Jun. 2022No.95

未知の智を創るSINET6、ついに始動!

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移行を支えた縁の下の「チーム力」

SINET5 から6 へ、移行への道のり

SINET5から6への移行にあたり、加入機関への窓口として、また関係者間の調整役として縦横無尽の働きを見せたのが国立情報学研究所(NII)の学術基盤課「SINETチーム」のメンバーたちだ。移行を下支えした影の立役者たちに話を聞いた。

 学術基盤課の7人の職員で構成されるSINET チーム。職員たちが「何でも屋です」と口を揃えるように、ユーザー窓口はもちろん、企画、運用を中心に仕様設計やその構築、各種の障害対応、加入機関が接続する際のサポートなど、業務内容は多岐にわたる。

「障害問い合わせ窓口のオペレーションセンターや申請受付窓口など、個々に業務委託を行っているのですが、委託の業務フローからはずれるような対応や、個別に判断を要するイレギュラーな案件は私たちがすくい上げる形になります」(SINET チーム)。

 2021 年度はこれら通常業務をこなしつつ、6 への移行作業にも尽力することになった。

「SINET6への移行」は端的に言えば、加入機関の回線接続先の切り替えだ。その方法は、土日祝日にNII の委託先の作業員がSINET のDC に入って切り替えを行う「おまかせ移行」と、平日の日勤帯に加入機関が作業手配し現地に入って切り替えを行う「個別移行」の2 通りがある。

 今回の移行作業では、コロナ禍などの影響で機器の納入が遅れ、当初想定していた移行スケジュールを大幅に変更せざるを得なくなった。

 移行の周知は2020 年から始まり、同年6 月のSINET オープンフォーラムや、12 月のNII サービス説明会などを通じて、SINET6 に関する情報は加入機関へ公開されていた。

 そして2021 年1 月にオンラインで行われたサービス説明会において、SINET5 が2022 年3 月で終了になること、それまでに移行が必要になることなどが加入機関に通知された。2021 年4 月にSINET6 DC の場所が確定すると、6 月には接続DC が変更になる加入機関に対して周知が行われた。10 月には移行説明会が開催され、11 月からおまかせ移行の日程調整が始まるはずだった。

「 各DCの設備の調達は2020年度から始まっているのですが、DC が確定するのは2021 年4 月なので、加入機関の皆様のアクセス回線調達、また、SINET 側のDC 設備整備も本時期からの開始となりますが、1 年足らずで移行を終えなければならず、各作業とも余裕のないスケジュールでした」(SINET チーム)。

関係会社間の調整と加入機関への対応

 NII 内での情報共有はもちろん、加入機関とのやり取りや関係者との調整など、本来対面で進めていた打ち合わせも、コロナ渦のためすべてオンラインで行わざるを得なかった。

「先生方の会議など、通常はチームの職員が同席するのですが、今回はオンラインで個別に行われることが多く、時間が重なるなど私たちが同席できないケースもあり、進捗の共有や細かい部分の意識合わせが難しい面もありました。また機器の調達は半年くらいかかるので、その間に一部想定外の動作が判明する場合もあり、機能面に影響を及ぼしたり、運用上困難が発生したりするケースも出てきます。そうした情報のアップデートも後追いになってしまうことがありました」(SINET チーム)。

 その上、半導体不足により機器の納入が遅れたことで、SINET チームはその対応にも追われた。ひとつは、関係者間の調整だ。

「ネットワーク機器のベンダーだけでなく、DC や国内・海外回線ベンダー、国内向け・国外向けのオペレーションセンターなど、それぞれ異なる会社が対応しています。各社の担 当範囲の間隙で発生した業務も含めて、その都度私たちの方で関係者間の調整をしなければなりません」(SINET チーム)。

 そして納入が遅れれば加入機関への説明や対応策の検討も必要になる。加入機関側も当初の移行計画のもとでそれぞれ準備を進めており、遅れれば様々な影響を受けることになるため、どうしてもナーバスになる。時には窓口となる職員に厳しい言葉が向けられることもあった。

「 1,000近い加入機関ごとの移行の日程調整をしなければならないのに、機器の納入の目処が立たない。『いつになるのですか?』と聞かれても答えられないもどかしさがありました」(SINET チーム)

 当初の予定では2022 年の1 月から移行作業を始めるはずだったが、実際は2 月の中旬以降に繰り下がり、実質1 カ月半で全加入機関の移行を行うことになった。

「 通信影響の発生する切り替え時間帯を加入機関ごとに調整し、土日祝に作業するおまかせ移行は連日60 ~80 件の作業が集中する形になりました。3 月の終盤は平日(個別移行)も1 日20 件以上で、運用開始前日の3 月31 日まで切り替え作業が組まれました。作業担当の皆様は大変だったはずです」(SINET チーム)

 加入機関、関係会社の協力とSINET チームの奮闘の甲斐あってなんとか予定通り4 月1 日に運用開始したSINET6。チーム員もさぞかしホッとしたのではないだろうか。

「 いえいえ。運用を開始してからがSINET6 の本番ですので。安定運用を目指して取り組んでまいります」(SINET チーム)。  (取材・構成 遠藤 宏之)

SINET6 移行への歩み

2021.1  NII サービス説明会(オンライン配信)
2021.4  SINET6 DC 位置決定(メール通知)
SINET6 DC 住所問合せ開始
2021.6  DC 移転機関に対する周知(個別メール通知)
2021.7  オープンフォーラム(オンライン配信)
2021.6  DC 移転機関に対する周知(個別メール通知)
2021.7−11  SINET6 DC 拠点物理構築

2021.8.20 全国1日の新規PCR陽性者25,975人

2021.8  SINET6 移行方式ヒアリング (メール通知、Web フォーム受付)
2021.10 移行説明会(オンライン配信)

半導体不足の影響に伴う移行時期の後ろ倒し説明

2021.10−2022.2 SINET6 拠点への機器導入
2021.11  NII サービス説明会(オンライン配信)
2021.11−12  個別相談会(個別にWeb 会議)
2021.12−2022.2  おまかせ移行登録/日程調整

2022.2.1 全国1日の新規PCR陽性者103,595人
入試、学校イベント多数

2022.2.−3  おまかせ移行/個別移行
2022.4.1  SINET6 運用開始(記者懇談会)

[※]厚生労働省 新規陽性者の推移(日別)より

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