研究 / Research

人間とAI それぞれの得意分野生かし 〜 協力して問題解決する社会へ

小学校ではプラモデル作成に没頭し、中学・高校時代はSFドラマ「宇宙大作戦」に登場する宇宙船エンタープライズ号の副長でエンジニアでもあるミスター・スポックに憧れた。ラジオ製作や電気回路に熱中し、当然のように大学は制御工学科へ。絵に描いたような理系人間だ。

大学院で当時最先端のAI技術「エキスパートシステム」に出会い、推論ルールの自動学習を研究した。「学習により処理が高速化していく様子はまるでスポーツ選手を育成しているよう。とてもワクワクした」と当時を振り返る。現在は人工知能学会の会長を務めるが、AI研究に邁進する原動力となった高揚感は今でも持続している。

研究テーマは「AIと人間の協調」。「AIは完全ではない。試行錯誤を人間が管理し、時に介入して修正するのが大事。人間とAIがそれぞれの得意領域で役割分担すれば性能が上がり、コストも低減する」。だがどうすればうまく協調できるのだろう。その方法を「HAI:ヒューマンエージェントインタラクション」と「IIS:知的インタラクティブシステム」の2面で追求しているところだ。

HAIは、人間がロボットやCGキャラクターなどの擬人化エージェントと対するときに感じる違和感の本質を実験的検証で明らかにし、普遍的に利用できるアルゴリズムや設計手法につなげる研究だ。例えば機械の不調を人間に直感的に理解させるには、可愛い犬ロボットの元気のない仕草より、メカニカルなロボットのビープ音の方が優れていることが分かった。また実写やアニメなどの多数の擬人化エージェントを作成し、web画面で商品のレコメンド(推薦)を行ったところ、エージェントの「知性」と「親近感」イメージの度合いにより購買率が大きく変化することなども検証している。

IISは、画像などの情報を自動的にカテゴリー分けするシステムで生じる誤分類を、人間が適切に介入して正しく分類できるようにする、まさにAIと人間の協調方法の研究だ。AIが導き出した結果に人間がいかに手を加えれば分類精度を向上できるのか、アルゴリズムとインタラクションデザインを含む幅広いアプローチで解明しようとしている。目指すのは「人間にやさしい」ばかりでなく「人間が適応しやすい」知的システムだ。「NIIには存分に基礎研究ができる環境があり、外部との共同研究も盛ん。この環境で、人間が適応しやすい知的システム実現を目標に、要素技術を統合し、実応用を目指していく」

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山田 誠二
YAMADA Seiji

コンテンツ科学研究系 教授

工学博士/大阪大学大学院博士課程修了/同大学助手、講師、東京工業大学大学助教授を経て、2002年より現職。

専門は人工知能(AI)、webインテリジェンス。ここ10年の研究テーマは「人間と協調する人工知能」。ユーザーと長く付き合っていくことができるパートナーとしてのエージェント、ロボット、そして人間の能力を最大限に活かすインタラクティブシステムの実現を最終ターゲットとし、ヒューマンエージェントインタラクション、知的インタラクティブシステムを中心に様々な研究プロジェクトを推進中。

2016年6月より、人工知能学会会長。

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