研究 / Research

SINETのさらなる進化へ 〜 ニーズ把握し効果的なシステム実装を

「これからは、南の島のリゾートにいながら仕事ができる時代になるかもしれない」。そんな理想のライフスタイルを思い描き、ネットワーク技術の研究を志して20年余。NIIで取り組んでいるのは、大学や研究機関を結ぶ学術情報ネットワーク「SINET」だ。

2016年4月に運用を開始したSINET5の導入時には、加入機関の回線の移行を担当した。移行作業は、全国50カ所の接続拠点にある多数の装置間の配線をつなぎ替える「物理変更」と、中央からの遠隔操作で各機関のパラメータを設定する「論理変更」からなり、両者の整合性がとれて初めて完了する。その切り替え方法や手順をきめ細かく検討することで、2カ月間で約850機関すべての移行を実現。通信不可時間はわずか数分にとどめることができた。

現在は、SINETのさらなる進化に向けて、汎用サーバー上でネットワーク機器をソフトウェアとして動かすNFV(Network Functions Virtualization )の技術に取り組んでいる。「SINETはユーザーが大学や研究機関なので、膨大な実験データをやりとりするなど特殊な使われ方をする。ニーズにマッチした効果的なシステムを実装できるのは、研究と事業の両方を手がけるNIIならでは」

高校時代には、数学や物理の論理に惹かれた。自然現象が数式で表せることに美しさを感じたからだ。大学で物理を学び、大学院修士課程では応用物理学を専攻。だが、ここで分子と原子の反応に関する実証研究において実験装置の設計や改造を進めるうちに、ものづくりの面白さに気づく。

「新しい技術を役立つ形で具現化する仕事がしたい」そう考えて、NTTに就職。研究所で高速大容量の通信装置の設計や、通信の信頼性を向上させるための研究開発に従事し、事業部では高速アクセスや大容量化のニーズに応える次世代ネットワークをつくり上げてきた。その経験と実績を今の研究に、いかんなく発揮している。

子どもの頃から大の工作好き。週末は、リフォームや野菜づくりに汗を流す。「何でも買える時代だが、どうすれば自分で作れるか考えて、やってみる。そのプロセスが面白い」技術者として、手を動かすことで見えてくるものを大切したいと考えている。

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栗本 崇
KURIMOTO Takashi

アーキテクチャ科学研究系 准教授

博士(工学)/東京工業大学大学院修士課程修了。慶応大学博士課程単位取得退学/1994年NTTネットワークサービスシステム研究所、2005年NTT東日本設備部担当課長などを経て、2015年より現職。

これまで、ネットワークを構成するスイッチングシステムの高速化・大容量化、マルチレイヤネットワークアーキテクチャ等の研究開発に従事。2005年~2009年の間は、NTT東日本で次世代ネットワーク(NGN)の商用化導入を担当。

現在は、ネットワークを柔軟に構成可能とするSDN/ネットワーク仮想化技術研究および学術情報ネットワークSINETなどを担当している。電子情報通信学会・IEEE会員。

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