Mar. 2019No.83

SINETが支える「Society5.0」機能強化で広がる研究可能性

NII Today 第83号

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SINETARIUM

目で見る『SINET』─SINETARIUM(サイネタリウム)

2018年6月から※、学術総合センター(NIIの主要部門が入るビル)の1階ロビーでは、SINET上のデータ流量の推移を日本地図にマッピングしたプロジェクションマッピング「SINETARIUM(サイネタリウム)」を展示している。SINETARIUMとは、目には見えないネットワーク上のデータの流れを可視化し、学術研究や教育にSINETがどのように使われているのか理解を深める取り組みだ。その概要や狙いについて、制作を担当した岡本裕子URA(リサーチ・アドミニストレーター)、SINETチームの技術担当の窪田佳裕係員、齊藤麻友子係員、今井亮輔特任技術専門員に聞いた。

窪田佳裕

Yoshihiro Kubota

SINETチームの技術担当

岡本裕子

Yuko Okamoto

「SINETARIUM」の制作を担当

今井亮輔

Ryosuke Imai

特任技術専門員

─SINETARIUMとは、どんな作品なのか教えてください。

 NIIが構築・運用する学術情報ネットワーク「SINET5」のデータトラフィック流量を、ビジュアライゼーションにより表現した展示です。SINET5の利活用により生み出される日本の学術研究・教育活動など、アカデミアのアクティビティを可視化し、現在進行形の科学研究への理解を深めることを試みました。具体的には、空間いっぱいに投影された日本地図上にマッピングされた粒子や線が、SINE5上のデータトラフィック流量に応じてダイナミックに変化し、鑑賞者が地図に近づくとその地域のより詳細な流量を示します。もともと数字の羅列でしかなかったログデータをわかりやすく表すとともに、情報の移ろいを直感的に感じられるビジュアルとサウンドで表現しました。

─制作のきっかけを教えてください。

 喜連川所長のチャレンジングなマインドに刺激を受け、NIIの活動を可視化できないかと考えたことがきっかけです。迫力のある大画面で、研究活動、事業活動を皆様にご覧いただくことができればと思いました。SINETチームの技術担当の窪田さん、齊藤さん、今井さんの協力のもと実現しました。

─制作にあたり、苦労した点や工夫した点は?

 目に見えないデータをどうやって「見せる」か、です。「こんなふうにデータが流れ、使われているんだ」ということを、ストーリーを想起しながら直感的に感じてもらうために、何をどう見せればよいのか、スタッフと何度も意見を出し合いました。

─SINETARIUMを通して、何を伝えたいと考えていますか。

 現在進行形で記録されるデータトラフィック流量のデータをアップデートすることで、例えば2018年7月の西日本豪雨や9月に起きた北海道胆振東部地震など、直近に起こった災害時におけるデータ流量の変化なども見ることができました。眺めていると、ネットワークインフラがどのように冗長性を保ち、復旧していったのかがわかります。夜明けから日中、そして深夜へと移り変わる時間とともに、画面上を飛び交う線や粒子が徐々に活発になり、そして静かに落ち着いてゆく様子を見ていると、日本各地で日々行われている知的な活動のリズムがまるで生命の息吹のように感じられます。「あるのが当たり前」と思われているネットワークの大切さを、より多くの人に感じてもらえたら嬉しいですね。

(写真=相澤 正)

※SINETARIUMは2018年12月をもっていったん展示を休止しましたが、夏ごろから再開する予定です。

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