Jun. 2022No.95

未知の智を創るSINET6、ついに始動!

Essay

最高の研究と最高の道具

世に出すときの不安そして喜び

Kento Aida

アーキテクチャ科学研究系 教授
学術基盤推進部 部長
クラウド基盤研究開発センター センター長

 学生のころ、卒業研究のために所属していた研究室で並列計算機の試作機を作っていました。

 複数のCPU がプログラムを並列に実行する並列計算機は、スマートフォンにも複数のCPU コアが搭載されている現在では当たり前ですが、当時は新しいタイプの計算機として、 多くの大学や研究所で研究が行われていました。ゼミの課題で出たプログラムを書いて動かしてみますが、昨日動いたプログラムが今日は動かない。先輩に相談すると(もちろん 冗談で言っているのですが)、愛情が足りないからだと言われる。「お願いします、動いてください」と心で念じてリターンキーを押したら動く。自身の研究のために作った試作機であれば、これも許される(と思います)。むしろ、このほうが研究者としては面白いのです。

 しかし、多くの研究者に利用される実用機となると、そうはいきません。24 時間・365 日動き続けて当たり前。万一、止まるようなことがあれば、相当の体力、知力、精神力をもって対応にあたることが求められます。

 長く安定して動くことを求めるのであれば、技術的なチャレンジを控えればよいのですが、最先端の研究に使ってもらうためには、それだけでは足りません。自動車で例えるな らば、乗用車の信頼性とレーシングカーの高い性能の両方を追い求めなければなりません。最高の研究には最高の道具が必要なのです。

 このような道具を作るために、性能、信頼性、予算、人といった形の全く異なるパズルのピースのような要件を組み合わせる作業を様々な専門分野や能力を持つ人たちが一緒に 進めます。やっと組み上がったと思ったら、ピースが間違っていたり、壊れていたり、足りなかったりします。それでもめげずに続けます。一人ではいやになってしまう時もありますが、そういう時は仲間に励まされて続けます。

 こうしてできあがった道具を世に送り出すとき、最初は不安を感じることのほうが多いのですが、その道具が使われて、よい研究成果があげられた時の気分は格別です。多くの 場合、道具を作った人がその研究に直接かかわることはないし、論文に名前が載るわけでもありません。それでも、自分たちが作った道具が使われて、よい研究成果が世の中に出 ることはうれしいことであり、誇りにも感じます。また、一緒に作ってきた仲間たちと続けてきてよかったと思う瞬間であり、これが次への原動力になります。

 2022 年春、SINET6 が始動しました。開発・整備を進められた関係者の方々(特に現場のスタッフの方々!)に敬意を表するとともに、ご支援いただいた方々に感謝申し上げます。これからどのような研究成果が生まれるのか、楽しみです。

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