研究 / Research

宇宙線研究で培ったデータ解析スキルで 〜 研究活動の発展や効率化に貢献

優れた成果を出した研究と支援・資金投入の関係から成果の原点を探ったり、学術研究のプレスリリースと新聞掲載との相関から掲載される要因を分析したり。「これらの研究を通して、研究への効果的な投資方法やタイミング、あるいは新聞掲載の要因と効果的な発信方法などを見出そうとしている」

もともと宇宙線物理学が専門で、長く宇宙線の観測実験を行っていた。実は現在もその研究を続け、近年は太陽の磁場構造の解明を進めつつある。宇宙線と学術関連のデータ分析との間には、一見、何の関係もないように見えるが――。

「宇宙線研究の経験で得た膨大なデータを統計的に処理して分析するスキルは、文献の科学的計量に活かすことができる。宇宙線のエネルギー分布も文献の出現頻度分布もよく似ているし、もし大きく分布が変わっているところがあれば、そこには別の要因があるという点も共通している」。その要因とは何なのか。そこにある「何か」を見出し、背景を解き明かしたい。その根源的な欲求は、宇宙線研究も学術関連のデータ分析も違いはない。

学術研究のプレスリリースと新聞掲載についての研究を始めたのは、世界的に高い権威を有する学術雑誌に掲載されたほどの物理学の成果が、一般の新聞には全く掲載されなかったことがきっかけだった。ここでも「なぜ?」「その要因は?」という純粋な疑問が研究の出発点になった。

その好奇心、探究心の原点は生まれ育った和歌山にある。岩石や鉱物がごろごろしている鉱山や、満点の星空が身近にあった。長じて天文好きの大学生となり、星雲や銀河の写真を撮っては、その構造に思いをめぐらせた。ごく自然に研究者を志し、その自然な流れの中にNIIでの研究生活もある。「統計で重要なのは、きちんとしたデータがあること。生データにはノイズが多く、きれいなデータを作る作業自体が難しいのですが、NIIには信頼できるデータが大量にあるのがうれしい」

研究動向等の研究は、モノの開発などとは異なり、直接、一般社会の役に立つわけではない。しかし、「研究成果を広く効果的に知ってもらう方法を探ることで、研究全体に対して貢献ができると思っている」持ち前の好奇心、探求心を原動力に、"縁の下の力持ち"として研究を、ひいては社会を支えていきたいと考えている。

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西澤 正己
NISHIZAWA Masaki

情報社会相関研究系 准教授

博士(理学)/甲南大学大学院自然科学研究科物理学専攻博士課程修了/東京大学宇宙線研究所研究員、文部省COE研究員として「高エネルギー宇宙線が作る太陽の影による太陽近傍の磁場構造」の研究を行う。

1995年、NIIの前身である学術情報センター研究動向調査研究系に着任し、「情報学研究の国際比較」など研究動向関連の研究に従事。「成功した研究の経歴をたどる研究」、「キーワード分析による研究の関連性調査」、「各大学の国際競争力への寄与や特色に関する研究」、大学発のプレスリリースを用いた「学術研究のメディア報道における定量的調査研究」等、科学計量学関連の研究を行っている。

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