準備

- 2.1 技術基盤を構築する
- 2.1.1 「ホームサイト」を設置する
- 2.1.1.1 ホスティングを選定する
- 2.1.1.2 ドメイン名とURLを選定する
- 2.1.2 出版システムを選定する
- 2.1.3 アーカイブと保存の設定を行う
- 2.1.4 バックアップを取る
- 2.2.1 ウェブサイトをデザイン・構築する
- 2.2.2 表紙デザインとロゴを制作する
- 2.2.3 論文レイアウトを作成する
- 2.2.4 スタイルを採用する
- 2.2.5 執筆要項を作成する
- 2.3.1 編集チームの体制を決める
- 2.3.2 編集委員を集める
- 2.3.3 編集方針を採択する
- 2.3.3.1 雑誌のプロフィールを定める
- 2.3.3.1.1 雑誌の種類を決める
- 2.3.3.1.2 タイトルを選ぶ
- 2.3.3.1.3 コンテンツの種類を決める
- 2.3.3.2 査読審査方針を定める
- 2.3.3.3 出版方針を定める
- 2.3.3.3.1 出版スケジュールを決める
- 2.3.3.3.2 年間出版数を決める
- 2.3.3.5 料金免除方針を定める
- 2.3.3.6 その他の方針を定める
- 2.3.4 刊行目的と対象範囲を作成する
- 2.3.5 査読審査ワークフローを設計する
- 2.4.1 スタイルシートを作成する
- 2.4.2 ファイルフォーマットを決める
- 2.4.3 DOIの登録をする
- 2.4.4 制作ワークフローを設計する
- 2.5 各種手続きを行う
- 2.5.1 ISSNを登録する
- 2.5.2 契約を行う
- 2.5.3 商標保護のための登録をする
- 2.5.4 出版許可証を得るために登録する
- 2.5.5 ガバナンスの問題を検討する
- 2.5.5.1 規約を作成する
- 2.5.5.2 所有者を登録または法人格を得る
- 2.6.1 タスクと要件を特定する
- 2.6.2 タスクを割り当てる
- 2.6.3 パートナーを検討する

2.2.1 ウェブサイトをデザイン・構築する
ウェブサイトのデザインと構築を行う際には主に次の2点、どんな情報を提供する必要があるか、どのようにそれを提示すべきか、について検討すべきです。
どんな情報を提供すべきかを決定する際には、既存の雑誌のウェブサイトが参考になるでしょう。しかし、これらのページやデザインを単純にコピーしないように注意する必要があります。オープンジャーナルシステム(OJS)を使う場合は、そのデフォルトページがどんな情報を提供すべきかについてのヒントを与えてくれます。標準的な項目は次の通りです。
- 刊行目的と対象範囲
- 編集者、編集チーム、編集委員会
- 連絡先情報
- オープンアクセスポリシー
- 著作権およびライセンスポリシー
- 最新号
- アーカイブ(バックナンバー)
- 抄録と索引
- 課金される料金
- 雑誌の履歴(特に、あなたは有名な出版社でないため)
- インパクトファクターなどの雑誌の格付けに関する情報
- 投稿規程
- 書誌情報(ISSN、ISSN-Lなど)
最も効果的なウェブサイトは、洗練されたデザインとテクニカルな機能、マーケティング上の常識が一体化したものです。この主題を扱った本やコースがありますので、ここでは包括的なガイドラインは示しませんが、検討すべき事項をいくつか提案することができます。
- 雑誌の名前とロゴはウェブサイト上で容易に識別できるべきです。
- ウェブサイトはナビゲーションが簡単で、ユーザが探しているものを簡単に発見できるべきです。
- ウェブサイトには不要な「がらくた」を置くべきではありません。不要なアイテムや機能は重要な情報を見つけにくくします。
- ウェブサイトはユーザのニーズに基づいてデザインされるべきです。
- ウェブサイトのデザインや使用するテキストの選択にはウェブ最適化の観点から検討するべきです。
あなたやチームの中にデザインとプログラミングのスキルを持つ人がいる場合以外は、この作業を外部委託する必要があるかもしれません。外部委託は高くつく可能性があります。予算が限られている場合は、理想的なウェブサイトを検討した上で、その簡略版からスタートすることを検討してください。後で予算が許すようになれば、時間をかけて徐々に理想の外観を持つウェブサイトを実現することができるからです。
OJSを使用する場合は、「そのまま」使用する、あるいは各自のニーズや好みで調整することができる標準的なOJSウェブサイトテンプレートを活用することができます。
2.2.2 表紙デザインとロゴを制作する
あなたの雑誌がオンライン版だけの場合も、同時に印刷版も作成する場合も、(必須ではありませんが)販促資料や雑誌のウェブサイトで使用できるロゴを制作することを推奨します。印刷版の雑誌と定期的に印刷版の増刊号を発行するオンライン版の雑誌は、ロゴだけでなく表紙のデザインも行う必要があります。
あなたの雑誌がオンライン版だけの場合は、この媒体に合わせて制作するロゴ(これを持つことを選択した場合)が創刊前の最も重要なデザイン作業になります。ただし、このロゴは販促資料など別の目的にも使用されることを忘れないでください。そのため、様々な状況で使用でき、認識度を下げることなく容易に大きさを調整できるようなロゴデザインを追求してください。また、小さな印刷物やTwitterなど他のメディアで使用できる本来のロゴとの関係が明らかにわかる小さなサムネイルロゴも制作した方が良いかもしれません。
ロゴは、画像、手書きのデザイン、雑誌名などで構成することができます。ロゴに画像を組み込む場合は、次の3つの選択肢があります。(1) デザイナーに依頼して画像を描いてもらう、(2) 既存の画像の使用権を購入する、(3) 一般公開されている画像を使用する。
もちろん、デザイナーに依頼したり既存の画像の使用権を購入する場合は、自分で作成したり一般公開されている画像を使用する場合より高くつきます。
ロゴに使用する色、フォント、サイズは、時間がたっても、様々なメディアで使用されても、常に同じロゴが使用されるように定義するべきです。画像とテキストの両方を使用する場合は、サイズを変更しても画像の鮮明さを保てるようにベクトル画像にするのがベストだと思います。たとえ、オンライン版しか発行しない予定であっても、印刷用の高解像度のロゴを作成することを勧めます。そうすれば、印刷物の販促資料を作成したり、高品質が必要な他のメディアに雑誌を掲載したりする場合にも対応できるからです。高解像度のファイルからはオンラインに適した低解像度のファイルを作成することが可能です。
表紙のデザインが必要な場合は、次のアイテムを含むテンプレートを検討してください。
- 雑誌の名前と(もしあれば)ロゴ
- ISSN番号(2.5.1 ISSNを登録するを参照)
- 巻号数
- 出版年(月)
- ウェブアドレス
- 目次(表紙と裏表紙)、(幅にもよりますが、もし可能であれば)背表紙に表示するテキスト
さらに、外部デザイナーに依頼することにした場合は特に、様々なアイテムの配置場所に関する詳細なプランも非常に役に立つでしょう。
裏表紙も忘れないでください。ここは目次やロゴ、ウェブアドレスなどを置くのにふさわしい場所だと思われます。
2.2.3 論文レイアウトを作成する
雑誌を印刷するつもりはないかもしれませんが、PDF版とHTMLフォーマットの両者で使用できる良い論文レイアウトを作成したいと考えていると思います。レイアウトには次のような多くの事項を決める必要があります。
- フォーマット
- 段組
- マージン
- フォントとサイズ
- セクションヘッダー
- 参考文献
- 行間
- 図表のデザイン
- 著作権表記
- 必須の要素(利益相反に関する記述など)
- ISSN、 DOI、引用形表示
- ロゴ(もしあれば)
- 著者の経歴や写真など、その他の特別な要素
このレイアウトは雑誌の本番環境の設定に関連して作成しなければならないスタイルシート(2.4.1 スタイルシートを作成するを参照)や著者に示す執筆要項(2.2.5 執筆要項を作成するを参照)の基礎となります。
タイプセッターがいる場合は、おそらく同一分野または類似の分野の雑誌のスタイルシートを喜んで紹介してくれるでしょう。既存のスタイルの採用はあなたの作業を軽減するだけでなく、(もしいる場合は)タイプセッターの仕事も楽にします。
レイアウトが決まったら、できれば実際の論文を使ってレイアウト担当編集者かタイプセッターに見本を作成してもらうべきです。この段階で原稿整理担当編集者に論文見本をチェックしてもらい、あなたの雑誌をよく理解してもらうのが良いでしょう。原稿整理担当編集者には彼ら自身のガイドラインを作成できるように論文見本、執筆要項、スタイルシートの3点を提供するべきです。
2.2.4 スタイルを採用する
通常、ほとんどの雑誌は対象分野の標準に沿った一定のスタイルに従います。あなたの雑誌が対象とする主題分野が標準的なスタイルガイドに従っている場合はそのスタイルを採用することを強く勧めます。あなたも投稿著者も仕事が容易になるからです。
最も有名なスタイルガイドには以下があります。
APA - (米国心理学会)- 社会科学で一般に使用されています
シカゴスタイルマニュアル - 社会科学(著者 - 日付)と人文学(注記と参考文献)で一般に使用されています
ICMJE - (国際医学雑誌編集者委員会、通常、「バンクーバー」スタイルと呼ばれています) - 生物医学雑誌で一般に使用されています
IEEE(電気電子学会)- ほとんどの技術分野で一般に使用されています
MLA(現代言語協会) - ある程度APAスタイルに基づいており、人文科学で一般に使用されています。
どのスタイルに従うにせよ、次の事項を検討する必要があります。
- スペリング(アメリカ英語か、イギリス英語か、両方を認めるか)
- 引用システム
- 参照システム(あらゆる種類のソースに対する)
- 句読法
- 数字の表記
- 略語と記号
- 図や表などの見出し
- 寸法
スタイルを採用し、このスタイルを出版するすべての論文に準拠させる主な目的は、出版物に一貫性を与えることです。
採用したスタイルは執筆要項に記載しなければなりません(2.2.5 執筆要項を作成するを参照)。また、このスタイルは本番環境で使用するスタイルガイドを作成する際の基礎にもなります(2.4.1 スタイルシートを作成するを参照)。原稿整理を外部委託する場合、その担当者は著者がこのスタイルを順守していることを確認し、レイアウト担当編集者やタイプセッター用の原稿を用意することになります。
2.2.5 執筆要項を作成する
明快な執筆要項を作成することによりあなたの作業を大幅に削減することができます。論文を投稿する前に雑誌の技術的要件などにきちんと従う投稿著者が増えれば、後で論文を出版するためにしなければならない仕事が減少します。(これに限定するものではありませんが)一般に執筆要項には次の要素を含めます。
- 投稿する原稿のファイルフォーマット
- 投稿する図表のファイルフォーマット
- 雑誌が採用した参照システム(2.2.4 スタイルを採用するを参照)
- 原稿の段落構成
- 要旨の長さ
- キーワードの数
- 数字、略語などの書き方
- 使用言語
- 含める必要がある特定の記述や確認(統計、同意書、ライセンス、著作権表記など)
- ブラインド査読を使用する場合は、名前を削除する旨の注意
執筆要項は出版チームの誰かが作成することになると思われますが、要項に各自の作業に影響を与える要素が含まれている場合は場合は(体制によりますが)レイアウト担当編集者またはタイプセッターの意見や編集長の意見が必要になるでしょう。
執筆要項の最も重要な事項を順守していることを投稿著者が簡単に確認できるように投稿著者向けのチェックリストを作成することも検討してください。たたき台となるチェックリストの見本が追加情報源にあります(訳注: 見当たらないようです)。論文を投稿する際に著者に雑誌専用テンプレートの使用を義務付けている雑誌もあります。
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