Mar. 2019No.83

SINETが支える「Society5.0」機能強化で広がる研究可能性

Interview

日本の知をつなぐSINET

データ社会が紡ぐイノベーションに挑む

国立情報学研究所(NII)が構築・運用する学術情報ネットワーク「SINET5(Science Information NETwork5)」がモバイル通信環境と直結するなど進化を続けている。日本全国を網羅するこの情報インフラを使い、健康に関連する分野で革新的なサービスを生み出そうと巨大プロジェクトを始動させたのが大阪大学だ。イノベーション国家への飛躍に向けた日本の課題と可能性をどうとらえたらいいのか。大阪大学の西尾章治郎総長と、NII の喜連川 優所長が語り合った。

西尾 章治郎

Shojiro Nishio

大阪大学 総長
1980 年、京都大学大学院工学研究科博士後期課程修了(工学博士)。専門分野はデータ工学。京都大学工学部助手などを経て、1992年大阪大学工学部教授、2002年、同大学院情報科学研究科教授。サイバーメディアセンター長、大学院情報科学研究科長、理事・副学長などを歴任し、2015年8月から現職。
2011年紫綬褒章、201年文化功労者など多数受賞。

喜連川 優

Masaru Kitsuregawa

国立情報学研究所 所長

村山 恵一

Keiichi Murayama

1992年東北大学法学部卒、日本経済新聞社入社。産業部でIT・電機、自動車、医療などを取材。ハーバード大学留学、シリコンバレー支局を経て2012年編集委員。15年論説委員兼務。17年から現職。担当はIT、スタートアップ。近著に『STARTUP 起業家のリアル』。

大阪大学のライフデザイン・イノベーションとは

村山 大阪大学が取り組む「ライフデザイン・イノベーション研究拠点」プロジェクトとはどんなものですか。

西尾 大阪大学は医療系に強みを持っています。医学部附属病院に加え、大阪市内に多数の関連病院があります。そのうち、19の関連病院で生み出されるカルテなどに記載の医療データ(エレクトリックヘルスレコード(EHR))をすべて統一的なフォーマットで大学に集めることが可能です。これには大きな意味があり、海外の研究者からも世界に冠たるデータだと評価されています。このデータを用いて、健康における知の発見をしたいと考えてきました。そういうなかで文部科学省が新たに開始した「Society(ソサエティー)5.0実現化研究拠点支援事業」に応募し、採択されたのが、現在進めている「ライフデザイン・イノベーション研究拠点」です。

 大阪では2025年に万博が開催されます。「いのち輝く未来社会のデザイン」がテーマです。大阪大学としても医療系の強みを生かし「いのち」をキーワードにさまざまな研究を進めたいと考えています。IoT(モノのインターネット)技術の進展もあり、EHRのみならず、血圧や心拍など個人の健康情報(パーソナルヘルスレコード(PHR))をどんどん集められるようになっています。それだけでなく、その人が日々どのような活動をしているかという日常生活の活動データやそれらの時系列情報を従前より容易に収集できるようになってきています。私どもは、EHRやPHRに日常生活の活動データを加えたものをパーソナルライフレコード(PLR)と呼び、PLRをもとにこれまでにないライフデザイン・イノベーションを創出することで、心と体の健康増進につなげようと考えています。また、健康や医療のみならず、学びと楽しみのあり方も追求したい。最終的にはQOL(Quality of Life)向上、健康長寿を実現するというビッグプロジェクトです。

 このプロジェクトには、大阪大学だけでなく、全国から14大学、さらに、理化学研究所、大阪府、大阪市、関西経済連合会、大阪商工会議所、企業20社と多様な方々が参画します。まずは大阪大学のキャンパス内にいる学生や教職員などを対象としますが、最終的には万博会場での実施をめざします。

Society 5.0社会におけるSINETの役割

村山 2025年、具体的にどんなことが実現していると予想しますか。

西尾 情報分野で5年先を予測するのはなかなかむずかしいですが、人間が自らは何のアクションを起こさなくても、周辺のデータが集められ、自然な形でさりげなく人間に警告を与えたり、今の状況を通知したりしてくれるAmbient(アンビエント)なサービスが成熟した形で提供されるのではないでしょうか。

 ネットワーク社会のパラダイムシフトを振り返れば、まずインターネットの出現によって、世界の多くの人々が端末によって相互につながりました。次がユビキタスの時代です。「いつでも、どこでも、だれとでも」と、空間や時間の制約から解放されました。これに対してSociety 5.0は「いまだから、ここだから、あなただから」というように、必要なサポートやサービスをきめ細かに行い、快適に暮らすことができる環境であり、アンビエント社会そのものと言えます。人間が主体的にアクションを起こす必要がなく、コンピュータ環境としては究極といえます。ウェルネス、ライフスタイル、エデュテインメント(楽しみながら学ぶためのマルチメディアやコンテンツ)の領域でそのようなサービスが実現するのが2025年くらいだろうと思うのです。ネットワーク社会にとってマイルストーンとなります。そのためには大量のデータが欠かせません。

村山 そうなると、データを扱う基盤としてSINETが果たす役割が大きくなります。

西尾 プロジェクトは現在、関西地区で進めていますが、将来的にはこの地域に限るのではなく、サクセスストーリーをつくって全国に広げることが求められます。そのような全国展開のための基盤はSINETしかありません。また、民間企業との連携も必要で、協力を促す観点からもSINETには大きな意味があります。SINETはまさに生命線、大動脈なのです。SINETは新たにモバイル環境を備えたことから、大量のデータを流すということにとどまらず、情報の収集も容易にできるようになります。

パワフルなネットワーク、データ、研究が社会を支える

村山 モバイル対応を中心に強化されたSINETの優位性はどのあたりにあるのでしょうか。

喜連川 一言でいうと家庭での通信速度は100M(メガ)bps。一方、SINETは100G(ギガ)bpsと、ざっと1000倍の速さです。膨大なデータの存在がSociety 5.0の核であり、SINETはそのための重要なインフラとなります。大阪大学が進めるライフデザイン・イノベーション研究拠点事業では、ヘルスレコードに加えてライフレコードも集めます。人間の日常生活に関する情報となれば、ときたま行う血液検査の結果や、飲んでいる薬の情報などに比べ、圧倒的にデータが大きくなります。

 たくさん設置するカメラからのデータも膨大です。さらに大阪大学だけに閉じたアクティビティーではなく、いろいろな大学の先生がデータにアクセスする共創の研究スタイルを活発にする必要もあります。具体化する手段はSINETしかありません。極めてパワフルな基盤と考えてほしいと思います。

 Society 5.0では、あらゆるところからデータが出てきます。それを吸収できるネットワークをつくらなければなりません。そう考えて今回、モバイル、LTEを導入し、新たにサービスを始めました。すでに多くの申し込みや打診があります。こういうネットワークが今後のSociety 5.0の時代を築きます。データ活用を促すために「データビリティフロンティア機構」をつくった大阪大学は先駆けですが、いろいろな応用が模索されていくのではないでしょうか。

 たとえ地方の大学でも場所の制約を感じずに利用できる100Gというネットワークを提供するSINETは日本を元気づけます。400G回線の導入や、海外回線の強化も続きます。これだけパワフルなネットワークを持つのは日本だけです。これを普及させてデータドリブンな研究を進め、これからの社会をデータで支える。それがSociety 5.0に対する考え方です。

村山 SINET という基盤と、その上で展開される大阪大学などのプロジェクトが車の両輪となって前進していく。そんなイメージでしょうか。

西尾 SINET には日本の約900の学術研究機関がつながり、ユーザー数も300万人以上にのぼります。現在のSINET5は、日本の大学における研究のガバナンスにも大きな改革をもたらすと感じています。ある県知事の方から聞いた話ですが、その県にある大学との連携によって農業のAI化といったサクセスストーリーが生まれているそうです。大学はSINETにつながっていますから、AIを用いた農業のデータをSINET経由で他の大学と共有でき、場所にとらわれず日本全国で創造活動が展開できます。これまでは共同研究といってもデータをベースにした例はあまりなかったかもしれません。今後は、データは貴重な財産であるという発想のもとで、全国の大学が総力をあげて創造活動ができます。その重要な基盤がSINETなのです。

 研究とOTの両輪で新たな研究モデルを創出

村山 環境変化が激しい時代となり、日本も数多くの課題を社会や経済のなかに抱えています。課題の解決に向けて多くの知を束ねることの重要性が一段と増していますが、大学同士が連携する機運は高まっているのでしょうか。

西尾 とくに若い世代は意識が変わり、機運は高まっています。データをクラウドで管理する仕組みの構築やセキュリティ対策を確実に進めていけば、たとえ研究者がある大学から別の大学に移っても研究への支障が出ないような体制になります。異分野のデータとのクロスも可能になるでしょう。

喜連川 NIIは研究所ですので、当然研究をしていますが、それだけではなく事業を有していて、SINETの運用も担っています。このような両輪を持つ組織はグローバルに見渡しても稀有です。SINETは、一つのベンダーに丸ごとお願いしてサービスを行うといった形態をとっていません。ダークファイバという光ケーブルをNIIが調達し、さらに両端に送信機器、受信機器を別のベンダーから調達し、多様な部品を組み上げてシステムを構築、運用しています。まさに「手づくり」です。こうしたOT(オペレーショナル・テクノロジー)の体験は貴重です。実際にネットワークの運用にかかわることで、ベンダーに丸ごとお願いする方式では到底得られない知見、ユーザーの利用動向や、技術の課題、さらには、今後の方向が肌感覚でわかります。

 最近、セキュリティのサービスを始めました。100程度の国立大学を中心とする機関をサイバーアタックから守る体制を整え、2017年7月から運用を開始して、好評を得ています。NIIの所長を拝命した頃、大学の先生方にNIIへの要望を聞いたところ、非常に多くの方々からセキュリティサービスへのリクエストを頂戴しました。NIIは「やりたいサービスをするのではなく、やらなくてはならないサービスをする」と考えました。

 日本には暗号の研究者はたくさんいますが、サイバーセキュリティの研究者はほとんどいません。なぜか?研究する素材となるデータがほとんどないからです。われわれは来年度から、SINETから得られた攻撃されるパターンデータやサニタイズ(無害化)したマルウエアを研究者に提供開始する予定です。サイバーセキュリティの人材育成は大きな課題ですが、その抜本的な課題の解決を狙おうとしています。もちろん、いろいろな大学からNIIのセキュリティセンターに受け入れて実習なども行っています。ポイントは、「自ら現場を持つ」姿勢が非常に重要だと考えています。

 ユーチューブも最初はビジネスモデルがありませんでした。多くの動画を提供していましたが、収益を上げるようになったのはだいぶ後になってからです。つまり、皆が必要とするサービスの完成品を最初から出そうとするのではなく、少しずつ立ち上げ、ユーザーから助言をいただき、議論を重ねるなかで、サービスをブラッシュアップするというサイクルを繰り返すプロセスがIT分野の潮流であり、大学共同利用機関にとってはむしろこのプロセスがしっくりします。

img83-1.jpg

どうなる日本のイノベーション

村山 Society 5.0は社会の課題を解きつつ、同時に経済成長もねらうという野心的な目標を掲げています。一方で「日本のイノベーション力は大丈夫か」という議論があります。ITの領域で現在、存在感が大きいのは米国と中国です。実際、日本発で世界を変えるような製品・サービスを見つけるのは困難な気がします。

西尾 例えば、情報通信分野で言えば、AI(人工知能)などの研究で「マスの力」というのは相当あります。中国は研究者の数からして桁違いに多い。そのようななかで日本が勝ち残るための術を考えなければなりません。私はAIやビッグデータ解析の技術の社会実装を重んじるという視点を持てば、イノベーション創出の可能性がそれらの先進技術を適用する現場に秘められているように思います。例えば、次世代通信の5Gです。そろそろ実用化の段階を迎え、その競争相手として米国と中国の名前が挙がりますが、国内に5Gの基盤がきっちり構築されて問題なく実用で使えるという状況は、やはり日本が先頭を切るのではないでしょうか。SINETを基盤に最新のAI、ビッグデータ解析、IoTを5Gとうまく統合する。そうすれば日本はイノベーション創出に立ち向かっていくことができるという希望を持っています。

 イノベーションを起こすのは人材です。いま大学で就職の状況が少しずつ変わりつつあります。情報分野でイノベーションを起こしたビル・ゲイツ氏やスティーブ・ジョブズ氏は大学を卒業して就職したのではなく、自らベンチャー企業を立ち上げました。日本の有力大学でも情報分野のトップクラスの大学院生は、大企業に行くことに一番のプライオリティを置かなくなってきています。起業する人も多い。米国に比べれば周回遅れかもしれませんが、日本でも現実に出てきている動きです。とくにAIベンチャーは世界のイノベーションを牽引しようという動きが盛り上がっています。ビジネスを起こす環境が整ってきました。とくに情報分野はやりやすいのではないかと思います。

 大学の歴史を振り返ると、University 1.0にあたるのは中世の大学です。例えばイタリアのボローニャ、ポルトガルのコインブラといった大学であり、そこでは古典の研究と教育をベースとした専門職養成が主になされていました。第2世代のUniversity 2.0は1810年に設立されたドイツのベルリン大学から始まります。これは研究を中心とした人材育成でした。講座制を設けており、明治政府もこれを採用しました。続くUniversity 3.0は、1876年に世界初の大学院制度を確立した米国のジョンズ・ホプキンス大学から起こりました。大学院が設立された目的は産学連携、つまり、社会貢献です。

 これらに対し、私がUniversity 4.0と呼ぶのは、社会と一体となって創造活動を展開するような大学のイメージです。すなわち、大学と社会による共創です。双方が今よりもう少しタイトに連携し基礎的なところから手を組んで活動するようになると、新たなイノベーションが起きる可能性があります。

村山 大学のあり方が社会の要請とともに変わってきたわけですね。そして、今求められているのは、社会に資するイノベーションである、と。

イノベーションには人文科学が必要

村山 具体的にはどうすればイノベーションを起こすことができるのでしょうか。

西尾 イノベーションを起こすには3段階のステップが必要です。まず第1段階としてサイエンスとテクノロジーが必要不可欠です。ただ日本はそこで止まってしまっている。昔の携帯電話を思い出してください。あらゆる機能を詰め込めば売れると見込んで多機能化しましたが、卓上電話と同じ機能だけを装備したシニア向け携帯電話が高齢者の大ヒット商品となりました。ユーザーが何を求めているか、そういう視点を持つことが第2段階です。さらに第3段階として法規制の問題があります。製造会社が製品づくりをためらうような規制があってはいけません。こうした3段階で考え、そこで活躍する人材を育てていく必要があると思っています。

 今後より重要なのは、法規制を理解し国際標準をタフに勝ちとってくるような人文社会的な素養を身に付けた学生を育てることです。それを着実に行わないと、日本からイノベーションを起こしていくのが危うくなります。自然科学系のプレーヤーだけでは戦っていけません。人文学・社会科学系のプレーヤーが欠かせない。イノベーションを起こすために、われわれが解決しなければならない問題が複雑すぎるからです。国連が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」を見ても、人文学・社会科学系がリーダーシップをとり自然科学系を巻き込むようなことを進めていくことが重要です。おそらく2021年度から始まる「第6期科学技術基本計画」においては、この方向性が求められていくのではないかと考えています。

NIIは日本ならではのオンリーワンをめざす!

喜連川 私は生まれ持って楽観的です。日本は大丈夫でしょう。確かに、日本はかなり豊かな国になり、少し安心してしまったところがあります。コンピュータがない時代にそれをつくろうとした富士通の池田敏雄さんのようなエンジニアがかつていました。ソニーやホンダも生まれた。ああいう人たちが今なぜ出てこないのか。大学は学生に対する刺激の与え方を少し見直す必要があるかもしれません。「とにかく論文を書きなさい」という、ナンバーワンジャーナルへの論文発表競争偏重が根源的な問題のようにも感じます。それだけが問題ではないかもしれませんが、"Publish or Perish"(「論文を書け、さもなければ去れ」)という考えは大分前に言われたものです。

 しかし私が思うのは、日本はグーグルやフェイスブックが持っていない貴重なアセットを持っているということです。日本にしかないものを使ってどんどん戦っていけるのではないでしょうか。端的な例を挙げれば、100歳に達した人が約7万人もいる国は日本しかありません。お年寄りがこんなにたくさん元気で過ごしているのは日本だけなのです。ロンジェビティ(長寿)や健康寿命、介護などについて西洋の国々もいろいろと発言はできますが、実証できる場は日本だけなのです。

 データはクオリティが重要だといいます。われわれは医療のビッグデータセンターもつくりました。日本人は年間1200万回も内視鏡の検査を受けます。多くの医療画像が集まり、強力なデータセットが日本にできていきます。これを米国や中国が持っているかといえば、ありません。NIIのセンターはすでに1000万枚以上の医療画像を集積しAI開発を推進しています。指摘したいポイントは極めてシンプルです。原則としてナンバーワンをめざさない。ナンバーワンがいるならナンバーツー、ナンバースリーもいるはずです。いまさらそういうゲームをしても大きなゲインは得られない。やるなら日本にしかないもの、オンリーワンです。もちろん失敗するかもしれません。しかし、本田宗一郎も一定程度の失敗は覚悟していたように思います。大きく勝つ勝負に挑戦することも大切でしょう。

データ科学と計算科学の融合に欠かせない次世代SINET

村山 次の世代のインフラとなるSINET6にはどんなことを期待しますか。

西尾 SINETは飛躍的に太いネットワークとなり、短期間で100Gまでたどり着きました。これを共創活動に結びつけていくことが非常に重要となります。今後さらに機能が高まることを期待するのは、ビッグデータをベースにした科学と、スーパーコンピュータを使う計算科学との連携です。現在も日本のスーパーコンピュータセンターとSINETはつながっていますが、これをよりタイトな形で連携させる仕組み、環境ができると、日本の学術レベルがいっそう高度化する土台になります。量子計算をするようなコンピュータもSINETに接続して、データのクラウド化が進めば、データ科学と計算科学がシナジーを伴って展開される環境が整い、世界に冠たるものになるでしょう。

喜連川 データ科学と計算科学の融合は避けて通れません。加えて機械学習のためのコンピュータがますます重要になります。米国の西海岸にいる優秀な学生は「どれだけのデータを持っているか」「どれだけの計算パワーを持っているか」という基準で会社を選びます。だから英国のディープマインドはグーグルの傘下に入り、トロント大学のヒントン教授もグーグルに加わって深層学習を現実のものとしたと言えます。このような状況下で、AIの燃料としてのデータの輸送路とも言えるSINETの果たす役割はますます大きくなっており、常に最先端を見据え、5Gも含めて新たなデータ・サービスを展開してゆく所存です。

(写真=佐藤祐介

インタビュアーからのひとこと

GAFAなど巨大企業群を抱え世界のIT競争をリードする米国。これを追いかけ国を挙げてAI開発に取り組む中国。2強の前に存在感がかすみがちな日本は巻き返せるのか。言い方こそ異なるが、西尾総長も喜連川所長も答えは「イエス」だった。

 例えば医療。この長寿国家には元気な高齢者に関するデータが豊富にあり、SINETのようなインフラを駆使すれば大学や企業の英知を束ねることが可能だ。確かに他国には真似できない価値創出ができるかもしれない。聞いていて、じわりと力が湧いてくるような討論だった。

 成功モデルがひとつ日本に生まれれば沈滞ムードは吹き飛び、流れが変わるはずだ。関係する人たちの起業家精神が改めて問われている。

村山恵一 氏

第83号の記事一覧