研究 / Research

アーキテクチャ科学研究系

福田 健介
FUKUDA Kensuke
アーキテクチャ科学研究系 准教授
学位:1999年、博士(工学)、慶應義塾大学
専門分野:ネットワークアーキテクチャ
研究内容:http://researchmap.jp/kensuke/
インターネットバックボーントラフィックにおける異常検出

サイエンスライターによる研究紹介

インターネットが見せる不思議な振る舞いを解き明かす

インターネットには、パソコンをはじめ、数えきれないほど多くの情報処理装置がつなげられています。しかし、ネット上では、互いに情報をやりとりするための簡単なルールが決められているだけです。個々の装置は、そのルールに従った通信を、好きなときに、好きな相手と、好きなだけ、行います。インターネット全体を誰かが直接制御する仕組みはありません。1つ1つが自己の意思に従って勝手に通信し合う、そういったものが集まっただけの、自律分散型のシステムなのです。ところが、個々の装置の勝手な動きが集まると、インターネット全体では、とても面白い振る舞いが見られることがわかってきました。私は、その不思議さに魅せられて、研究の道へ進みました。

通信量の揺らぎの法則性

その一例が、1/f の揺らぎです。インターネット全体を流れる通信の量を測ると、増えたり減ったり揺らぐように変化しています。この揺らぎ方が、1/f という法則に従っているわけです。実はこの揺らぎは、自然界をはじめ、心臓の鼓動や脳波など、生体にも見られます。勝手気ままに通信しているはずの装置が集合すると、全体では生体と似た振る舞いを示す。なんと不思議なことでしょうか。インターネットで生じる揺らぎの仕組みを調べることが、私の研究テーマの1つなのです。
揺らぎの鍵を握るのは、通信のために決められたルールです。このルールは、「情報を送ったとき、ある時間、相手から返事がない場合は再送する」といった単純なものばかりです。通信しようとする情報の入力がランダムでも、これらのルールを経て互いにやりとりを行うと、全体ではランダムでない揺らぎが生じるのです。私は、こういったルールのどの部分が揺らぎに寄与しているのか、それを明らかにしようとしています。

インターネットの制御も可能に

この研究の第一の面白さは、局所的に定められたルールが、インターネット全体の振る舞いを決めることになるという、思いもよらない点です。それだけではありません。第二に、揺らぎの仕組みを理解することで、今度は局所のルールを決め直し、全体を間接的に制御することも可能になることです。これは生体ではなかなか実現できない、インターネットならではの面白さです。
何が起きているのか良くわからなかったインターネットの世界が、こういった研究によって少しずつ解明され、制御までできるようになることに、大変やりがいを感じます。この研究が、やがては、インターネットに投影される人間自身の動きや有様まで明らかにす
るようになれば、さらに面白い世界が拓ける、と期待しています。

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取材・構成 中村 理

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