Jun. 2022No.95

未知の智を創るSINET6、ついに始動!

Interview

国際回線の増強

日本と世界の学術研究、教育を強力に推進する

国内外の大型国際実験設備と接続しているSINET。国際回線が増強されたSINET6となり、日本と世界の学術研究・教育をより強力に推進することになる。

明石 修

Osamu Akashi

国立情報学研究所
学術ネットワーク研究開発センター 特任教授

----SINET6 はどこの国際回線が増強されたのですか。

 SINETは2019年に、100Gbps回線で世界1周を成す学術ネットワークとして構築されました。SINET6では日本からロサンゼルス・ニューヨークまでの米国回線100Gbpsを2回線に増強しました。アジア回線については従来のシンガポールとの回線100Gbpsに加え、グアム回線100Gbpsを新規に開設しました。また欧州については現在100Gbpsですが、2024年度までに2回線(200Gbps)にする予定です。SINETのような海外回線構成例は他国の学術ネットワークには例がなく、今回の帯域増強とグアム回線の新設でその有用性を非常に高めることができました。

----国際回線を増強した背景について教えてください。

 SINET は核融合科学研究所の大型ヘリカル装置(LHD)や欧州にある、大型ハドロン衝突型加速器(LHC)、核融合実験炉(ITER)など、国内外の大型国際実験設備と接続しています。それらの大型実験設備から出力される良質かつ細かなデータを取得するには帯域が必要で、特に海外の実験設備からデータを取得する研究者からは、ラウンドトリップタイム(RTT 1)を短くするためにもなるべく短い経路を用いて帯域を増強してほしいという要望がありました。

 特に昨今、米国や欧州、アジアなどの大型国際協調型プロジェクトが増えていることも背景にありました。安定的かつ大容量のトラフィックを相互にやり取りできるようにすることが、日本および世界の学術研究・教育の発展につながるからです。

グアムはハブになりつつある

 ベストエフォート型2 である商用インターネットとの最大の違いは、SINETは研究教育用トラフィック専用であり、これらの需要予測に基づきその効率的なトラフィック交換を目的に設計されること。 国内のどの加入機関からも帯域保証された回線で直結でき、使用可能帯域を有効に使えます。

 またセキュアなデータのやり取りにも、柔軟に活用できます。機密データはインターネット経由でそのまま送りたくないですが、SINETを通せば、他国の学術ネットワークとも仮想的な専用ネットワークが構築されているので、セキュアなデータのやり取りができます。

----なぜ、アジア回線の増強にグアムを選んだのでしょう。

 従来のシンガポールへのアジア回線の難点は、海域の水深が比較的浅いため、海底ケーブルが他の場所に比べて切れやすいことでした。一方、グアムのあたりは水深が深い。そして米国と豪州の中間にあり、位置的にも優位であることが、グアムを選んだ理由です。しかもグアムは豪州やハワイなどのネットワークに接続されるなどハブになりつつあります。グアム回線があれば、シンガポール回線にトラブルを生じたとしてもトラフィックの迂回経路として利用できます。

----国際線増強でどのようなことができるようになるのでしょう。

 第一に海外の大型国際実験設備から出力される大量のデータを、短いRTTで取得できるようになるため、実験効率が上がること。また細かなデータまで取得できるようになるので、研究を優位に進めることができるでしょう。さらに国際協調型プロジェクトでは、広帯域のネットワークを有することで、プロジェクト内で日本の研究者の発言力を高めることもでき、日本の学術研究の競争力を増すことにもつながります。

 第二にネットワークの安定運用が可能になることです。SINETと他の学術ネットワークが広帯域で相互に接続することで、相互バックアップ、相互運用協力を行うネットワークの基盤として機能します。

 万が一、SINETが切れても、他の学術ネットワークをバックアップとして使用することで、さらなる安定運用を可能にすることができます。

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国際回線帯域を2倍に

----今後の展望について。

 2年後に欧州回線を増強すること。現在、候補を探り、議論を進めています。さらなるトラフィック需要要望があるものの、海底ケーブルの伝送帯域および本数はコストとのトレードオフになるため、各機関に状況をヒアリングしつつ、丁寧に進めていく必要があります。また国際回線は政治的な影響を受けるため、迂回経路や代替案の準備が必要になります。

 新たな北極海経由での海底通信ケーブルの敷設も検討されていますが、計画から実装までの時間はかかります。しかし北極海回線が実現すると、国際回線でも400Gbpsという広帯域が可能になるかもしれません。

[1]RTT
Round‐Trip Timeの略。通信相手にデータや信号を発信してから、応答が返ってくるまでに要する時間。相手との物理的な距離や経路上での中継、転送する装置の数などによって左右される。

[2]ベストエフォート型
回線業者が提示した最大通信速度を上限とし、最大限努力した速度(実際の通信速度は保証しない)で提供するインターネットサービス。

(取材・構成 中村 仁美)

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