アーキテクチャ科学研究系 - 研究者紹介

Recommend

さらにみる