Dec. 2023No.101

若手研究者と研究環境

NII Today 第101号

Interview

国際交流を通じてグローバルな研究協力を促進

国立情報学研究所(NII)では、共同研究に参加するインターン生をMOU提携機関・大学から毎年受け入れている。 その受け入れの目的、効果、状況について、プログラムを率いるプラナス エマニュエル 教授に聞く。

プラナス エマニュエル

Emmanuel Planas

国立情報学研究所
教授/ GLO Acting Director

研究機関の国際交流活動

── NIIの国際交流協定について教えてください。

NIIでは、研究協力の強化のため、現在、35カ国の、100以上に及ぶ大学、研究機関と国際交流協定(MOU)を結んでいます。NIIの研究者が他の機関の研究者と共同研究を行う場合、そのプロジェクトを基に共同研究者の所属機関とMOUを締結し、機関レベルでの国際研究交流を開始します。これはNIIとMOU締結機関の強固な研究基盤を土台とした国際交流であり、これにより共同研究の協力体制を強化しています。

── NII国際インターンシッププログラムはどのようなものですか

MOUの締結により、二つのプログラムへの参加が可能になります。一つ目は、MOUグラントと呼ばれるプログラムで、NIIの研究者とMOU締結機関の研究者が、双方の機関を研究訪問する際の財政的な支援を行い、プロジェクトの共同研究を推進します。二つ目は、NII国際インターンシッププログラムで、MOU締結機関の学生にNIIでのインターンシップに参加する機会を提供しています。

インターンシッププログラムの申請対象者は、MOU締結機関の修士課程2年生と博士課程の学生です。募集の案内は、MOU締結機関の担当者や指導教員から学生に通知され、申請を希望する学生は、各大学、機関で定められた選考方法に従って応募します。募集は年に2回、春と秋に行われ、1回に約70名の学生を受け入れています。

インターン生への研究トピックは、NIIの教員から提供され、四つの研究系におけるICT関連の多種多様な研究テーマを毎回100件近く提示しています。

インターンシップに参加した学生の中には、リピーターも多くいます。NIIは総合研究大学院大学の情報学コースを開設していますので、インターンシップ修了後に同大学の博士課程に入学する学生もいます。また、元インターン生の多くが学術の道に進んで研究を続けており、中には自身のインターンシップ参加から10年経ってもNIIと研究協力関係を続けている人もいます。教授となり、MOU締結機関の担当者、また指導教員として、今度は自分が指導している学生をインターンシップに参加させていることもあります。このように、NII国際インターンシッププログラムに魅力を感じてくださる研究者が多いことで、長期的な研究協力が続いています。

── 申し込み、受け入れ数などの状況を教えてください。

2005年以来、延べ1,829名の学生を受け入れています。また、参加したインターン生の国籍は80カ国ほどで、多様な学生がこのプログラムに参加していることがお分かりいただけると思います。申請者の3分の2は欧州出身ですが、最近では中国からの応募が大幅に増えており、有望な学生が中国に相当数いることを表しています。また、ベトナム、タイ、シンガポールをはじめ、東南アジア諸国からの申し込みも数多く受けています。

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アンジェリーノ教授(中央)のお別れ会にインターン生と(2019年3月)

研究者、インターン生における国際交流経験の重要性

── 国際交流活動によるNIIのメリットは何でしょうか。

インターンシップ参加者の若いエネルギーと新鮮な視点によって、NIIの研究活動が活発になります。さらに彼らの国際的なバックグラウンドは、NIIの出版物に多くの影響を及ぼしています。実際、彼らがNIIの指導教員の下で共同執筆した学術論文は多数あります。また、彼らのインターンシップへの参加は、所属機関との協力関係をさらに強固にしています。こうした交流は、NIIの研究プロジェクトを豊かにするだけでなく、機関間の有益な関係も育んでいます。

── インターンシップ参加者が国際的な経験を積むことは重要なのでしょうか。

もちろんです。このプログラムは、国際的な経験と多様性に富んだ環境という面が高く評価され、この15年間で大きく知名度を上げました。国際社会での活動は、学生を学究的な面で豊かにするだけでなく、何にも代え難い経験を残します。このプログラムがもたらす友好的で国際的な環境は、学生の科学的・文化的な成長を促しています。

そもそもNII国際インターンシッププログラムは、NIIに優秀な人材を誘致することを目的に、前任のアンジェリーノ・アンリ教授が確立しましたが、非常に先見の明のある取り組みだと思います。世界をリードする100以上のMOU締結機関で選考された優秀な学生を受け入れているため、非常に効率的かつスムーズに実施することができています。各MOU締結機関の担当教員は、応募学生の成績、希望する研究テーマを吟味し、最も優秀なインターンシップ候補者を選ぶ重要な役割を担っています。所属機関で行われる厳しい選考により、優れたインターンシップ候補者を多く確保し、NIIにとっても有益な共同研究を遂行できるのです。

── 最後に、プログラムの今後の抱負をお聞かせください。

現在は、NIIと学生の所属機関との二国間で交流が行われていますが、今後はそこにとどまらず、例えばドイツ、フランス、日本のような、三国間のプログラムを取り入れて、共同研究を拡大したいと考えています。三国で資金を拠出する共同イニシアティブにより、研究レベルでこれまでの二国間の活動を超えることができるでしょう。将来プログラムがそうなることを目指し、今後も活動していきます。

(取材・文・翻訳 FORTE Science Communications  Photo 杉崎 恭一)

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