Dec. 2023No.101

若手研究者と研究環境

NII Today 第101号

Interview

最先端の研究を縁の下で支える

情報学の最先端の研究成果が紡がれていくその影で、研究に必要な事務処理を地道に進めるのが事務系職員の役割だ。研究を支える事務とはどのようなものか、若手事務系職員の浅川 大輝 係員に聞いた。

浅川 大輝

ASAKAWA, Daiki

国立情報学研究所
総務部企画課企画チーム 係員

── 国立情報学研究所(NII)での事務系職員の業務内容を教えてください。

組織としては、学術基盤推進部と総務部の二つが事務を担当しています。学術基盤推進部は、NIIの 役 割 で ある「 研 究 」と「事業」のうちの事業系を中心に担っています。私が所属している総務部は、企画課、総務課、会計課に分かれていて、一般的な企業などと同様に総務、人事、財務・経理といった組織運営に加え、研究者のサポートにまつわる業務を行っています。例えば、研究成果の取りまとめや研究会議の運営、国内外の大学と連携して行う研究活動の対応などです。他にも、NIIは人材育成のための大学院教育として、総合研究大学院大学に参画し、情報学を学ぶ学生の支援なども行っています。

──企画課企画チームは、どのような役割を担っていますか?

大きな業務としては、評価業務と運営会議・アドバイザリーボードの実施があります。評価業務は、学位授与機構や文部科学省などから依頼を受け、各研究室から上がってきた研究評価を取りまとめる業務です。運営会議とは、研究所の教員選考や共同研究計画のようなNIIの運営に関する重要事項の審議を行う会議です。私たちは、実施のための日程調整から資料作りに至るまでの業務を担当しています。アドバイザリーボードとは、所長の諮問に応じて国内外の有識者の方からNIIの研究に関するさまざまな意見をいただくことで、私たちは、そこに参加する研究者のサポートを担当します。総じて、所内の各研究室や外部の方との連携を取る業務が多いですね。

最先端の研究に触れながら研究者に最良の環境を提供

──NIIに就職したきっかけを教えてください。

大学共同利用機関法人は公務員試験と同じ科目で採用試験が受験できるため、情報・システム研究機構の説明会に参加しました。実はそこで初めてNIIという組織を知って、その業務について興味を持ち、NIIで働きたいと思うようになりました。大学は経済学部でしたが、パソコンが好きで、大学でもプログラミングを学ぶなど情報学に関心があったため、NIIに配属になった時は、とても嬉しかったです。新卒でNIIに入職して、2023年現在で2年目になります。最初の頃は右も左も分からない状態でしたが、今では業務全体を把握して、自分なりに考えて仕事ができるようになってきました。

──事務系職員として仕事のどのような部分にやりがいを感じますか?

NIIの仕事という点では、世の中を大きく変える、重要かつ最先端の情報学の研究や研究者をサポートしているということに誇りを持っています。加えて、評価業務などを通じてさまざまな研究に触れることや、会議の運営業務などで実際に研究発表を聞く機会もあるため、自然と貴重な知識を得ることができます。企画チームの一員として実際に担当した仕事では、アドバイザリーボードのため来日した海外の研究者のサポート業務が印象深かったです。当時は、新 型コロナウイルス対策のために入国手続きもかなり煩雑で苦労しましたが、研究者の希望を取り入れつつ、無事に1週間のサポートを務め終えた時には、大きな達成感がありました。

──職場環境はいかがですか?

私はまだ企画チームの仕事しか経験がないため、部署によって印象は異なるかと思いますが、仕事の進め方などは柔軟性があり、非常に働きやすいと感じています。

── 現在、仕事をする上で、課題となっていることはありますか?

多くの部署では電子化が進んでいますが、まだ紙文化が残っている一部の部署ではやりとりに時間がかかることもあります。大学や役所など連携している外部機関がまだ紙ベースのところも多いため、なかなか進んでいないのが実情です。会計などにまつわる部分ではあるため、難しいことは承知していますが、省力化や効率化のためにも、できるだけ迅速にDXを進めていくべきだと考えています。

一つ一つ経験を積み期待に応えられる人材に

──事務系職員として働く上で、重要な知識やスキル、経験などはありますか?

具体的な知識やスキルというわけではないのですが、チームで何かに取り組むことができる力の重要性は日々実感しています。事務系の仕事は、研究者に寄り添い、研究活動のサポートを務めることはもちろん、部署全体で助け合ってより良い成果を出していく必要があります。学外の組織と連携する業務もあるため、人とのコミュニケーションを大切にする意識は欠かせません。

また、NIIは情報学の研究機関ですが、事務系職員は情報学のスペシャリストである必要はありません。私自身、ゼロからのスタートでした。ただ、情報学の分野は日進月歩のスピードで発展しています。そのため、日頃から情報学に関するニュースなどにもアンテナを張っておくと、さまざまな研究と世の中とのつながりを感じることができるので、仕事へのモチベーションが高まると思います。

──若手職員が活躍するためには、どのような環境が必要だと思いますか?

現状、新入社員研修のような新卒への教育機会が少ないため、より増えると良いと思います。事務系の仕事は、自分が所属している部署だけでなく、他部署の仕事内容や各研究所の研究内容など全体像が分かると、仕事がやりやすくなりますし、仕事の意義も明確になります。そのため、まずは入ってすぐに組織の全体像を学ぶ機会があると、スムーズに業務を進められるかと思います。

私が入職した当時の上司は、非常に教育熱心な方で、在宅勤務推奨期間も、私の出勤日に合わせて出勤し、新人の私にできるだけ寄り添った指導をしてくれました。「将来のNIIを引っ張ってくれるような人材を育てたい」というその上司の期待に応えるために、今後も精一杯努力していきたいです。

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