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時代を躍進するNII研究者による研究シーズ集
 

情報学プリンシプル研究系

 

情報学に関する新しい原理、理論などを追究するとともに、新領域の開拓を目指す研究を行なっています。

数理情報

 

高度な問題を一般のパソコンでも解けるようにする
宇野 毅明

コンピュータに計算させるには、計算の仕方の設計図、つまりアルゴリズムが不可欠です。高性能なコンピュータを使わなければ解けないような問題を、アルゴリズムを書き換えることで、一般に普及しているコンピュータでも十分解けるようにする、それが私の夢です。アルゴリズムの研究には、理論を極める方向と、現実の応用を広げる方向の 2 つがあります。私が考えているのは、理論的な研究の成果を十分理解しながら、現実の問題をうまく解く方法を見つけ出すことです。

グラフ理論で最適な計算法を考える
河原林 健一

私が得意としているのは離散数学、さらにその中でも「グラフ理論」と「理論計算機科学」といった領域の研究をしています。グラフ理論は、点と点同士を結ぶ線からなるグラフに関する研究で、実社会とは関わりがなさそうに思われがちですが、携帯電話の周波数割り当てや、カーナビのアルゴリズムの最適化など、身近なところに応用されています。理論計算機科学は、例えばチューリングマシンのように理論上の計算機を想定して、さまざまな計算(アルゴリズム)の可能性を考えるものです。 「離散グラフ理論」という分野の研究者は日本では少ないのですが、自分としては世界に引けを取らない研究をしているつもりです。

「世界を動かしているルール」を求めて
小林 亮太

私がやっている研究の中心は「時系列データマイニング」、簡単に言えば、ビッグデータを解析して、そこに潜んでいるルールを発見することです。 ビッグデータの特徴として、「データ量が多い」ということと「見ることができない (グラフを描くことができない)」ということがあります。私はこれまでの研究で、時間的に変化する何かについてのデータを解析することで、その背後で何が起こっているのか、全体はどういうルールによって動いているのかを明らかにしてきました。対象としてきたのは主に脳、特に神経細胞・神経回路の情報処理の仕組みです。これからは経済現象や社会現象も対象に入れたいと考えています。

アルゴリズムの構造を数学の目で読み解く
速水 謙

ある問題をコンピュータで数値的に解くためには、計算の手順を示した「アルゴリズム」が必要です。私は、アルゴリズムの構造や性質を数学的にきっちり解明しようと研究しています。具体的に言えば、そのアルゴリズムが出す答は本当の解なのか、途中で破綻することはないのか、どのくらい速く解に収束するのか、より良いアルゴリズムはないのか、そういった問題に取り組んでいます。

ビッグデータ時代に不可欠な高速アルゴリズムを考案
吉田 悠一

インターネットのWebやゲノムなど、大規模なデータを扱うことが一般的となった今日、膨大な情報量を実用的な速度で解析できる計算の手法(アルゴリズム)の開発が求められています。そこで私は、少しの誤差を許す代わりに、データの大きさにかかわらず一定の時間で問題を解くことが出来る「定数時間アルゴリズム」の研究を進めています。また世の中の大規模なデータはランダムではなく人為的なものです。そこでデータがどう作られるのかというモデルを作ることで、より実用的なアルゴリズムの開発を目指しています。更に、そのモデルから予想を立て、実験により確認し、モデルを修正するという、これまでのコンピューターサイエンスには無かった研究ループを確立しようとしています。

 

数理論理

 

形式言語から人間の言語にせまる
金沢 誠

文字列集合の形式的性質を研究する数学の分野が形式言語理論です。そんな研究が、人間の言語の科学的理解に役立つことがあるのでしょうか?最近の私の研究では、現実の人間の言語ではあり得ない「語順にまったく制約のない言語」を表現する「MIX」という単純な文字列集合の持つ不思議な性質を解き明かしました。このような研究により、人間の言語の文法が脳内でどのような形式で表現されているのかという問題に対して有益な洞察を与えることができるのです。形式言語理論、論理学などの形式的手法の研究をとおして言語の科学の発展に寄与することを目指しています。

型理論の真理を極めてプログラムに反映させる
龍田 真

多くのプログラミング言語では、データや関数がさまざまな「型」を持っています。このような型の理論を抽象化して、数理論理学の「型理論」を用いて分析すると、自動的に型を推論できるようになります。推論が失敗すればエラーになるので、誤った型を用いることによるバグが回避できるようにもなります。私は「型理論」を研究しており、プログラミング言語と計算の中にある数学的真実についての理解を深めることを、第一の目的としています。一方で型理論を究めれば、それを基盤とするプログラミング言語の設計や、誤りのないプログラミングを実現するという実用的な貢献ができるようになります。

 

量子情報

 

量子コンピュータ実現に向けて新たな原理を解明
宇都宮 聖子

1980年代に物理学者、ファインマンが発想した量子計算は、量子力学を基礎にしており、従来のコンピュータの「0」「1」という 2 つの状態に加えて、両者を「重ね合わせた状態」を無数に用いることで超並列処理を可能にしようというものです。量子コンピューターは飛躍的に計算能力を向上させられる次世代の"夢のコンピュータ"ですが、その実現には高い技術的なハードルが横たわります。このため、まず、物質の電子の状態を量子力学的にシミュレートする手法について、実験によって物性を解明しながら、理論的なアルゴリズムの考察を組み合わせたアプローチを試みています。

新しいアイデアで、量子コンピュータの可能性を開拓
根本 香絵

20世紀を通じ、ニュートン以来の物理学を塗り替えてきた量子力学。今世紀に入って量子の世界はいっそう解明が進み、これを活用した情報処理や通信などの新しい可能性を拓く「量子情報科学」が大きな発展をみせています。量子コンピュータ研究は、この量子情報科学の課題の中でも最も難易度が高く、かつ長期的な課題だと言えるでしょう。量子コンピュータは、現在全世界にあるすべてのコンピュータを、指に載る1枚のチップに収めるほどの潜在的パワーを持つと考えられています。では、どうしたら量子コンピュータが実現できるのでしょうか。私は、理論物理学の立場から、その理論的なアイデアを提案するという研究を行っています。

「量子」と「情報」の深いレベルでの融合が始まる
松本 啓史

私は量子情報のさまざまな側面を研究していますが、それを紹介するにあたってキーワードをあげるとすれば、「エンタングルメント」に集約されると思います。量子情報の分野がほかの境界分野に比べてより本質的に面白いと思うのは、概念の融合がより深いレベルで進んでいるからです。たとえば、量子エンタングルメントの理論は通信の理論構成を物理に持ち込んだものですが、よくみると基本的な思想が少し物理流にアレンジされています。そこで、そのアレンジされた部分を元の通信理論に戻して考えると、通常の通信の問題について新たな視点が現れます。量子と情報、ひいては物理学と情報科学が深いレベルで融合することによって、新しい概念の創出がいま始まろうとしているのです。

 

知能情報

 

学習をコンピュータで実現する
市瀬 龍太郎

人間は「学習」という行為をごく自然に行っています。学習とは、あることをするとき、その事象から知識を見つけ、ときにはそうした個々の知識をまとめ、それを利用することで、次はもっとうまくできるようにすることです。けれども、この知的な活動をコンピュータにやらせるのは実は大変です。そこで私は、それを可能にする「人工知能」の技術開発に取り組んでいます。学習をコンピュータに実現させる。それがこの研究の目標であり、最も面白いところです。

触れる、見る、感じる経験がロボットを育てる
稲邑 哲也

「例の分厚い本を取ってくれない」「はい。この本のことでしょうか?」と言いながらロボットが本を持ってきてくれる。私の研究はこんな世界を目指しています。どうすれば、ロボットにも"自ら状況を判断する"という柔軟性が身につくのでしょうか。大事なのは「身体性」と「対話」だと私は思っています。私はロボットに障害物を避けながら見知らぬ建物の中を移動したり、ゴミの分別の仕方を教えたりと、いろいろな経験を積ませています。あなたの隣でロボットがなんの違和感もなく働くようになるのにはもう少し時間がかかりそうですが、その日に向かってロボットの頭脳を育てる試みはこうして始まっているのです。

コンピュータによる科学知識の発見に向けて
井上 克巳

人工知能研究は、人間のさまざまな能力をコンピュータ上に実現してきました。まだ十分に実現できていない人間の能力に"発見する"、"発明する"という行為があります。「発見・発明」とは、今まで誰も知らなかった新しい理論を作る創造的な行為ですが、これまでに蓄積された情報・知識を利用するとともに、人間の発見能力に相当する部分を組み込むことで、コンピュータにもできると思っています。

混ざった音の中から聞きたい音を取り出す
小野 順貴

実環境には様々な音が存在し、通常それらは混ざり合って聞こえてきます。例えば、パソコンの音声認識機能を使おうと思っても、近くにあるテレビの音が一緒に入力されてしまうかもしれません。演奏会で、娘のピアノ演奏を録音しようと思っても、隣の席の人のうるさいくしゃみが一緒に録音されてしまうかもしれません。混ざった音の中から特定の音だけを認識したり、それらを自由に編集、加工したりすることを目的に、複数のマイクロフォンを用いて、混ざった音を個々の音に高速に分離する技術を研究しています。

人間の推論をコンピュータで実現したい
佐藤 健

ロボットは夢の技術として研究されてきましたが、今では身近で使える可能性が見えてきました。被災地などの危険な場所で人の代わりに人命救助にあたったり、日常生活でのさまざまなサポートを行ったり、あるいは、情報処理能力のきわめて高い優秀な秘書としてビジネスをサポートしてくれるかも知れません。このような機能を実現するには、ロボット自身がその場の状況を判断して的確に行動する必要があります。そのための重要な技術の1つが「人工知能」であり、私が長年取り組んでいる研究テーマです。

人間の創造性を刺激するコンピュータ
武田 英明

人工知能研究には、"コンピュータで知能を作る"という立場と、"人間の知能の手助けをするコンピュータを作る"という立場の2通りがあります。私は後者の立場で研究しており、いつしか人間の創造的活動のヒントになるようなWebの使い方を提案したいと思っています。研究を進めるにつれて、"知識の集合体"としてのWebよりも、ダイナミックなコミュニケーションの場としての Web に興味が移り、今は、それをどう人間活動の役に立てるか、"人間の創造的活動のヒントになるWeb"を研究しています。