Dec. 2022No.97

人工知能法学を識るAIと法学が融合した “新学問”

Essay

3世代目のプログラマは誕生するの!?

コンピュータの世代差を超えて

TSUSHIMA, Kanae

国立情報学研究所
アーキテクチャ科学研究系 助教

 今2歳半の子どもを育てています。いろいろなことを主張するようになり、どんどん賢くなってきて可愛い盛りです。子どもが大きくなってできることが増えてくると、子どもを取り巻く環境は私が子どもの時と全く違うことに改めて気付かされました。私の身内の例になってしまいますが、世代によるコンピュータやプログラミングなどの環境の違いについて振り返ってみます。

 昨年70代で亡くなった義父もプログラムを書く人だったそうです。大学での専門は電子工学で、大学では真空管などを扱っていたと聞いています。会社に勤めるようになった頃には、トランジスタが主流になり改めて学び直したそうなので、プログラミングも大人になってから学んだのでしょう。会社で扱うコンピュータが高価で、一人で専有ができなかったからか、今も義実家にはプログラムを印刷した紙が残っています。

 1990年代の私が子どもの頃は、物心ついた頃からワープロが家にありました。小学校高学年の時に父がデスクトップのコンピュータを買い、時々触らせてもらっていました。中学校の頃、プログラムを書いて動かしてみたくて本を買ってみたものの環境の整備などがうまくいかず、独学ではあまり進められなかったのを覚えています。結局、本格的にプログラミングできたのは、大学で情報系の学部に行ってからでした。

 今の子ども世代は、スマホやタブレットなどが家に人数分くらいあり、個人で使えることが多いでしょう。乳幼児向けにスマートフォンを模したおもちゃや、プログラミング教育をうたったおもちゃ(なんと対象年齢は4歳ごろから!)が多くあります。小学校・中学校でもプログラミング教育が必修になり、学ぶ人が増えています。その影響か、子ども向けの教材・本・教室なども数が増え、検索してみても候補が多くて悩むほどです。また、GoogleColaboratoryなど、ブラウザで使えるプログラミング環境も充実してきて、初心者が気軽に始められるようになっています。

 このように、コンピュータは義父の代には大企業で共有でしたが、私の代には一家で一台になり、子どもの代では一人で一台と手軽に扱えるようになりました。プログラミングも学習する年齢が次第に下がり、だんだんハードルが低くなっています。私の専門はプログラミング言語ですので、大学の講義でプログラミングを教える機会はあり、中学生・高校生向けに教えた経験もあります。ですが、小さい子にはテキストベースのプログラミングは扱いにくいですし、子ども向けのプログラミング教育には今までの教えてきたノウハウでは歯が立たないことは確かです。そのため、自分自身も一から学ぶつもりで、子どもと一緒に子ども向けプログラミングを試してみようかと思っています。3世代目のプログラマは誕生するのでしょうか?成長を見守っていくのが楽しみです。

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