準備

目次:

2.5 各種手続きを行う

新雑誌を創刊する際に行うべき手続きは数多く存在します。これらはきわめて官僚的で、時間がかかるものもありますが、幸運なことにほとんどは1回だけで済みます。これらの手続きには大抵の場合編集長の意見が必要になるので、編集長が自分で行うか、出版チームの助けを受けることになります。


2.5.1 ISSNを登録する

ISSNは逐次刊行物のタイトルに付随する無名の識別子で、出版社やロケーションに関する情報は含みません。そのため、逐次刊行物が大きなタイトル変更を行うごとに新しいISSNが付与されますが、出版者が変更になっても新しいISSNは付与されません。

雑誌を世界中で識別可能にするために、できれば雑誌が出版される媒体ごとにISSNを持つべきです。たとえば、たとえ内容が同じであっても、雑誌のオンライン版と印刷版は各々独自のISSNを持つべきです。2つの版の関係を示すために、個別のISSNの後に共通のISSN-Lを付けるべきです。

例:

雑誌 ISSN ISSN-L
印刷版 1748-1708 1748-1708
オンライン版 1748-1716 1748-1708
その他の版(CD-ROMなど) 1748-1734 1748-1708

このように、ISSNは特定の逐次刊行物の指定の媒体に対する一意な識別子です。ISSN-Lはこのような個別のISSNを1つにまとめて、継続的なリソース(通常は雑誌)の識別とその様々な媒体の版のリンキングを可能にするものです。

具体的に言えば、図書館員は雑誌の識別と目録作成という2つの目的にISSN/ISSN-Lを使用しています。

雑誌のタイトルは商標ではなく、ISSNが付与されただけでは保護されないことに注意してください。雑誌の商標/名称を守るには、2.5.3 商標保護のための登録をするを参照してください。

ISSN/ISSN-Lを得るには、各国のISSNセンター、自国にそのようなセンターがない場合は国際ISSNセンターに連絡してください。北欧諸国でISSNを入手するための申請フォームのリンクが追加情報源にあります。ISSNの付与は無料です。

ISSN と ISSN-Lを表示する

ISSN と ISSN-L は大文字で書き、8桁の数字の前に空白を1つ置きます。例 :

印刷版: ISSN 0001-6772, ISSN-L 0001-6672, オンライン版: ISSN 1365-201X, ISSN-L 0001-6672.

印刷版の表紙におけるISSN/ISSN-Lの望ましい表示位置は、右上の角です。番号は奥付にも表示することができます。オンライン版ではISSN/ISSN-Lは、雑誌のホームページまたは各論文の最初のページに表示するべきです(たとえば、http://www.ethicsandglobalpolitics.net/index.php/egp/article/view/1938を参照)。



2.5.2 契約を行う

雑誌の出版に併せて様々なパートナーや業者と契約することが必要かつ有効であることがわかると思います。契約により、あなたと契約相手がなすべき仕事と両者の協力が制限される条件を互いに確認することができます。

契約を結ぶ可能性のあるのは誰ですか?

  • タイプセッターなどの業者
  • ホスティングサービス(たとえば、大学図書館)
  • コンテンツアグリゲータ(たとえば、EBSCO host
  • パートナー(たとえば、雑誌を公式出版物として採用した学会)

契約書には一般に次の事項を含めるべきです。

  • 契約に係わる当事者の定義
  • 雑誌の所有者に関する明細
  • 契約の履行における各当事者の義務と責任
  • 契約が適用される期間に関する明細
  • 契約が更新される条件および契約を終了できる条件
  • 支払に関するあらゆる明細。支払が行われる時期、支払が制限される時期や従うガイドラインなど、
  • 適切な賠償条項

主な検討事項:

  • 契約書の署名は誰が行うべきですか? あるいは、法的に誰が署名することができますか?
  • 契約書の各事項の重要性を注意深く検討しましたか?
  • 契約書は簡潔かつ明快なものとし、必要なすべての要素を含めるべきです。
  • 業者やアグリゲータなどの中には、あなたが署名するだけで済む標準的な契約書を持っているところもあります。
  • 契約書を一から書かなければならない場合は、法律コンサルタントに相談すると良いかもしれません(国際的な法律コンサルタントのリンクは追加情報源を参照してください。


2.5.3 商標保護のための登録をする

登録商標は、他者から雑誌をそのものとして複製または「盗用」されない権利を雑誌の持ち主に与えます。したがって、雑誌が成功した場合などには特に非常に高い価値を発揮すると思われます。

商標は知的財産権の一種で、通常は、名前、語、語句、ロゴシンボル、デザイン、イメージ、あるいはこれら要素の組み合わせが対象になります。登録商標は、登録された製品やサービスに、商標を独占的に使用する権利など独占的権利を登録した所有者に与えます。登録商標の所有者は、商標の不正利用を防ぐために商標権侵害法的手続きを開始することができます。

商標は、指定の管轄の「商標登録所」に登録することにより確立されます。しかし、2つ以上の管轄における商標の保護を容易にする一連の国際商標法やシステムが存在します。国際的なオープンアクセスジャーナルには国際登録が適していると思われます。詳しい情報は追加情報源を参照してください。

通常、商標の登録は有料であり、一定期間(たとえば10年)後に更新する必要があります。すべての登録には独自の規定がありますので、そのすべての詳細を慎重に確認してください。


2.5.4 出版許可を得るために登録する

ほとんどの国は、メディアや出版物を当局(検閲)から法的に保護する出版の自由を持っています。しかし、北欧諸国など多くの国では、通常そのような権利を出版物に与えるために出版許可が必要となります。印刷版の雑誌とオンライン版(巻号単位の出版でも、受理された論文の継続的な出版でも)の雑誌(データベース)で証明書を発行する機関が異なる国もあります。各国は独自の規則を持ちますので、あなたの管轄で何が適用されるかを確認することを勧めます。各国の登録機関へのリンクは追加情報源にあります。


2.5.5 ガバナンスの問題を検討する

以下の2.5.5.1 規約を作成する2.5.5.2 所有者を登録または法人格を得るで、ガバナンスに関して検討すべき主な2つの問題を扱います。


2.5.5.1 規約を作成する

必須ではありませんが、規約を作成すると良いかもしれません。規約は、雑誌の運営方法、運営体制、この体制を変更できる条件など自らに課す一連のガイドラインを提供します。規約は固定したもので簡単には改訂されません。それを踏まえて、規約は必要に応じた柔軟性を許容するために広く、かつ、混同を避けるために簡潔に書くべきです。

おそらく新雑誌の創始者が編集チームや出版チームと共に規約の作成に当たるものと思われます。雑誌が学術出版社から出版される場合はこれらのグループは1つの同じグループでしょう。

規約では一般に次のような事項を定義します。

  • ミッションステートメント/雑誌の目的
  • 雑誌の所有権/法的地位
  • 運営組織(理事会/委員会)
  • 定足数
  • 編集長の選定方法とその任期
  • 編集チームの編成方法
  • (編集者などに対する)報酬とその規定方法
  • 財務方針
  • 雑誌解散の条件とバックナンバーの処理方法など
  • 規約改定の条件

主な検討事項:

  • 規約は法定文書ですので、採択の前に十分検討するべきです。
  • 最終的な規約案を弁護士や法律の専門家に評価してもらった方が良いかもしれません(追加情報源を参照)。
  • 外部意見を取り入れるために運営理事会に直接雑誌の出版や編集に参加しない人を1人か2人参加させた方が良いかもしれません。


2.5.5.2 所有者を登録または法人格を得る

雑誌の所有者を正式に決めておくと役に立ちます。雑誌を個人のグループで所有する場合は、法的な活動ができるようにこのグループを法人組織にすることを検討してください。金融取引を行う場合、著作権の侵害や過失による賠償活動を行う場合、下請業者と法的契約を結ぶ必要がある場合など、ある種の条件下では法人としての行動が法的に必要になるからです。

法人登録に関する法律やガイドラインは国により異なりますので、ここで具体的なベストプラクティスを提供することはできません。しかし、以下のとおり、検討すべき事項をいくつか指摘することはできます。

  • どんな形態の法人があなたのグループにとって財政的に一番有利ですか? (たとえば、ある種の法人格は付加価値税の支払が免除される場合があります)
  • 検討中の法人形態は公認会計士を使用する必要がありますか?
  • その法人形態では雑誌に起因する賠償に対してグループのメンバーに個人的な責任がありますか?
  • 雑誌が破産したり、支払を履行できなくなった場合、その法人形態ではグループのメンバーに法的に個人的な責任がありますか?
  • その法人形態では雑誌は政府に納税申告をする必要がありますか?
  • グループの中に外国人がいる場合、各々の国で登録する利点はありますか?

雑誌の所有者を法人化すると、誰が契約書に署名でき、誰が雑誌を代表して行動できるかを規制することになります。所有者の登録や法人形態の選択により必要となった具体的な事項(たとえば、公認会計士の必要性)は作成する規約に含めるべきです。


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